2020年度の通販に関する消費者相談の傾向は?
(公社)日本通信販売協会の消費者相談室「通販110番」に寄せられた、2020年度の消費者相談件数(速報値)とその概要が発表されています。
特商法改正後も昨年度は新たな手口で増加していた「定期購入販売」関連相談ですが、20年度に入って法執行により減少傾向がみられています。
相談状況の、広告媒体別、苦情・問い合わせ内容、商品別の傾向についてご紹介します。
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2020年度消費者相談件数とその概要
(社)日本通信販売協会 会報誌(ジャドマニューズ2021年5-6月)
https://www.jadma.or.jp/pdf/news/2021_05-06.pdf
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●「詐欺的サイト」、51%の減少
「通信販売に関する相談」は3,874件で、前年度の4,230件から8.4%、356件の減少となった。(コロナ禍において受付時間の短縮措置を行ったことにより影響)
詐欺的サイト(※)に関する相談は273件で前年度の531件から51.4%の減少となった。
商品については、「家庭用電気製品」、「スポーツ・トレーニング機器」「自転車用品・乗り物関連用品」の順。
相談者の内訳は消費生活センター等からの相談が468件で12.1%、消費者からが87.9%。
一方、「通信販売以外に関する相談」は104件(前年度131件)。
総件数は3,978件と、前年度の4,361件から8.8%、383件の減少となった。
(※)詐欺的サイト
通販サイトを装って「代金をだまし取ること」を目的とするサイトを指す。
消費者から「前払いをしたが商品が届かない」などと相談されたサイトについて、「特定商取引法に基づく表示がなかったり」、「表示があってもその内容が架空であったり」「文章が日本語として不自然であったり」 といった事項に該当するもの。
●媒体別ではモバイルがトップで、相談に占める割合が更に伸長。PCは減少
媒体別の相談では、媒体の判明した相談3,263件全体のうち、
1位:「インターネット(モバイル)」(2,052件、構成比62.9%、前年比127.8%)
2位:「インターネット(PC)」(712件、構成比21.8%、前年比53.6%)
3位:「テレビ」(255件、構成比7.8%、前年比93.4%)
4位:「カタログ」(83件、構成比2.5%、前年比100.0%)
5位:「新聞」(78件、構成比2.4%、前年比121.8%)
●苦情内容は定期購入に関するものが多数
苦情内容の上位項目は以下の通り。
1位:「契約・解約」(1,114件、前年比102.4%)
2位:「返品・交換」(942件、前年比133.6%)
3位:「電話がつながらない」(648件、前年比128.0%)
4位:「広告内容」(587件、前年比116.2%)
5位:「代金支払・代金回収」(359件、前年比139.1%)
6位:「顧客対応」(299件、前年比149.5%)
「契約・解約」は、苦情の多い企業について健康食品や化粧品の「定期購入」に関するものが多かった。一社あたり10件以上の相談が寄せられた企業は19社あるが、 そのうち18社が健康食品や化粧品を扱っている事業者だった。
「返品・交換」は、企業別では 「外資系大手ネット通販企業」への相談が最も多く、 海外に拠点があると思われるブランドのファッショングッズを扱い企業の相談が上位を占めた。
「電話がつながらない」も、「外資系大手ネット通販企業」及び、「契約・解約」で登場した健康食品や化粧品の定期購入販売を行っている企業によるものが上位を占めた。
「広告内容」は、上位11社までが、健康食品や化粧品の定期購入販売を行っている企業。
「代金支払・代金回収」は、健康食品や化粧品の定期購入販売を行っている企業、「外資系大手ネット通販企業」に集中。
「顧客対応」は、「外資系大手ネット通販企業」に集中が見られ、「質問にきちんとした回答がない」、「商品の品質が悪く、返品時の対応も悪い」といった不満や苦情が寄せられた。
●「企業の連絡先(を知りたい)」問合せが23%増加
問合せ内容の上位項目は以下の通り。
1位:「企業の連絡先」(402件、前年比90.1%)
2位:「返品・交換」(79件、前年比179.5%)
3位:「広告内容」(78件、前年比88.6%)
4位:「契約・解約」(73件、前年比101.4%)
5位:「信頼性・情報」(53件、前年比98.1%)
1位の「企業の連絡先(を知りたい)」では、会員企業が107件で前年度の176件から39.2%減少。テレビ媒体を主体として販売を行っている企業への集中が見られた。
非会員企業では、295件で前年度270件から9.3%増加。内訳では外資系大手ネット通販企業の電話番号を問うものが133件と前年度54件を大幅に上回り、非会員件数の45.1%を占めている。
「広告内容」「契約・解約」は、過半が消費生活センター経由の相談で、健康食品や化粧品の定期購入販売を行っている企業の「返品特約」の表示や解約の可能性について意見を問うものが多かった。
●商品別相談、「健康食品」の定期購入トラブル
「通信販売に関する相談」 のうち商品が判明したもの (詐欺的サイトを除く) は3,009件だった。
1位「健康食品」(530件 前年度比80.4%)
前年同様1位だが、前年度比80.4%の減少。
1社当たり10件以上の相談が寄せられた企業は前年同様13社だったが、その合計は前年460件から310件に減少した。今年度の13社はすべて「定期購入トラブル」 に関するも
消費生活センターから見解を求められるケースも多く、77件を数えた。
2位「婦人衣料品」(312件、前年比140.5%)
特に非会員企業が291件で、前年度比157.3%と大幅に増加。上位の3社に集中が見られ、いずれも海外拠点とみられる。「洋服に品質不良があったが会社と連絡が取れない」「粗悪品を販売している」といった苦情が多い。
3位「化粧品」(202件)
4位「医療・衛生用品・美容品(雑品)健康・ダイエット関連商品(198件)
5位「家庭電気製品」(197件)
6位「趣味・娯楽・嗜好品」(167件、前年比126.7%)
健康食品や化粧品の「定期購入」に関する相談は、2017年12月の特定商取引法の改正に伴う「特定商取引に関する法律施行規則」により、定期購入契約に関する表示が義務付けられ、2018年度は2017年度から3割以上の減少となっていました。
しかし、新たな手口として回数縛りのない「継続的な定期コース」(中止の申し出があるまで継続的に販売する方法)等を行う事業者が増え、2019年度は再び大幅増加となっていたところ、2020年度は、前年度の922件から11.5%減少し816件となりました。
内訳をみると、非会員企業の件数の減少が顕著で、前年度比85.0%の721件となっています。これは、相談件数上位2社に対し「詐欺的定期購入販売」として特商法に基づく業務停止命令が出されたこと、また、適格消費者団体から「差し止め請求」された事業者が2社あり、その影響から定期購入トラブルの相談件数が減少しているとしています。
一方、会員企業については、前年度の74件から92件に24.3%増加していました。一社あたり10件以上の相談が寄せられた企業が4社となっています。
今後も、悪質事業者による消費者トラブルが続く限り、更なる法執行は続くと考えられます。
≪参考記事≫
・通販で定期購入契約を行う際の広告に、販売条件の明記が義務付けに(特定商取引に関する法律施行規則の一部を改正する命令(平成29年6月30日公布))
・強まる「定期購入」契約に関する監視の目。適格消費者団体、行政の動向
≪関連記事≫
・健康食品、化粧品のネット通販「定期購入販売」関連相談、大幅増加 (JADMA 2019年度消費者相談件数)
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