消費者に積極的な注意喚起を!医薬部外品染毛剤(酸化染毛剤)による皮膚障害(平成27年10月23日 消費者安全調査委員会)

消費者安全調査委員会は、平成27年10月23日、ヘアカラーや白髪染めなど医薬部外品の染毛剤(酸化染毛剤)による皮膚障害の重篤化を防ぐため消費者への継続的な周知を徹底するよう、消費者庁及び厚生労働省に対して意見提出しました。
http://www.caa.go.jp/csic/action/index5.html

ヘアカラーリング剤の中で、酸化染毛剤は最も広く使用されている製品ですが、最もアレルギー性接触皮膚炎になりやすい製品でもあります。
現在、染毛剤(医薬部外品)については、法規制、製造販売業者団体の自主規制によって、使用前のセルフテストの実施の呼び掛け、製品の外箱や使用説明書等での注意喚起がなされていますが、それにもかかわらず、継続的に皮膚障害の事例が発生しています。

消費者庁の事故情報データバンクには、毛染めによる皮膚障害の事例が毎年度200件程度、過去5年間で約1,000件の登録されており、そのうち、傷病の程度が1か月以上の事例は166件となっています。
毛染め皮膚障害件数

【毛染めによる皮膚障害の事例】
・これまで毛染めをして問題がなかったにもかかわらず症状が現れた事例
・異常を感じても毛染めを続けて症状が悪化した事例
・長年のかぶれが実はヘアカラーリング剤が原因だった事例
・セルフテストでアレルギー反応が現れなかったが、施術したら症状が現れた事例

今回の意見書では、製造販売業者に対して、毛染めによるアレルギーのリスク等が消費者に分かりやすく伝わるような表示や情報提供の内容、ウェブサイトに重症例の写真を掲載するなど伝達手段についての検討を求めています。
消費者安全調査委員会が行った「毛染めによる皮膚障害についての事故等原因調査報告書」より、消費者の行動や意識調査の概要をご紹介します。

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消費者安全法第23条第1項の規定に基づく事故等原因調査報告書
毛染めによる皮膚障害(消費者安全調査委員会 平成27年10月23日)
http://www.caa.go.jp/csic/action/pdf/8_houkoku_honbun.pdf
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●毛染めの頻度
3か月に1度以上が8割以上であった。このうち、1か月に1度以上染めている者の割合は38%。年代別に見ると50歳代以上では5割以上を占め、年代が上がるほど毛染めの頻度が増す傾向が見られた。
毛染め頻度

●毛染めを行う場所
自宅が46.7%、理美容院が36.8%、両方で行うが16.5%であった。
毛染め場所

●使用カラーリング剤
ヘアカラーが84.3%、ヘアマニキュアが8.9%であった。
毛染め剤

●異常を感じた経験の有無と対処
毛染めでかゆみ等の異常を感じた経験の有無について、自宅での毛染めでは 15.9%。
毛染めで異常を感じた後の対処について聞くと、「しばらくすると症状が治まったので特に何もしなかった」が、52.8%。症状が出て「医療機関を受診した」が、9.7%であった。(染毛後に何らかの異常を感じた場合は、必ず医師の診断を受けるよう記載されている)
毛染め異常への対処

●警告・注意情報への関心
購入したカラーリング剤に添付されている使用説明書を読むかについて、「使用説明書は読まない」が20.4%あった。
使用説明書のうち、「使用方法」の記載部分を読むのみ59.5%と過半数だったが、「使用前の注意」、「使用時の注意」、「次の方は使用しないでください」といった、安全に関する警告・注意表示の部分を読むとの回答は、いずれも半数に達していなかった。
なお、使用説明書を全て読む者は6.8%。
毛染め使用説明書

●セルフテスト実施率
「セルフテストを実施したことがない」が74.4%となっている。「初めて使うカラーリング剤の場合は行う」が16.9%、「前回の毛染めで異常を感じたときに行う」が4.2%、「毎回必ずセルフテストを行う」が2.3%であった。
毛染めセルフテスト

●リスクに対する知識・意識
毛染めでアレルギーになる可能性があることを知っていると回答した消費者は 62.1%に留まる。一方、32.1%は毛染めについて知っていることはないと回答。
毛染め知識

毛染めをして皮膚などに異常が出たことがあると回答した消費者について、
毛染めにより異常が見られた際に慎重に考える回答状況は、
「カラーリングを続けていると、これらの症状は悪化していくと思う」が 55.5%。
「これらの症状が出た場合、もう毛染めを行ってはいけないと思う」が 50.6%。

一方、アレルギーのリスクの認識や知識が十分でないことがうかがえる回答状況は、
「自宅で染めていて、これらの症状が現れた場合、別の製品に変えれば改善されると思う」が56.6%。
「体調が良いときに毛染めすればこのような症状は現れないと思う」が32.5%。
「理美容院で染めていて、これらの症状が現れた場合、店を変えれば改善されると思う」が 26.2%。
「症状が現れない人はずっと無症状のままだと思う」が40.2%。
毛染め異常知識

調査結果より、消費者は、毛染めに伴うリスクやアレルギーについての知識が十分とは言い難く、適切な行動に結び付いていないことが考えられます。
消費者安全調査委員会は、「症状の重篤化を防ぐためには、いち早く異常に気付くこと、異常を感じたら適切な対応をとることが必要であり、こうしたリスクや対応策について社会全体で共有されることが重要である。」としています。
製造販売業者に対しては、消費者にリスクを回避するための行動を促すため、消費者に対し、酸化染毛剤やアレルギーの特性、対応策等を伝えるよう以下の措置を求めています。

●例えば、警告・注意を守らないことによって具体的にどのような状況が発生し得るか、なぜ毎回セルフテストが必要なのかなど、リスク等が消費者に分かりやすく伝わるような表示や情報提供の内容を検討する。
●特に安全に関する重要な情報は製品を陳列した際に正面となる面に表示したり、症例写真など、より具体的に伝わる情報を整理してウェブサイト上に掲載する等、リスク等が的確に消費者に伝わるような伝達手段について検討する。

大切なお客様を重篤な健康被害から守るために、通販サイトでも注意喚起の表示を行ったり、積極的な情報提供が求められています。

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。