インターネット通販の消費者トラブルが急増しています。
(社)日本通信販売協会の消費者相談室「通販110番」に寄せられた、2013年度の消費者の「通信販売に関する相談」(※1)は、過去最多の9,073件で、前年度6,188件から、51.7%と大幅に増加しています。そのうち詐欺サイトに関連すると思われる相談が3,829件で相談全体の4割以上を占め、2009年度に32件が、2012年度には1,036件を数え、それがさらに約3.7倍に急増しています。
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今年度は、既存企業のホームページや販売サイトをコピーした偽サイトが多く登場し、取扱商品も日常生活用品にまで広がったのが特徴ということです。
偽サイトによるトラブルは消費者だけでなく、コピーされた販売サイトの運営事業者も被害者と言えます。
そこで、6月に発表された「平成26年版 消費者白書」(※2)および、消費者庁越境消費者センター(CCJ)の「越境取引に関する消費者相談の国際連携の在り方に関する実証調査」(※3)より、インターネット通販に関するトラブルの状況を把握しておきましょう。
●インターネット通販相談件数急増
「インターネット通販*」の2013年度の相談件数は5万364件で、2009年度の1万
6,890件から約3倍、前年度の2012年度の2万9,667件に比べても1.7倍と、大幅に増加している。(図表2-2-17)。
そのうち、「外国」に関連するものは、2013年度は1万983件で、2009年度の1,200件から9倍以上に増加、前年度の5,064件に比べても2倍以上に急増している。特に「前払い」に関するものが8,470件で約8割を占め、非常に増加している。
*「インターネット通販」のうち「商品」に限定して分析
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●相談上位の商品は、「財布類」、「ハンドバッグ」、「腕時計」等、いわゆるブランド品
相談の商品別の構成では「被服品(洋服、履物、かばん、アクセサリー等)」が41.4%、次いで「教養娯楽品(腕時計、スポーツ用品等)」が25.5%(図表2-2-18)。
上位には「商品一般」のほか、「財布類」、「ハンドバッグ」、「腕時計」等、主にいわゆるブランド品に関するものが並ぶ(図表2-2-19)。
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以下、海外ショッピングでトラブルに遭った消費者からの相談を受け付けている消費者庁越境消費者センター(CCJ)への、「電子商取引」に関する相談の傾向(※3)について確認します。
●性別年代別傾向
2013年度の相談について、相談件数を性別年代別に見ると、30歳代女性が最も多く、男性では40歳代が最も多い。
また、40歳代までは女性が男性を上回っているが、50歳代以上は男性の方が女性より多くなっている(図表2-2-23)。
●商品・サービス類型別傾向
2013年度は「衣類」、「履物」、「身の回り品」といった被服品が、約6割。
前年度に比して割合が大きくなったのは、「履物」や「身の回り品(バッグ、腕時計、装飾品等を含み、いわゆる有名ブランド品であることが多い)」、「ソフトウェア」。
一方「衣類」や「趣味用品(ゴルフ用品、釣り用品、モータースポーツ用品等の「スポーツ用品」や、カメラ、ヘッドフォン、DVD等の「音響/映像用品」、「スマホ/タブレット端末」等)」の構成比は縮小。(図表2-2-24)。
●事業者の所在国とトラブル類型
「中国」、「アメリカ」の2国で全体の半分を占める。
第1位:中国35.0%(2012年30.6%(第2位))
第2位:アメリカ15.1%(2012年30.7%(第1位))
「不明」の割合が14.6%→28.8%と増加。(図表2-2-25)
CCJでは、トラブル類型を以下の通り分類している。
模倣品到着:
広義には詐欺と考えられるが、模倣品到着に関する事実と傾向を把握するため、区別している。
詐欺疑い:
注文及び決済の事実が確認できるにもかかわらず、何も届かないまま事業者とのコミュニケーションが途絶え(又は事業者が合理的な応対をしない)、なおかつ事業者の実態が正確に把握できない相談を指す。
商品未到着:
事業者の存在実体が確認できる場合。この点で「詐欺疑い」とは異なる。
2013年度のトラブル類型別構成比で、2012年度と比して拡大したのは、「詐欺疑い」が18.5%→36.3%、「模倣品到着」が、22.9%→24.6%に。両者を合わせると6割を占める。一方、「商品未到着」は20.9%→9.1%と縮小(図表2-2-26)。
トラブル類型で大きな割合を占める「模倣品到着」、「詐欺疑い」について、「模倣品到着」のうち75.1%、「詐欺疑い」のうち40.4%が中国の事業者で、他国に比べ突出している。(所在国/地域が不明のものを除く)
2013年度に相談件数が大幅に増加した主な要因は、中国の事業者による「模倣品到着」、「詐欺疑い」に代表される相談が増えたものと言える。
所在国別トラブル類型の傾向では、
「中国」では、「模倣品到着」が52.9%と最も大きな割合を占め、「詐欺疑い」41.9%を合わせると9割を超えている。
「アメリカ」で最も大きな割合を占めるのは「解約」で53.0%となっており、「商品未到着」が24.1%と続く。「解約」の主な内容は、アメリカ発のインターネットサービスやダウンロードソフトウェア、旅行予約サイト等サービスに関する相談。
「欧州」では、「商品未到着」が36.4%で、いわゆる通常の海外通販サイトでの商品購入時のトラブルが中心。それに次ぐ31.6 % の「解約」は、ダウンロードソフトウェアの解約に関する相談が増加。
●決済手段
「クレジットカード」が2012年度の51.8%から2013年度は39.3%へと割合が減少。
代わりに「金融機関振込」の割合が2012年度の40.0%から2013年度は55.8%と、大幅増。 (図表2-2-27)
特に「模倣品到着」及び「詐欺疑い」に用いられた決済手段では、2013年度は「クレジットカード」が14.9%、「金融機関振込」が83.7%となっている。
クレジットカード支払いの減少は、取引や請求の取り消し、チャージバックを恐れた悪質事業者が銀行振込に切り替えていった結果と推測されるが、大阪府警による一斉口座凍結などの対策により、再び増加傾向にある。
クレジットカード発行会社によって取引や請求の取り消し、チャージバックを認める要件にばらつきがあり、今後も銀行振込への対策が進めばクレジットカード支払いの件数が増えることが予測できる。
●詐欺的な海外通販サイトの特徴
1)事業者の住所・電話番号等の表記がない、あるいは、表記が不完全
2)事業者の実態が不明で、連絡手段が電子メールのみで相手からの返信がないと連絡が取れない
3)正規販売店の販売価格よりも極端に値引きされている
4)サイトの日本語の表記に不自然な点が見られる
5)支払い手段が銀行振込のみとなっており、クレジットカードが利用できない
6)銀行口座の名義が屋号やネットショップ名を含まない個人名だけになっている
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CCJの調査報告書(※3)には、詳細な相談の傾向や、トラブル類型別相談事例と対応についてレポートされています。 模倣品・詐欺等の悪質事業者による被害拡大防止の一助として、通販事業者の方もご参考ください。
(※1)
(社)日本通信販売協会 通販110番 「2013年度 消費者相談件数とその概要」http://www.jadma.org/jadma_news/110_201405.html
(※2)
平成26年版 消費者白書
第2節 情報通信の発達に伴う消費者意識の変化、消費者被害・トラブル等の状況
(3)インターネット通販等に関するトラブル P62~http://www.caa.go.jp/adjustments/pdf/26hakusho_honbun.pdf
(※3)
越境取引に関する消費者相談の国際連携の在り方に関する実証調査
(平成 25 年度消費者庁委託調査)
http://www.cb-ccj.caa.go.jp/25fy_cc.pdf
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