健康食品の使用経験は6割、きっかけは「不足している栄養を補給」「健康維持」が各2割 (東京都 令和元年度「都民の健康と医療に関する実態と意識調査」)

前回の記事では、都民の健康づくりの状況として、栄養バランスの良い食生活や食生活・生活習慣の改善意欲、運動の実行度に関するデータをご紹介しました。

健康志向と言われて久しい時代ですが、自分の健康状態を「よい」と感じている人、食生活・生活習慣の改善意欲に関心がある人は8割と高い割合となっていました。
一方で、3食バランスの良い食事をとっている人の割合は2割に満たず、推奨される運動の実行に関しても、「生活運動」で36%、「運動」で30%程度に留まりました。
必ずしも不健康だと感じていなくても、日常生活において健康的な生活習慣を送れていないことが危機感となって、食生活・生活習慣の改善意欲につながっているのかもしれません。
そのような消費者心理は健康食品利用にも関連がありそうです。

前回に引き続き、東京都が令和元年度に実施した「都民の健康と医療に関する実態と意識」調査(※)から、今回は、健康食品のイメージ、使用実態や購入先、健康被害など健康食品の使用状況等に関するデータを紹介します。

調査項目(一部抜粋)
健康食品の使用状況
健康食品のイメージ
健康食品の使用実態と使用のきっかけ
健康食品の購入先
健康食品の使用に関する医師・薬剤師等への申告
健康食品の使用による体の不調の有無とその症状、医療機関の受診の有無


【健康食品の使用状況】
●健康食品のイメージ「栄養補給に必要」が45%
健康食品のイメージについては、「栄養補給に必要」の割合が 44.9%と最も高く、次いで「高価である」の割合が 28.4%、「有害な作用がなく、安心」が26.7%、「病気の予防や治療につながる」が25.8%となっている。
前回調査(平成26年度)との比較では、大きな変化なし。

性・年齢階級別にみると、男女とも「栄養補給に必要」の割合が4割を超えている。(男性 41.9%、女性47.5%)特に30代女性では6割を超えている。
「病気の予防や治療につながる」は、80歳以上を除く各年代で女性の割合が高い傾向にあり、特に60代女性では33.2%となっている。
男女で大きな違いがあるのは「美容に役立つ」で、男性5.3%、女性18.4%と女性の方が13.1ポイント高くなっている。特に20代~30代女性では3割を超えている。

●健康食品を使用したことがある人は6割、きっかけは「不足している栄養を補給」「健康維持」が各2割
健康食品の使用経験について、「毎日、使用している」割合が 16.6%、「時々、使用している」が23.3%で、これらを合わせた現在使用している人の割合は39.9%。「以前は使用していたが、現在は使用していない」の19.2%を合わせた健康食品を使用したことのある人の割合は 59.0%となっている。
また、この健康食品を使用した人(3,322 人)に、使用するきっかけは何か聞いたところ、「不足している栄養を補いたいと思ったため」の割合が 22.6%、「健康の維持が必要と考えたため」が22.3%となっている。「病気の予防や治療のため」は8.4%あった。

●健康食品を現在使用している人の割合が特に高いのは、30代女性で5割
性・年齢階級別にみると、「毎日、使用している」と「時々、使用している」を合わせた現在使用している人の割合は、男性36.7%、女性42.6%となっている。
現在使用している人の割合が特に高いのは、女性では30代の50.6%、男性では30代の43.3%。
「毎日、使用している」人の割合が高いのは、80歳以上男性の24.3%。女性では50代以上で2割程度となっている。

●食生活や生活習慣改善意欲が十分ある人の5割弱が、健康食品を使用している
食生活や生活習慣改善意欲が十分ある人では、「毎日、使用している」と「時々、使用している」を合わせた現在使用している人の割合が47.4%となっている。
一方で、改善意欲がまったくない人では、「一度も使用したことがない」割合が63.7%となっている。

●健康食品の使用のきっかけ、「健康維持」は70代以上、「不足している栄養補給」は20代30代男性の割合高い
健康食品の使用のきっかけを性・年齢階級別にみると、「健康の維持が必要と考えたため」が、70代以上の男性及び70代の女性では3割を超えている。(32.1%~37.4%)
「不足している栄養を補いたいと思ったため」の割合が高いのは、20代30代男性で、4割弱。(39.4%、37.7%)
「ダイエットのため」の割合が高いのは、20代30代女性。(13.5%、10.1%)
「美容のため」の割合が高いのは、20代~40代女性。(9.0%、5.9%、6.9%)

●健康食品の購入先、「薬局・ドラッグストア」、「ネット通販」伸長
購入先としては、「薬局・ドラッグストア」が51.5%で最多。次いで、「インターネット、携帯サイトなどの通販」が27.8%。
前回調査(平成26年度)との比較では、「ネット通販」が6.3ポイント、「薬局・ドラッグストア」が2.9ポイント増加。「テレビ、新聞、雑誌などの通販」が6.8ポイント減少している。

●健康食品の使用に関する医師・薬剤師への申告経験は約2割
健康食品を使用した人に医療機関を受診した際に、医師・薬剤師への申告経験がある割合は21.5%。申告したことがない割合は60.9%となっている。

●健康食品の使用によって体の不調を感じた人は4.1%、医療機関を受診した割合は28.1%
体調不良を感じた経験は、「ある」4.1%、「ない」90.9%。
体の不調を感じたことがある人(135 人)に、その症状を聞いたところ、「下痢・腹痛」の割合が27.4%、「発赤・発疹・体のかゆみ」が 25.9%となっている。
さらに、その症状で医療機関を受診したか聞いたところ、「受診した」割合は 28.1%となっている。

調査データからも、食生活や生活習慣改善意欲が高い人ほど、健康食品を使用していることがわかります。
健康食品に対するイメージについて、「栄養補給に必要」が4割というのは納得しますが、「有害な作用がなく、安心」、「病気の予防や治療につながる」というイメージを持つ人が2割以上存在することは、やや懸念事項といえます。
そのような認識が、医療機関を受診時に、健康食品の使用の医師・薬剤師への申告経験2割に留まっていることや、使用による体調不良で医療機関受信した人が3割弱というデータに影響を与えているように推察されます。
健康食品に対する消費者の正しい理解を促す情報提供が求められます。

(※)
都民の健康と医療に関する実態と意識調査
(令和元年度東京都福祉保健基礎調査 2020年11月10日)
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/11/10/03.html

【調査概要】
調査期間:令和元年10月16日から同年11月15日まで
平成21年度から行っており、今回で3回目。

調査対象者・集計の対象:
東京都に居住する 6,000世帯及び調査基準日現在満20歳以上の世帯員
調査の客体6,000世帯のうち、回答を得られた3,283世帯(7,369人)(回収率 54.7%)のうち、回答を得られた満20歳以上の世帯員5,627人

調査方法:
満20歳以上の世帯員を対象に、調査票への記入は調査対象者自身が行う、留め置き調査により実施

《関連記事》

・栄養成分表示と保健機能食品(「特定保健用食品(トクホ)」「栄養機能食品」「機能性表示食品」)に対する意識・行動
(令和元年度 消費者意識基本調査)

・ダイエットサプリ「ケトジェンヌ」の健康被害と企業対応

・国センに寄せられた健康被害情報、上位3商品・役務は「健康食品」「化粧品」「医療サービス」(国民生活センター 平成30年8月)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。