8割の消費者が表示確認を心掛け、約6割が「偽装・誇大表示」に高い関心(平成30年度 消費者意識基本調査)

国の消費者政策方針は、事業経営にも少なからず影響を与えるものです。
消費者庁では、消費者問題の現状や求められる政策ニーズを把握し、消費者政策の企画立案にいかすことを目的に、平成24年度より「消費者意識基本調査」を実施しています。

本ブログでは2回に分けて、平成30年度調査をご紹介します。
前編では、日頃の消費生活での意識や行動、消費者事故・トラブルの経験、申し出行動、後編では、事業者の消費者対応、消費者志向経営、国の消費者政策等に関する消費者意識
等の項目をピックアップしてご紹介します。

前編:
●消費者として心掛けている行動
●消費者問題に対しての関心
●購入商品や利用サービスでの消費者被害の経験
●被害を受けた商品・サービス
●被害を受けた商品・サービスの販売・購入形態
●被害を受けた商品・サービスについての相談又は申し出の有無
●被害を受けた商品・サービスについての相談又は申し出をした相手

●表示確認への積極性は変わらず、環境配慮や事業者への申し立て意識高まる
消費者として心掛けている行動について、「心掛けている(『かなり心掛けている』+『ある程度心掛けている』)の割合でみた。
「表示や説明を十分確認し、その内容を理解した上で商品やサービスを選択する」が最も高く77.9%で、前回の調査(平成29年11月調査)の75.8%から2.1ポイント上昇した。
次いで「個人情報の管理について理解し、適切な行動をとる」(65.5%)、「環境に配慮した商品やサービスを選択する」(59.3%)、「商品やサービスについて問題があれば、事業者に申立てを行う」(50.8%)。
前回調査比で5ポイント以上上昇したのは、「環境に配慮した商品やサービスを選択する」(50.3%→59.3%)が9.0ポイント、「商品やサービスについて問題があれば、事業者に申立てを行う」(44.2%→50.8%)が6.6ポイントとなった。

●関心高い消費者問題は「食品の安全」「偽装・誇大表示」「個人情報」
関心がある消費者問題について、「食中毒事故の問題などの食品の安全性について」が最も高く69.8%、次いで「偽装表示・誇大広告など、事業者による商品やサービスに関する偽りの情報について」(58.1%)、「ダイレクトメールや電話勧誘販売などに見られるプライバシーや個人情報の保護の問題について」(55.8%)、「強引な勧誘や利殖商法(※)などの悪質商法について」(50.1%)の順となっている。
※利殖商法とは、「高利回り」、「値上がり確実」など利殖(利子や配当金などによって財産を増やすこと)になることを強調して不当な勧誘をする商法のこと。

●商品や利用したサービスに対する期待や表示・広告とのギャップに被害意識
この1年間に購入した商品や利用したサービスについて、消費者被害の経験をした人の割合が高い内容は、「商品の機能・品質やサービスの質が期待よりかなり劣っていた」7.2%、次いで「表示・広告と実際の商品・サービスの内容がかなり違っていた」(3.8%)。
前回調査と比較して、全ての内容項目で「ある」の割合が前回と同率又は1ポイント未満の変動にとどまっている。

●被害を受けた最多商品「住居品」、最多サービス「放送・通信」
被害事例数557件のうち「商品に関するもの」の品目では、「住居品(洗濯機、ミシン、掃除機、洗剤、冷暖房機器、カーテン、照明器具、消火器等)」が11.3%と最も高く、次いで
「食料品(外食や出前は除く。)」(9.3%)、「衣料品(洋服、下着等)」(8.4%)、「教養娯楽品(文具、スポーツ用品、カメラ、玩具、時計、楽器等)」(7.4%)の順となっている。
前回調査と比較して、「衣料品(洋服、下着等)」(11.9%→8.4%)が3.5ポイント低下している。
「サービスに関するもの」の品目では、「放送・通信(テレビ、電話、インターネット等)」が最も高く9.9%、次いで「金融・保険(預貯金、株、投資信託、先物取引、保険、住宅ローン、サラ金等)」(3.4%)、「外食・食事宅配」(2.7%)の順となっている。
前回調査と比較して、「放送・通信(テレビ、電話、インターネット等)」(5.9%→9.9%)が4.0ポイント、「金融・保険(預貯金、株、投資信託、先物取引、保険、住宅ローン、サラ金等)」(1.2%→3.4%)が2.2ポイント、それぞれ増加している。

●被害を受けた販売形態、「通信販売」46.9%、9.2ポイント減少
被害事例数557件を販売・購入形態別に分けたところ、「通信販売(インターネット取引を含む。)」の割合が最も高く 46.9%と、次いで「店舗」(35.5%)となっている。
前回の調査結果と比較して、「通信販売(インターネット取引を含む。)」(56.1%→46.9%)が9.2ポイント減少、「店舗」(27.8%→35.5%)が7.7ポイント増加している。

●トラブル経験者の内、「相談・申出」した人は2人に1人
相談又は申し出の有無別では、「した」の割合が 50.8%、「誰にもしていない」が43.3%となっている。
前回の調査結果と比較して、大きな変化はみられない。

●トラブル「相談・申出」先トップは「商品・サービスの勧誘や販売を行う販売店、代理店等」
消費者被害・トラブルについて「相談又は申し出をした相手」は、「商品・サービスの勧誘や販売を行う販売店、代理店等」が40.6%と最多。次いで、「商品やサービスの提供元であるメーカー等の事業者」(36.7%)「家族、知人、同僚等の身近な人」(34.6%)、の順となっている。
「市区町村や消費生活センター等の行政機関の相談窓口」の割合は8.1%にとどまる。
前回の調査結果と比較してみると、「販売店、代理店等」(43.0%→40.6%)が2.4ポイント減少、「メーカー等の事業者」(33.0%→36.7%)が3.7ポイント増加した。

消費者行動として、8割の消費者が表示確認を心掛ける中、約6割が「偽装・誇大表示」に高い関心を寄せています。
またトラブルを受けたとする消費者の2人に一人が、「相談・申出」を行っており、その「相談・申出」先トップは「商品・サービスの勧誘や販売を行う販売店、代理店等」となっており、直接消費者に接する事業者の消費者対応は特に重要なものとなっていることが分かります。

次回は事業者の消費者対応、消費者志向経営、国の消費者政策等に関する消費者意識を取り上げます。

(※)
消費者意識基本調査(消費者庁 平成30年度実施)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/research_report/survey_002/
調 査 項 目
(1)「生活全般や消費生活における意識や行動」について
(2)「詐欺的な請求」について
(3)「高収入をうたう副業や投資など」について
(4)「消費者事故・トラブル」について
(5)「クーリング・オフ制度」について
(6)「家庭の電気の契約」について
(7)「事業者の消費者対応」について
(8)「消費者志向経営」について
(9)「公益通報者保護制度」について
(10)「消費者政策への評価」について
調査対象
母集団:全国の満 15 歳以上の日本国籍を有する者
標本数:10,000 人
地点数:400 地点(389 市区町村)
抽出法:層化2段無作為抽出法
調査時期  平成30年11月8日~11月30日
調査方法  訪問留置・訪問回収法
有効回収数(率) 6,053 人(60.5%)

≪関連記事≫

・「クーリング・オフ制度」の認知度9割。「特定適格消費者団体」の認知度は13%(平成28年度 消費者意識基本調査)

・消費生活の心がけ「表示や説明の確認」74%、「個人情報管理」57%。約9割が個人情報漏えい不安 (平成25年度 消費者意識基本調査)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。