よく知っている薬はネットで購入。用途に応じて購入場所を使い分け(インターネットによる一般用医薬品の購入経験調査)

紆余曲折あり、平成26年6月から一般用医薬品のネット販売が解禁されましたが、その後の消費者の薬のネット購入に対する意識と行動はどのような状況となっているのでしょうか。
くすりの適正使用協議会は、昨年6月以降にインターネットで一般用医薬品の購入経験がある人500名を対象に、昨年12月に実態調査を実施しました。(※)

プレスリリースでは、以下のようにコメントされています。

薬のインターネット販売利用者、安易な価格偏向明らかに」と付され、「調査結果から、利用者は医薬品を選ぶポイントとして副作用や飲み合わせには関心が低く、圧倒的に価格を重視しており、購入サイトに関しては店舗の情報よりも、属しているオンラインモールの大きさで選択していることなどが分かりました。

インターネットでの購入においても医薬品は一般消費材と異なることを意識し、“医薬品リテラシー”をつけた上で利用する必要性が今回の調査により確認されました。

*医薬品リテラシー:医薬品の本質を理解し、医薬品を正しく使用する能力

インターネットによる一般用医薬品の購入経験に関する調査
(くすりの適正使用協議会 2015.2.27)
http://www.rad-ar.or.jp/information/pdf/nr14-150227.pdf

消費者の“医薬品リテラシー”が高いに越したことはありませんが、薬をネット購入する人が賢くない消費者であると判断するのは、異なるように思います。

データを確認してみましょう。

【一般用医薬品の購入頻度 実店舗/インターネット】
一般用医薬品の購入頻度は実店舗、インターネットともに、「2~3ヶ月に1回程度」が最多で、各々30.6%、35.4%となっている。
全体的には、インターネットの方がやや購入頻度が少ない傾向となっている。

【インターネットで購入した回数(年代×性別)】
2014年6月以降に一般用医薬品をインターネットで購入した回数は、1~2回が57.8%、次いで3~4回が25.8%となっている。
年代・性別で見ると、20代男女、30代40代男性が、全体の傾向よりネット購入回数が多い。特に、20代女性はネット購入回数5回以上の割合が50%に上っている。

【一般用医薬品の購入品目 実店舗/インターネット】
実店舗でよく購入されている品目は、1位:風邪薬(57.1%) 2位:目薬(53.7%)3位:ドリンク剤・滋養強壮剤(45.6%)。
インターネットでよく購入されている品目は、1位:ビタミン剤・カルシウム剤(34.2%) 2位:目薬(29.8%)3位: 鎮痛剤・解熱剤(29.6%)。
医薬品品目ごとの購入割合は、相対的に実店舗の方がネットより高い傾向となっている。

【一般用医薬品のネット購入のきっかけ/使い分け】
インターネットで医薬品を購入したきっかけは、「定期的に使用している医薬品が切れそうになったので」が最多で58.8%、次いで「他の物を買うついでに」が37.2%、「急に医薬品が必要になったので」が25.0%となっている。
実店舗とネット購入の使い分けでは、「初めて買う薬」や「すぐに必要な薬」は実店舗で、「いつも飲んでいる薬」「過去に使用したことがある薬」「名前を知っている薬」など、よく知っている薬はネットを利用する傾向が高い。

【ネット購入での一般用医薬品の選択ポイント/利便性】
ネット購入での一般用医薬品の選択ポイントは、1位:「価格」(65.6%)、2位:「効き目」44.8%、「商品名」(35.2%)。
ネット購入が実店舗と比べて便利な点は、1位:「営業時間に関係なく買うことが出来る」76.0%、2位:「安く購入できる」(54.4%)、3位:「手元まで届けてもらえる」(51.4%)。
販売サイトの選択基準は、1位:「大手オンラインモール(楽天、Yahooなど)に属している」(67.4%)、2位:「品ぞろえ」(35.6%)、3位:「日用品などのネットショッピングで使い慣れている」(31.2%)。

【一般用医薬品のネット販売制度理解度】
特に認知度の低い制度内容は、「ネット販売が出来る薬局には実際の店舗がある」21.6%、「ネット販売を行う店舗は厚生労働省HPの一覧で確認出来る」38.2%。
「登録販売者は薬剤師の資格を持っていない」こと39.6%、「どのドラッグストアにも薬剤師が常駐している」30.8%。

調査結果から、ネットで一般用医薬品を購入している消費者は、他の商品購入と同様、ネット購入の利便性と価格の安さを求めて利用していることが読み取れます。また、実店舗との使い分けとして、「いつも買っている」「よく知っている」薬を購入する際の購入手段として、ネットを活用しているのです。
「定期的に使用している」薬であれば、副作用や飲み合わせについては、既知のことでありさほど気にすることはなく、薬剤師に相談する必要もあまりないでしょう。
また、大手オンラインモールのショップや使い慣れているショップであれば、一定の信頼があるといえるでしょう。

一般用医薬品のネット販売制度は消費者を守るための制度ではありますが、事業者側に対する規制であり、制度自体を消費者が知らなければネットでの医薬品購入が危険であるというものではないと考えます。
医薬品のネット通販利用者は、安易に商品や販売サイトを選択しているのではなく、用途に応じて購入場所を使い分ける賢い消費者と言えるように思います。

(※)
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インターネットによる一般用医薬品の購入経験に関する調査
(くすりの適正使用協議会 2015.2.27)
http://www.rad-ar.or.jp/information/pdf/nr14-150227.pdf
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調査方法 : インターネット調査(ネオマーケティング)
実施期間 : 2014年12月19日(金)~2014年12月22日(月)
調査対象者: 2014年6月以降にインターネットで一般用医薬品を購入したことがある20~60代の男女:500名

≪関連記事≫
・改正薬事法施行 医薬品ネット販売が正式解禁!押さえておきたい販売ルール
・医薬品ネット販売 行政の薬事監視指導のガイドライン
・医薬品ネット販売、メール問い合わせに「返信があった」のは54.7%(厚労省 平成25年度 一般用医薬品販売制度定着状況調査)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。