電話注文での「定期購入」トラブルに注意喚起。電話受注でのアップセル・クロスセル営業に特商法規制強化へ(国民生活センター 2022年11月30日公表)

通信販売の「定期購入」に関する新たなトラブル事例について、2022年11月30日に国民生活センターが注意喚起しています。
今回、注意喚起された新たな手法は、テレビ・ラジオショッピングや新聞広告などをみて電話で注文したら、意図せず「定期購入」になっていたというものです。
主に60歳以上の高齢者の消費者トラブルとなっています。

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「おトクにお試しだけ」のつもりが「定期購入」に!?(No.3)
テレビショッピングなどをみて電話で注文したら、意図せず「定期購入」に!?
-「サンプル」「おまとめコース」などを勧められても要注意!-
(国民生活センター 2022年11月30日:公表)
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20221130_2.html
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また、本件注意喚起と同日の11月30日に、特定商取引法及び同施行令の一部改正案が公表され、電話受注の際のアップセル・クロスセルによる販売手法が、電話勧誘販売規制の適用を受ける法改正に向けて進んでいます。
問題となった通販「定期購入」に関するトラブルに絡んだ、電話受注でのアップセル・クロスセル営業に対する特商法規制強化の動きを確認します。


【相談事例1】
新聞折込広告の商品の注文のために電話したら、サプリメントの購入を勧められ、サンプルだけ受け取るはずが「定期購入」になっていた

・「拡大鏡」が今なら通常価格の半額で販売されているという新聞折込広告を見て、商品の注文のために電話した。
・販売業者から「目に良いサプリメントがあるのでサンプルを送る」と言われた。後日、拡大鏡とサプリメント1袋が届いた。
・一緒に届いた「明細書兼請求書」では、拡大鏡が「プレゼント」、サプリメントが「約3,000円」と記載されていて、サンプルだけ受け取るはずが「1年定期購入」になっていた。サプリメントの「定期購入」を注文した覚えはない。
(2022年3月受付 80歳代 女性 ※相談者:50歳代 女性)

【相談事例2】
テレビショッピングで見た商品を注文するために電話したところ、複数月分の商品の購入を勧められ、承諾したら複数月のおまとめコースの「定期購入」になっていた

・テレビショッピングで「漢方薬」の広告を見て、注文のため電話したところ、「3カ月は飲まないと効果があらわれない」との説明があったため、お試しのつもりで3箱を注文した。
・3か月後、同じ商品3箱分が再び届き、初めて定期購入であることが分かった。販売業者に問い合わせたところ、「変更やキャンセルについては次回お届け予定日の10日前までに解約の電話を入れないと応じられない」と言われた。電話で注文した際に、「定期購入」であることは聞いてなかったので納得できない。
(2022年7月受付 70歳代 男性)

定期購入トラブル対策の特商法改正の適用は?

2022年6月1日に施行された特定商取引法の改正では、定期購入契約での「お試し」や「トライアル」、「いつでも解約可能」などの強調表示での消費者を誤認させるような表示に関する禁止規定も盛り込まれました。
違反行為により消費者が誤認して申し込みをした場合には取消権が認められ、契約解除の妨害に当たる行為に対しては罰則付きの禁止となります。

・改正特商法対応急務、「最終確認画面」の義務表示事項と定期購入での禁止表示のポイント(2022年6月1日施行)

ただし、この法改正の規定の対象となる表示は、ネット通販の最終確認画面、チラシ・カタログなど書面による申込用紙となっており、電話による書面又は画面を利用しない通販申込は非該当となっています。

電話注文でのアップセル・クロスセル営業に特商法規制強化へ

テレビ・ラジオショッピングや新聞広告から商品の注文を受ける際、相談事例のように、広告商品とは別の商品を一緒に購入するように勧めたり、お得な複数月分の商品購入を勧めたりといったアップセルやクロスセルの営業を行うことはポピュラーな手法だと思います。

他方、消費者から見ると、電話注文時の販売業者からの勧誘は、消費者にとって不意打ち性があり、冷静に判断することが難しい場合があります。また、「定期購入」の契約は、販売条件や解約条件が複雑な場合が多く、特に高齢者にとっては販売業者からの電話による説明では正確に理解できないことがあります。

法規制の観点からは、広告で紹介された商品注文のために、消費者が販売業者に電話した際の販売業者からの勧誘は、現行の特定商取引法では「電話勧誘販売」に該当せず「通信販売」に該当します。そのため、販売業者に契約書面の交付義務やクーリング・オフがありませんでした。

しかしながら、今般、電話受注の際のアップセル・クロスセルによる販売手法が、電話勧誘販売規制の適用を受ける法改正に向けて進んでいます。
消費者庁は11月30日、特定商取引法及び同施行令の一部改正案を公表し、併せて、本改正案に関するパブリックコメントの募集を行っています。

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「特定商取引に関する法律施行令及び預託等取引に関する法律施行令の一部を改正する政令(案)」等に関する意見募集について(消費者庁取引対策課 2022年11月30日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/031328/

パブリックコメント募集ページ(e-Govウェブサイト)
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=235060024&Mode=0
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現行では、電話勧誘販売に該当する販売手法として、顧客から電話を掛けさせるケース(電話注文を促す広告等)を政令で郵便やチラシに限定しているところ、本改正において、その範囲を拡大するものとなっています。
具体的には、新聞、雑誌、ラジオ、TV、ウェブ等の広告を通じて注文を行う顧客に対しても、受注の電話において、当該広告には掲載のない商品の購入を勧めることが、電話勧誘販売規制の適用を受け、クーリングオフ制度の対象となる等の制約を受けることとなります。
つまり、今回問題となったような電話注文での「定期購入」トラブルに対して、クーリングオフが可能となります。

本来、アップセルやクロスセルの手法は、顧客を大切に扱い、密な関係を長く維持してLTV(ライフタイムバリュー)を最大化する考え方から生まれたものです。顧客との密なコミュニケーションがないと、アップセルもクロスセルもただの「ごり押し」になってしまいます。
定期購入契約をめぐる行き過ぎた販売手法により、規制は強まる一方です。
消費者が意図しない契約となることがないよう、お勧めする際には相手がきちんと理解できるよう十分配慮することが求められます。

≪参考記事≫

・2021年度も増加していた通販「定期購入」トラブル。電子タバコや医薬品など商品に広がりが(国民生活センター 2022年7月公表)

・悪質通販「定期購入」の新たな手口に注意喚起。規制に向けた行政の動きは?(国民生活センター 2022年9月公表)

・ネット通販「定期購入販売」関連相談、前年度比57.1%と大幅減少 (JADMA 2021年度消費者相談件数)

・JAROへの苦情、健康食品6割減。審査事案の3分の1がアフィリエイトサイト関連(日本広告審査機構 2021年度の審査概況)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。