広告主に課されるアフィリエイト広告の適正管理。ステマ規制も示される(事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針改正 2022年6月29日)

消費者庁より、アフィリエイト広告に対するコンプライアンス対応についての具体的な指針が示されました。

アフィリエイト広告に対する景品表示法の適用などに関する考え方として、既に規定のあった「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」と、景品表示法26条「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」が一部改訂され、2022年6月29日に公表されました。(※1)
指針は「アフィリエイト広告等に関する検討会」の報告書の提言を受け改定案が出され、パブリックコメントを経ての公表となっています。

・広告主に義務付けられるアフィリエイト広告の適正管理の措置とは。ステマ規制も強化の方向 (アフィリエイト広告等に関する検討会 報告書 2022年2月15日)

改定前の「事業者が講ずべき表示の管理上の措置」に関する指針は、基本的に、事業者内部で完結する表示システムを念頭に置いたもので、アフィリエイト広告のように表示の作成等を事業者の外部(ASPやアフィリエイター等)に委託する場合を念頭に置いて定められたものとなっていません。そのため、アフィリエイト広告の広告主が自ら講ずべき措置の具体的な指針が示されることとなりました。

広告主が正当な理由なく管理上の措置を講じていない場合には、消費者庁は勧告を行うことができ、広告主がその勧告に従わない場合は、その旨を公表できることとなっています。
また、必要な管理上の措置を講じていれば、課徴金の納付を命じられないこととなっています。
アフィリエイト広告に携わる方々に、コンプライアンス対策として押さえておいていただきたい内容となります。
概要を整理しました。

(※1)
「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」の一部改正案及び「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」の一部改定案に関する意見募集の結果の公示について
(消費者庁 2022年6月29日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/029287/


アフィリエイトプログラムの定義の追加事項

改定前の「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」におけるアフィリエイトプログラムのビジネスモデルでは、アフィリエイターの運営するサイトは「ブログその他のウェブサイト」とされていましたが、「比較サイト」、「ポイントサイト」が追加されました。
また、ユーザーが広告主のサイトにアクセスする手段は、「バナー広告等」とされていましたが、「商品画像リンク」、「テキストリンク」が追加されました。

また、アフィリエイトサイトやアフィリエイトサイトに誘導する広告事例として、以下の内容が追加されました。

  • 一見すると中立的な第三者が商品・サービスの紹介を行っているかのように装っている記事風の広告や体験談を掲載するウェブサイト自体がアフィリエイトサイトとなっているもの
  • 検索エンジンを活用した際に、検索結果と一緒にアフィリエイトサイトに誘導する広告を表示するもの
  • ポータルサイト等の広告枠にアフィリエイトサイトに誘導する広告を表示するもの
  • 動画配信サービスの映像に付随してアフィリエイトサイトに誘導する広告を表示するもの
  • SNSの広告枠やユーザーの投稿自体を用いてアフィリエイトサイトに誘導する広告やアフィリエイトリンクを表示するもの

アフィリエイト広告の不当表示に対する景品表示法上の規制対象は「広告主」

アフィリエイト広告は、景品表示法上は広告主の表示とされます。
広告主がアフィリエイト広告の表示内容の決定に関与している場合だけでなく、広告主が直接又はASP等を通じてアフィリエイターに対し、自己が供給する商品・サービスの広告としてアフィリエイト広告の作成を依頼する場合、アフィリエイターに広告主からの具体的な指示がなかったとしても、「表示内容の決定を委ねている」として、広告主が行った表示とされます。

そのため、アフィリエイターがアフィリエイトサイト内に掲載する広告、SNSへの投稿、アフィリエイターが自らのアフィリエイトサイトに誘導するために行う広告等での表示に、優良又は有利誤認が認められた場合は、景品表示法上の不当表示として広告主に責任が問われます。

問題となる事例:

  • アフィリエイトサイトにおいて、十分な根拠がないにもかかわらず、「医療関係者も勧める『フサフサになった育毛剤』がヤバイ!」等と表示
  • SNSへの投稿において、十分な根拠がないにもかかわらず、「バストアップが目標!!目に見える効果が出る!」、「#バストアップサプリ」等と表示

ただし、アフィリエイターが自らのアフィリエイトサイトに単に広告主のウェブサイトの URL を添付するだけなど、広告主の商品・サービスの内容や取引条件についての詳細な表示を行わないようなアフィリエイト広告については、通常、不当表示等が発生することはないと考えられるとしています。

アフィリエイト広告で広告主の表示とみなされないケース
アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態にあるもの。
例:
広告主とアフィリエイターとの間で表示に関する情報のやり取りが一切行われていないなど。


「管理上の措置」については、景表法第26条において事業者に義務付けられたもので、その「指針」は、事業者が不当表示を未然防止するために具体的にどうすればいいかの参考とするものです。
ですので、不当表示等を未然に防止するための措置は行わなければなりませんが、指針に示された事例と同じ措置を採らなかったとしても、直ちに景表法違反になるわけではなく、事業者の裁量にゆだねられているものです。

例えば、指針には「アフィリエイト広告に事業者の「広告」である旨を明示することが望ましいこと」が追加されていますが、必ずしも「広告」と書かなくても、不当表示等を未然に防止するための必要な措置が適切に講じられていればよい、とパブコメの意見に対して考え方を示しています。

とはいえ、ステマは、これまで景表法における不当表示としては規制されてきませんでしたが、今回の指針の改正で、優良・有利誤認を誘発する行為として行政が捉えていることが明らかにされたと言えるでしょう。

「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」に追加された広告主がASPやアフィリエイターに対して講じるべき措置について、以下の記事にまとめています。
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《参考記事》

・アフィリエイトに加えてインスタ投稿が違反対象表示に。アクガレージとアシストの豊胸サプリに景表法措置命令(消費者庁 2021年11月9日)

・令和3年8月施行の改正薬機法で新設の課徴金制度、アフィリエイトは課徴金の対象になるのか?

令和3年度、アフィリエイト広告の適正化に向けた本格的な法執行へ

・T.Sコーポレーション男性用育毛剤のアフィリエイト広告に、消費者庁による初の景表法措置命令 (消費者庁 2021年3月3日)

・シミ消し化粧品のアフィリエイト広告に、初の消費者安全法による注意喚起 (消費者庁 2021年3月1日)

健康食品「肝パワーEプラス」の記事態広告アフィリエイトで薬機法違反。広告主、広告代理店、制作会社社員が同時逮捕

・消費者庁も注目!口コミ・インフルエンサーマーケティングの消費トラブルと業界自主規制(第30回インターネット消費者取引連絡会(平成30年9月))

・口コミ・インフルエンサーマーケティングの法規制(第30回インターネット消費者取引連絡会(平成30年9月))

・「口コミ・インフルエンサーマーケティング」に求められるコンプライアンスとは

・アフィリエイトサイトの不適切な表示の法的責任主体は?

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。