医薬品、医療機器等の虚偽・誇大広告に対する課徴金制度と措置命令の運用を盛り込んだ改正医薬品医療機器法(薬機法)が2021年8月1日に施行されました。(2019年12月4日公布)
課徴金制度と措置命令というと、既に景品表示法による運用がなされています。
景品表示法と比較しつつ、広告規制対象の違いと業界への影響について考察します。
課徴金制度導入の目的は?
両法とも不当表示の抑止という点は同じですが、薬機法は規制の実効性の確保、景表法は消費者の被害回復にポイントが置かれています。
薬機法:
薬機法で禁止している医薬品、医療機器等の虚偽・誇大広告の販売で得た経済的利得を徴収し、違反行為者がそれを保持し得ないようにすることによって違反行為の抑止を図り、規制の実効性を確保するための措置として導入する。
景表法:
不当な表示による顧客の誘引を防止するため、不当な表示を行った事業者に対する課徴金制度を導入するとともに、被害回復を促進する観点から返金による課徴金額の減額等の措置を講ずる。
課徴金の対象行為は?
薬機法、景表法ともに、虚偽誇大広告に対する適用となっています。
薬機法:
「虚偽・誇大広告」(第66条)
医薬品等の名称、製造方法、効能・効果、性能に関する虚偽・誇大な記事の広告・記述・流布の禁止。(第1項)
※承認前医薬品等の広告の禁止(第68条)(薬品的な効能効果をうたった健康食品や雑品の広告)は対象となっていません。
景表法:
・優良誤認表示(5条1号)
・有利誤認表示(5条2号)
課徴金額は?
薬機法:
違反を行っていた期間中(最長3年間)における対象商品の売上額 × 4.5%
景表法:
違反を行っていた期間中(最長3年間)における対象商品・役務の売上額 × 3%
課徴金を免除・減額されるケースは?
(赤字部分は相違する内容)
薬機法:
・ 課徴金額が225万円(対象品目の売上げ5000万円)未満の場合は、課徴金納付命令は行わない。
・ 業務改善命令、措置命令等の処分をする場合で、保健衛生上の危害の発生・拡大への影響が軽微であるとき等には、課徴金納付命令をしないことができる。
•違反行為をやめた日から5年を経過した場合、課徴金を賦課しない。
・違反行為を自主申告した事業者に対し、課徴金額の50%を減額する。
・同一事案に対して、景表法の課徴金納付命令がある場合は、売上額 × 3% (※ 景表法の課徴金算定率) を控除され、差分である1.5%となる。
景表法:
・ 課徴金額が150万円(対象品目の売上げ5000万円)未満の場合は、課徴金納付命令は行わない。
・違反事業者が相当の注意を怠った者でないと認められるときは、課徴金を賦課しない。
•違反行為をやめた日から5年を経過した場合、課徴金を賦課しない。
・違反行為を自主申告した事業者に対し、課徴金額の50%を減額する。
・返金措置の実施による課徴金額の減額あり。
納付命令の実施主体は?
薬機法:
国(厚生労働省)
景表法:
国(消費者庁)
薬機法においては、虚偽・誇大広告(66条違反)に違反した場合の罰金の水準は最高でも200万円(個人、法人共に)以下の罰金となっていました。
(薬機法全体の最高額:個人300万円※、法人1億円)※指定薬物に関する部分は除く
本法改正で課徴金制度が導入されることにより、違反行為の抑止力が強まることが期待されます。
次ページでは、 課徴金の対象外となる商品や事業者 について解説します。
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