食品による健康被害防止対策強化へ。食品衛生法、食品表示法改正(平成30年6月 食品衛生法改正、平成30年11月閣議決定 食品表示法改正案)

健康食品による健康被害が多発しています。
先日の記事でもご紹介したように2016年度、2017年年度に国民生活センターに寄せられた健康被害情報件数のトップは健康食品によるもので、年間1,800件超となり、危害情報全体の約16%を占めました。

昨年には、プエラリア・ミリフィカを含む食品について、平成29年7月までの過去5年間で223事例の健康被害が報告され、ホルモン様作用をもつ成分等が含まれている食品について、製造管理が適切でなく含有量が均一でないこと、科学的根拠に基づかない摂取目安量が設定されていること等による健康被害が問題視されました。

このような状況を踏まえて、最近、法改正の動きが活発です。
平成30年6月13日に公布された食品衛生法の改正では、特定の食品による“健康被害情報の届出”の義務化及び、食品リコール情報の報告制度が創設されました。
また、平成30年11月9日に閣議決定された食品表示法の改正案では、アレルギーや消費期限の誤表示など、食品表示法違反による食品リコールの届出の義務付けが盛り込まれています。

食品による健康被害防止やリコール対応に関連する法改正のポイントを確認します。

食品衛生法等の一部を改正する法律(平成30年6月13日公布)
●特定の食品による「健康被害情報の届出」を義務化
(公布の日から起算して2年以内に施行予定)
厚生労働大臣が定める特別の注意を必要とする成分等を含む食品による健康被害が発生した場合、事業者から行政へ、その情報を届け出ることを義務化。
https://www.mhlw.go.jp/content/11131500/000345960.pdf
※「厚生労働大臣が定める特別の注意を必要とする成分等を含む食品」
健康被害情報や文献等による生理活性情報を科学的な観点で整理し、薬事・食品衛生審議会や食品安全委員会における専門家の意見を聴き、パブリックコメント等を行った上で、特別の注意を必要とする成分等の指定を行う。


「健康食品」による健康被害への対応は、これまで健康被害情報の収集が制度化されておらず、必要な情報収集が困難であり、健康被害の発生・拡大を防止するための食衛法を適用するための根拠が不足していました。

食衛法では、健康被害発生時の対応として、健康に危害を及ぼす食品の「販売禁止措置」(第6条)と「暫定流通禁止措置」(第7条)の規定があります。6条の運用は、因果関係が明確であること必要ですが、7条は因果関係が不明瞭な場合に適用されます。
「プエラリア・ミリフィカ」以外にも、過去に「コエンザイムQ10」「スギ花粉」「アガリクス」等の健康被害問題がありましたが、対応は消費者への注意喚起と事業者への行政指導に留まり、食衛法の販売禁止や暫定流通禁止の適用はありませんでした。
(営業の自由に対し大きな影響を与える等の理由から)

そこで、今回の法改正により、健康被害の発生を未然に防止する見地から、特別の注意を必要とする成分を含む食品による健康被害が発生した場合、事業者から行政へ、その情報を届け出ることが義務化されました。
ただし、いわゆる「健康食品」による健康被害情報については、引き続き、通知に基づき、任意の情報収集を行う、となっています。

●食品の「リコール情報」の行政への報告を義務化
(平成30年6月13日改正法公布、公布後3年以内に施行予定)。
事業者が食品の自主回収(リコール)を行う場合に、自治体を通じて国へ報告する仕組みを作り、リコール情報の報告を義務化。
また、このリコール情報を一覧化してHP等で発信する。
https://www.mhlw.go.jp/content/11131500/000345966.pdf

事業者による食品等のリコール情報を行政が確実に把握し、的確な監視指導や消費者への情報提供につなげ、食品による健康被害の発生防止を意図しています。
(リコール報告の対象)
・ 食品衛生法に違反する食品
・ 食品衛生法違反のおそれがある食品
※ 食品衛生法違反となる原因となった原材料を使用した他の製品や、製造ラインの硬質部品が破損して製品に混入した場合等

食品表示法の一部を改正する法律案(平成30年11月9日 閣議決定)
●食品表示基準違反食品の自主回収(リコール)情報の行政への届出を義務化
※届出対象となる食品表示基準違反:アレルゲン、消費期限などの欠落や誤表示
当該届出に係る食品リコール情報については、行政において消費者に情報提供(公表)。
届出をしない又は虚偽の届出をした者は罰金。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/amendment_001/

食品リコール情報の消費者への一元的かつ速やかな提供により、対象食品の喫食を防止し、健康危害の未然防止効果を期待します。
行政によるデータ分析・改善指導を通じ、食品表示法違反の防止を図ります。

リコール情報の届け出は、一部の自治体が条例を制定して実施していましたが、全国的な制度はなく、本改正により、食品衛生法及び食品表示法一体での食品リコール情報の届出制度の円滑かつ齟齬のない運用を図る意向です。

◆食品衛生法の改正について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000197196.html

◆「食品表示法の一部を改正する法律案」の閣議決定
(第197回国会(臨時会)提出法案 消費者庁)
http://www.caa.go.jp/law/bills/#197

《関連記事》
・食品衛生法改正に向け「健康食品」健康被害防止規制強化の方向へ。
リスクコミュニケーションを重視(厚労省 食品衛生法改正懇談会)

・プエラリア健康食品の健康被害問題の課題と今後の対応

・特別用途食品、プエラリア健康食品の監視指導が重点に。年末一斉、食品表示の取締り。(平成28年12月 消費者庁)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。