3月4日、特定商取引法の改正案と消費者契約法の改正案が閣議決定しました。
両法とも消費者契約の適正化を図る代表的な消費者保護法です。
特商法が通販や訪販などを規制する法律であるのに対し、消契法は、実店舗、無店舗問わず、全ての商取引行為が対象となる法律です。
法改正の背景に、昨今拡大している悪質事業者による消費者被害救済を図ることがあります。
特定商取引法の改正では悪質業者の取り締まりを強化、消費者契約法の改正では高齢者被害対策として契約の取消しと契約条項の無効等の規制を盛り込まれています。
《主な改正のポイント》
特定商取引法:
●次々と法人を立ち上げて違反行為を行う事業者への対処
●所在不明の違反事業者への処分
●消費者利益の保護のための行政処分規定の整備
●電話勧誘販売における過量販売規制の導入
●通信販売におけるFAX広告への規制の導入
●取消権の行使期間の伸長
消費者契約法:
●取消しの対象となる消費者契約の範囲を拡大
●無効とする消費者の解除権を放棄させる条項の追加
●無効となる消費者の利益を一方的に害する契約条項の追加
ポイントを整理しました。
特定商取引法:
●次々と法人を立ち上げて違反行為を行う事業者への対処
・業務停止を命ぜられた法人の「取締役」や「取締役と同等の支配力を有すると認められるもの等」に対して、停止の範囲内の業務を、新たに法人を設立して継続することを禁止する。
⇒違反した場合、個人は3年以下の懲役又は300万円以下の罰金、法人は3億円以下の罰金<新設>
・業務停止命令の期間の伸長(最長1年→2年)
・行政調査「質問」に関する権限の強化
⇒違反した場合、個人は6月以下の懲役又は100万円以下の罰金、法人は100万円以下の罰金<新設。なお、報告徴収・立入検査等の他の検査忌避についても同様に懲役刑を追加。>
・不実告知等に対する法人への罰金を300万円以下から1億円以下に引き上げ
・業務停止命令違反に対する懲役刑の上限を2年から3年に引き上げ 等
●所在不明の違反事業者への処分
違反事業者のホームページに住所の記載がない場合など、所在不明で処分書が送付できない場合、処分書を交付する旨を一定期間掲示することで事業者に交付されたものとみなす「公示送達」処分を可能にした。
●消費者利益の保護のための行政処分規定の整備
処分事業者に対して、消費者利益を保護するために必要な措置を指示できることを明示。例)行政処分があった旨の既存顧客への通知や、返金を求める消費者への適切な対応(計画的な返金の実施等)等を指示する。
⇒違反した場合、業務停止命令及び刑事罰(個人は6月以下の懲役又は100万円以下の罰金、法人は100万円以下の罰金<指示違反行為に懲役刑を追加>)
●電話勧誘販売における過量販売規制の導入
電話勧誘販売において、消費者が日常生活において通常必要とされる分量を著しく超える商品の売買契約等について、行政処分(指示等)の対象とするとともに、申込みの撤回又は解除を行うことができるようにする(消費者にその契約を締結する特別の事情がある場合を除く)。
「過量」の例:
・寝具(4か月で6回購入)
・化粧品(72本の化粧水と乳液、2,160袋のパウダーを購入)
●通信販売におけるFAX広告への規制の導入
電子メール広告規制の拡充。FAX広告を請求等していない消費者に対するFAX広告の提供を禁止する(オプトイン規制)
●取消権の行使期間の伸長
現在の6月から1年に伸長。
消費者契約法:
●取消しの対象となる消費者契約の範囲を拡大
・新たな取消事由に「過量な内容の契約の取消し」を追加。
・これまで商品等の内容や対価等の取引条件に限定されていた不実告知の重要事項に、「消費者の生命、身体、財産その他の重要な利益についての損害又は危険を回避するために通常必要であると判断される事情」を追加。
例)
・「タイヤの溝がすり減っていてこのまま走ると危ない」と言われ勧められるままにタイヤを交換したようなケース。
・「床下にシロアリがおり、このままでは家が危ない」と言われ床下のシロアリ駆除剤散布等の契約をしたようなケース。
・取消権の行使期間を6か月→1年に伸長。
●無効とする消費者の解除権を放棄させる条項の追加
・事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権を放棄させる条項。
例)「事業者の責任で消費者に債務を履行できなかったとしても消費者は一切契約を解除できません」といった趣旨の契約条項が無効となる。
・消費者契約が有償契約である場合に、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があること等により生じた消費者の解除権を放棄させる条項。
例)「セール品につき返品お断り」との契約条項が、商品に不具合があり債務不履行や瑕疵があったとしても一切責任を負わないという趣旨であれば、その契約条件は無効となる。
●無効となる消費者の利益を一方的に害する契約条項の例示追加
消費者の不作為をもって、当該消費者が新たな消費者契約の申込み又は承諾の意思表示をしたものとみなす条項。
(無効となると想定された例)
・「通信販売での掃除機の売買契約において、商品の掃除機が届けられた際に健康食品が同封されており、続購入が不要である旨の電話をしない限り、当該健康食品を継続的に購入する旨の条項が含まれていた」といったものが該当。
・契約期間が満了する際に事前に通知をしない限り契約が更新されるという、いわゆる自動更新条項。
(無効とならないと想定された例)
・雑誌の定期購読契約(月刊誌・1年間)に、期間満了までに継続しない旨の連絡をしない限り、同じ条件で1年間定期購読が延長になるという自動更新条項が含まれていた。契約締結時にその旨の説明も受けていた。
施行期日は、特定商取引法は公布日から1年6月以内、消費者契約法は1年を経過した日を予定しています。
———————————————————————–
特定商取引に関する法律の一部を改正する法律案
消費者契約法の一部を改正する法律案
(平成28年3月4日 第190回国会(常会)提出法案 消費者庁)
https://www.caa.go.jp/law/bills/
————————————————————————
≪関連記事≫
・通販広告規制強化見送り。消費者契約法と特定商取引法の行方 (2015年12月 内閣府消費者委員会専門調査会報告書)
======================================
◆広告法務コンサルティング・社員教育◆
販促・広報戦略、商品表示・広告チェック社内体制構築等、
社外専門家としてのノウハウとサポート
詳細はこちら
======================================
————————————————————-
◆本ブログをメルマガでまとめ読み!
本ブログの1週間分の情報を、ダイジェストでお届けしています。
登録はこちら
————————————————————-
この記事へのコメントはありません。