通販広告規制強化見送り。消費者契約法と特定商取引法の行方 (2015年12月 内閣府消費者委員会専門調査会報告書)


法改正審議が続いていた「消費者契約法(消契法)」「特定商取引法(特商法)」について、昨年12月末、内閣府消費者委員会専門調査会報告書がまとまりました。

改正案として挙がっていた、

●虚偽・誇大広告への取消権の付与(特商法)
●取消しの適用対象となる「勧誘」要件の拡大(消契法)
(取消しの対象に不特定多数に向けた「広告等」を含める)

等は、今回の審議では、法改正の目的である悪質な事業者排除のために有効な規制要件を明確にすることができず、意見の一致を見なかったとして見送られました。

特商法はネット通販サイトにも表示義務付けがありますのでご存じと思いますが、消契法に関しては馴染みが薄いという方もいらっしゃるでしょうか。

特商法が通販や訪販などを規制する法律であるのに対し、消契法は、実店舗、無店舗問わず、全ての商取引行為が対象となる法律で、両法とも消費者契約の適正化を図る代表的な消費者保護法です。

昨今、消費者被害は拡大しており、悪徳商法や誇大広告などによる2014年の消費者被害額は、約6兆7千億円に上ったと消費者庁が推計値を発表しています。
拡大している悪質事業者による消費者被害救済を図ることが、法改正の背景にあります。

しかし、改正案に対し、「行き過ぎた消費者保護となる恐れがあり、企業の健全なビジネスを阻害しかねない」と事業者側は猛反発。
(特定商取引法専門調査会中間整理に寄せられた意見のうち、勧誘に関する規制への意見は、賛成 545 件、反対 39,428 件。)

ECビジネスへのマイナス影響として事業者側の主な懸念は、ネット広告に対して消費者が主観で不当表示であることを主張すれば(たとえば、「実際に手に取った商品は通販サイトで見たものとイメージが違う」など)、簡単に商品返品要求ができるようになるのでは、というものです。

ただし、今回は見送られることとなった上記改正案ですが、全く否定されたわ
けではありません。

消契法専門調査会報告書では、
「必ずしも特定の消費者に対する働きかけでなければ「勧誘」に含まれないと
いうわけではないこと(不特定多数に向けた「広告等」も「勧誘」に含まれる)
を逐条解説に記載すること。」

特商法専門調査会報告書では、
「平成 26 年に改正が行われた景品表示法の執行・運用状況や消費者契約法の
適用の状況等も踏まえながら、必要に応じて、検討が行われることが期待される。」

と言及されています。

ネット通販において大きな消費者トラブルが発生すれば、規制強化の議論が再燃することでしょう。
拡大中のネイティブ広告や、ソーシャルメディア上の広告、ターゲティング広告配信なども、「消費者の契約締結の意思の形成過程に瑕疵を生じさせる
(不適切な広告により消費者が契約する上での誤解を与えた)」とみなされれば、「勧誘」として取消し規律の適用対象となる可能性大です。

様々なネット広告手法が開発される中、常に消費者に信頼される販売方法、提供方法に留意する企業姿勢こそが消費者に支持され、長い目で見て悪質事業者を市場から排除することにつながるのだと思います。

悪質事業者による被害拡大は、直接被害を受ける消費者だけの問題ではありません。安全安心な商取引環境が確保できなければ、市場の更なる成長を阻害します。また、法執行体制や国セン等の相談体制の強化・充実、消費者教育の推進等の施策に対して、国民の税金が資源となりますので国全体の損失となります。

事業者として、国民として、不正な手段で消費者を食い物にする悪質事業者を撲滅していきたいと思います。

◆消費者被害・トラブル額に関する意見交換会
(消費者庁 平成27年5月11日開催)

◆特定商取引法専門調査会報告書
(消費者委員会 特定商取引法専門調査会 2015年12月24日)

◆消費者契約法専門調査会報告書
(消費者委員会 消費者契約法専門調査会 2015年12月25日)

(参考記事)

・消費者庁平成28年度予算実質3.6億円の増額。課徴金制度対応人員9人増、執行体制強化
(平成28年度予算案・機構定員要求の結果)

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