令和5年度の保健機能食品(特別用途食品、特定保健用食品、機能性表示食品)の栄養成分、関与成分、機能性関与成分に関する買上調査の結果を、消費者庁が公表しました。(※)
今回の調査では、機能性表示食品2品について、申請等資料に記載された含有量を下回った商品が確認されています。
(※)
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「令和5年度特別用途食品(特定保健食品を除く。)に係る栄養成分等、特定保健用食品に係る関与成分及び機能性表示食品に係る機能性関与成分に関する検証事業(買上調査)」の調査結果について(消費者庁 2024年11月7日)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/research/2023/assets/food_labeling_cms206_241107_01.pdf
過去の食品表示に関する調査事業等について
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/research
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令和6年の3月の小林製薬「紅麹サプリ」をめぐる健康被害問題で損なわれた機能性表示食品制度に対する信頼性を高めるための措置として、来年度以降、事後チェックのための買上事業の対象件数の拡充が検討されています。
令和6年度予算は1,500万円で100商品程度でしたが、令和7年度概算要求額が9,000万円となっており、大幅な件数増加が予想されます。
本記事では、買上調査の品目に機能性表示食品が加わった平成29年度以降の調査概況と、これまでの行政の取り組みについて解説します。
保健機能食品の買上調査概況
調査目的:
販売されている製品中の成分の含有量の分析・検証を行うことを通じ、申請等を行う事業者の品質管理の質向上を図るとともに適正な表示による消費者への情報提供がなされることを目的とする。
調査方法:
・市場に流通している食品を買い上げ、許可等申請又は届出の際に提出された資料に記載された分析方法にのっとって分析試験を実施。(原則1商品につき2ロット)
・機能性表示食品の機能性関与成分、特定保健用食品の関与成分、特別用途食品の栄養成分の含有量を分析し、その結果に基づき対象商品に表示されている成分の表示値の妥当性を評価。(利益相反を排除するため、どの商品を分析するのかブラインドして分析)
・1機関での分析結果で、含有量が表示値を下回る等、表示値の範囲外の結果が得られた場合は、別の機関で再分析。
調査対象集計結果:
※特別用途食品、特定保健用食品及び機能性表示食品で重複する事業者があるため、内訳の社数の合計と一致しない。
関与成分量調査結果:
令和5年度:
機能性表示食品2品について、申請等資料に記載された含有量を下回った。
事案1:
製造時、原材料中に機能性関与成分は十分含有されていたが、喫食時の状態では機能性関与成分の量が申請等資料に記載された含有量を下回っていた分析結果となったことが判明した。なお、当該届出者は当該ロットを含め当該商品の販売を中止し、届出を撤回した。
※原料と喫食時の状態が違う商品について、調理をしたり、抽出をしたり、消費者自身で手を加えて喫食する商品。
事案2:
機能性関与成分の量の分析結果が申請等資料に記載された含有量を下回った分析結果であったが、その後に届出者が分析機関に依頼して同一ロット品を分析したところ、申請等資料に記載された含有量を上回る結果であった。なお、当該届出者は当該ロットを含め当該商品の販売を中止し、届出を撤回した。
※分析結果が異なった理由について、保管状況や、流通経路の長さによるものと確認されている。
《参考:過去の調査結果》
平成29年度:
機能性表示食品1品目、特定保健用食品1品目が、関与成分等が申請等資料の記載どおり適切に含有されていなかった。
機能性表示食品は、生鮮食品又は単一の農林水産物のみが原材料である加工食品であり、表示値を下回る可能性がある旨の表示あり。 (※)
特定保健用食品は、既に製造・販売を終了。
※「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」において、含有量にばらつきやすい生鮮食品及び単一の農林水産物のみが原材料である加工食品の場合、ばらつきを生じさせない対策を採ることが前提となるが、どうしても表示値を下回る可能性がある場合は、その旨の注意書きを付すものとしている。
平成30年度:
全ての調査対象品目における関与成分等は申請等資料の記載どおり適切に含有されていた。
令和元年度、令和2年度:
機能性表示食品1品目が、関与成分等が申請等資料の記載どおり適切に含有されていなかった。
生鮮食品又は単一の農林水産物のみが原材料である加工食品であり、表示値を下回る可能性がある旨の表示あり。
当該製品は食品表示法違反となるものではないが、事業者に対し品質管理方法等を改善し、ばらつきの少ない製品となるよう指導していく。
令和3年度:
機能性表示食品1品目が、関与成分等が申請等資料の記載どおり適切に含有されていなかった。
当該結果を被疑情報として調査等を行い、必要な対応を行う。
令和4年度:
機能性表示食品2品について、申請等資料に記載された含有量を下回った。
事案1:
申請等資料に記載されていた分析方法では、機能性関与成分を正確に測定できない可能性のあることが判明した。届出者による見直し後の分析方法によって当該製品を再測定したところ、当該届出に係る製品中の機能性関与成分の含有量は申請等資料の記載どおりとなることが確認された。この結果を踏まえ、当該届出者は、見直し後の分析方法を届出内容とする旨の変更届出を行った。
事案2:
機能性関与成分を含む原材料を十分配合していたものの、機能性関与成分の減衰を見越した品質管理が行われていなかったため、賞味期限内の機能性関与成分量を担保できず、申請等資料に記載された含有量を下回る分析結果となったことが判明した。この結果を踏まえ、当該届出者は、当該製品の販売を中止し、届出を撤回した。
※上記事案の分析結果は、食品表示基準違反の被疑情報として取扱い、食品表示法第6条の規定による指示等を行う事案と判断する場合は、同法第7条の規定に基づき、製品名を含め、事案内容を公表することとする。
成分の配合量等、品質管理に不備があると
保健機能食品においては関与成分等が申請等を行った含有量を満たしていない場合、食品表示法違反として、食品表示法の指示や命令並びに公表のほか、罰則の対象となる可能性があります。
(生鮮食品又は単一の農林水産物のみが原材料である加工食品以外の機能性表示食品では、注意書きを行っていれば、成分量のある程度のばらつきはみとめられます。)
令和4年度5年度の調査結果を踏まえると、商品の保管状況や流通経路の長さ、賞味期限、原料と喫食時の状態が違うなど、出荷後を含めた商品特性に応じた届け出た機能性関与成分含有量を保証できる製品設計、製造、品質管理が求められます。
また、紅麹関連製品による健康被害を受け、食品表示基準の一部改正が令和6年9月1日に施行され、製造工程管理による製品の品質の確保を徹底する観点から、機能性表示を行うサプリメントについてはGMPに基づく製造管理が義務化されました。(令和8年9月1日までに実施)
さらに、届出者が自主点検をするとともに、必要な体制を整備した上で消費者庁が食品表示法に基づく立入検査等を行うこととなっています。
保健機能食品の品質管理についての事後チェックが厳しくなった契機として、2016年9月の日本サプリメントのトクホ制度初の表示許可取消し処分や、機能性表示食品の届出表示そのものの裏付けとなる科学的根拠が合理性を欠いていることが問題となった2023年6月30日のさくらフォレストに対する景品表示法による措置命令事案があります。
保健機能食品の品質管理規制強化の経緯について、以下の記事で解説しています。
ご参考ください。
・日本サプリメント トクホ初の許可取り消しと、規制強化の動向
・トクホ制度見直し、「新たな科学的知見」「定期的な品質管理」の報告義務化(消費者庁 2017年3月17日)
・平成28年度トクホ買上調査結果公表 2製品が含有量不足で自主回収 (消費者庁 2017年5月17日)
・平成29年度、特保・機能性表示食品買上調査 2製品が含有量不足。消費者庁の見解は?
(消費者庁 2018年4月9日)
・さくらフォレストの機能性表示食品に景表法措置命令、届出表示の根拠認めず。同一根拠届出製品約90件も個別確認へ(消費者庁 2023年6月30日)
・令和4年度保健機能食品の買上調査、機能性表示食品2品に食品表示法違反の疑い。今後の規制動向は?
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