JAROへの苦情、コロナ関連半減、定期購入トラブル、健康食品から化粧品へ(日本広告審査機構 2021年度上半期の審査概況)

定期購入契約の苦情は減少せず横ばい

定期購入に関する苦情が当期144件(前年同期147件)で、減少には至っていない。
業種については、化粧品50件(同26件)、健康食品43件(84件)、医薬部外品34件(27件)とこれまで通り美容・健康系商材が上位を占めたが、化粧品が大幅増加し、健康食品が大きく減少し、商材に変化が見られた。
健康食品の減少は、特定商取引法や医薬品医療機器等法の改正、消費者庁によるアフィリエイト対策検討会、2020年7月、2021年3月には広告主以外の事業者が逮捕される事件の影響か。

(JAROの公表資料より引用)

新型コロナウイルス関連の相談は半減

2021年度上半期の苦情は298件(前年同期598件)、照会は92件(同160件)で、ほぼ半減した。
前年同期の苦情はマスクや除菌スプレーが中心だったが、今期はワクチン接種を推奨する政府広報や屋外で飲む場面があるアルコール飲料、PCR検査をうたうクリニックなどの広告。照会は、マスクや企業広告、コロナ抗体検査キット(雑貨品)の相談が寄せられた。

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2021年度上半期の審査概況
(公益社団法人 日本広告審査機構 2021年12月7日)
https://www.jaro.or.jp/news/20211207.html
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定期購入トラブル、健康食品から化粧品へ

2021年度上半期における定期購入に関する苦情に関して、健康食品が大きく減少し、化粧品が大幅増加している傾向は、東京都消費生活総合センターに寄せられた消費生活相談においても同様の傾向が見られます。

前年同期と比べて増加が目立つ相談は、第4位の「化粧品」で、シャンプーや乳液等の各種化粧品の定期購入に関する相談が昨年度に比べて103件(21.2%)増加した。一方、健康食品やダイエットサプリメント等の定期購入に関する相談である第10位「健康食品」は、前年同期と比べて567件(63.6%)減少と、同じ定期購入に関する相談であっても「化粧品」とは対照的に大幅に減少している。

令和3(2021)年度 消費生活相談の受付状況と傾向
(東京都 2021年12月13日)
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/sodan/tokei/r3_kamihanki.html

定期購入規制は2022年度本格化

定期購入に対する規制強化施策として、令和3年特定商取引法・預託法の改正(2021年6月16日に公布 1年以内施行)では、定期購入を含めた通信販売で消費者を誤認させる表示などをした場合の直罰化と罰金の規定が盛り込まれました。

また、法改正では、申し込みの最終段階で「分量」「販売価格」などの表示を義務づける規定(「事業者が設定した通信販売の申込画面について、契約条件表示事項の義務と誤認を招く表示の禁止」(第12条の6)等)が新設されています。
その考え方を示す、「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン(案)」のパブリックコメントも終了し、近くガイドラインが公表されます。

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通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン(案)に関する意見募集について
(消費者庁:受付開始日時2021年11月24日14時0分、受付締切日時2021年12月23日14時0分)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/026648/
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消費者庁の発表した令和4年度予算案には、「特定商取引法及び預託法等の周知及び法執行」 として、2億4千万円が計上され、「詐欺的な定期購入商法への対策や販売預託の原則禁止等に関する改正内容、悪質商法の手口等について周知・徹底するとともに、法執行に必要な環境の整備・充実を図る。」としています。

定期購入に関しては、悪質事業者が商材を健康食品から化粧品に切り替えたとしても、今後さらに厳しい法執行が予想されます。

《関連記事》
・ネット通販定期購入(株)BIZENTOに特商法による業務停止命令(3カ月)。
「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン(案)」のパブコメ開始(東北経済産業局 2021年11月25日)

・JAROへの苦情媒体、ネット広告の増加続く。「厳重警告」判定15件、うち14件はアフィリエイト関連(日本広告審査機構 2020年度の審査概況)

・JAROへの苦情媒体、ネット広告が53%増。動画広告が4倍に。
(日本広告審査機構 2020年度上半期の審査概況)

・JAROへの苦情媒体、ネット広告がトップに。アフィリエイト関連は「警告」31件中18件
(日本広告審査機構 2019年度の審査概況)

・JAROへの苦情、通販定期購入契約の苦情は減少せず。ネット広告への苦情二桁増続く
(日本広告審査機構 2018年度の審査概況)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。