悪質通販「定期購入」の新たな手口に注意喚起。規制に向けた行政の動きは?(国民生活センター 2022年9月公表)

通信販売の「お試し定期購入」に関する新たなトラブル事例について、2022年9月7日に国民生活センターが注意喚起しています。
同センターでは7月に、ネット通販の定期購入トラブルの消費者相談件数が2021年度に5万8,261件に達し、22年度も21年度と同レベルの相談件数に達することが懸念されることを発表しています。

・2021年度も増加していた通販「定期購入」トラブル。電子タバコや医薬品など商品に広がりが(国民生活センター 2022年7月公表)

今回、注意喚起された新たな手法は、販売サイトで「いつでも解約可能」などと表示し、消費者の注文完了直後に「特別割引クーポン」を提示、クーポンを利用すると消費者が気づかないうちに“複数回の購入が条件の定期購入”にコース変更されるというもの。
「最終確認画面」にコースが変更される旨が表示されていなかったり、表示されていても、文字が小さかったり、多数回スクロールしないと確認できなかったりと、消費者が認識しづらいものとなっています。

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「おトクにお試しだけ」のつもりが「定期購入」に!?(No.2)
注文直後に表示された「特別割引クーポン」を利用したら、いつの間にかコース内容が変わっていた!?
(国民生活センター 2022年9月7日:公表)
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20220907_2.html
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悪質な通販「定期購入」に関する最新の手口と、規制に向けた行政の動きについて確認します。


【相談事例】
「定期縛りなし」と表示された定期購入を申込んだはずが、申込み直後に表示された「特別割引クーポン」を利用したことで、いつの間にか4回の購入が条件のコースに変更されていた。

「特別割引クーポン」の利用でコースが変更される画面表示と流れの例

(国民生活センター公表ページより引用 
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20220907_2.html)

【参考資料】「特別割引クーポン」の利用でコースが変更される画面表示と画面遷移の例

(国民生活センター報告書より引用
 https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20220907_2.pdf)

「割引クーポン」を利用した同様の悪質事例が報告されている

JAROが公表した2021年度の消費者からの広告相談報告においても、同様の事例が紹介されていました。

・化粧品のインフィード広告や動画共有サイトの広告に、「初回お得な価格」「定期縛りなし」と書かれているのを見て通販サイトから申し込むと、契約完了時に「ちょっと待って!」などと書かれたページが表示され、「もう一箱もらえます」「特別クーポンでさらに〇%引き」など本契約がよりお得に購入できるかのような表示が出る。
・「今から5分間」などとカウントダウンが始まり、短い時間の中で選択を迫られて当該キャンペーンに申し込むと、最初の契約では定期購入回数の縛りはなかったのに、新たに提示された契約では複数回の購入条件となっており、総額が数万円になる。
・定期縛りに関する表示は、カウントダウンのページに記載されているが、「お得」と強調された表示に比べて、非常に分かりにくくなっている。
・新たな契約に関する表示は契約完了時に画面上に表示されるのみであり、後から確認することが困難となっている。

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2021年度の審査概況
(公益社団法人 日本広告審査機構 2022年6月29日)
https://www.jaro.or.jp/news/20220707a.html
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2022年6月に施行された定期購入トラブル対策の特商法改正

2022年6月1日に施行された特定商取引法の改正では、定期購入契約での「お試し」や「トライアル」、「いつでも解約可能」などの強調表示での消費者を誤認させるような表示に関する禁止規定も盛り込まれました。
違反行為により消費者が誤認して申し込みをした場合には取消権が認められ、契約解除の妨害に当たる行為に対しては罰則付きの禁止となります。

・改正特商法対応急務、「最終確認画面」の義務表示事項と定期購入での禁止表示のポイント(2022年6月1日施行)

景品表示法規制でデジタルの表示の保存義務も検討中

しかし、新たな悪質手法では、契約に関する表示が契約完了時に画面上に表示されるのみであることから、後から確認することが困難で証拠が残りにくいことが、行政の調査や法執行のネックとなります。
このようなデジタル広告の問題点について、令和4年3月より消費者庁で開催中の景品表示法検討会においても、中長期的な検討課題として、デジタルの表示の保存義務などが議論されています。

景品表示法検討会(消費者庁)https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/meeting_materials/review_meeting_004/

また、消費者庁の令和5年度予算要求においても、デジタル表示担当として「上席景品・表示調査官」1名、デジタル広告不当表示の監視強化に8名の計9名を要求し、デジタル広告の不当表示への対応を強化する方針を示しています。
・消費者庁の令和5年度予算要求、デジタル広告の不当表示への対応強化。担当人員9名要求(令和5年度 消費者庁予算概算要求)

法規制による事業者負担が重くなる一方ですが、厳しい法執行によりなんとしても悪質事業者を市場から退場させてほしいと願います。

≪参考記事≫

・ネット通販「定期購入販売」関連相談、前年度比57.1%と大幅減少 (JADMA 2021年度消費者相談件数)

・JAROへの苦情、健康食品6割減。審査事案の3分の1がアフィリエイトサイト関連(日本広告審査機構 2021年度の審査概況)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。