医薬品ネット販売、濫用等のおそれがある医薬品の複数購入対応が店舗販売を大きく下回る(令和4年9月 医薬品販売制度実態把握調査)

平成26年6月12日に施行された改正薬事法により、第1類医薬品を含むすべての一般用医薬品のネット販売が解禁され、8年が経過しました。
厚生労働省では、毎年、医薬品の店舗販売とネット販売の販売ルールの順守状況について、一般消費者の立場から実際の医薬品販売の状況を調査しています。
一般消費者である調査員が店頭販売する全国3,022件の薬局・薬店(調査期間:令和3年11月〜令和4年2月)と、特定販売の届出を行い、ネット販売する517サイト(調査期間:令和3年11月〜令和3年12月)が対象。

調査では、ネット販売対応は多くの項目の遵守率は9割程度であったものの、例年遵守率が低い「濫用等のおそれがある医薬品を複数購入しようとしたときの対応が適切であった」の項目は、店舗での販売以上に他の項目より低い割合が継続しています。
本項目は、前回調査では大きく改善し、遵守率70%を上回りましたが、再びポイントを落としました。

ネット販売に関する調査内容を確認します。

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令和3年度医薬品販売制度実態把握調査結果
(令和4年9月16日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28008.html
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要指導医薬品、一般用医薬品の取扱い状況

第3類医薬品の「取扱あり」は 91.1%(471件)。
第2類医薬品(指定第2類医薬品は除く)の「取扱あり」は 91.1%(471件)。
指定第2類医薬品の「取扱あり」は78.5%(406件)。
第1類医薬品の「取扱あり」は 27.1%(140件)。
要指導医薬品の取扱いはなし、薬局製造販売用医薬品の「取扱あり」は 4.1%(21件)。

ウェブサイトへの記載状況

口コミや使用感など書込みの記載の状況:

購入者による医薬品に関するレビューや口コミは禁止されています。
(店舗に対する評価や口コミを除く。)
過去の医薬品購入履歴等に基づき、自動的に特定製品の購入の勧誘をすること(レコメンド)も禁止されています。

記載なし 95.7% (令和2年度:97.0%)/記載あり4.3% (令和2年度:3.0%)

前年度より「記載あり」の割合が1.3ポイント増加した。

一般用医薬品の情報提供状況

ネット販売ルールでは、専門家(薬剤師・登録販売者)が購入者の状況に応じた適切な情報提供を行うことが義務付けられています。(参考情報参照)

第1類医薬品を販売する際の対応状況:
(1)使用者の状態等の確認
購入希望者から、年齢、性別、症状等、適切な情報提供に必要な事項を確認する。
確認あり99.2%(118件)(令和2年度:98.0%(99件))
令和2年度より1.2ポイント上昇、店頭販売の94.4%(878件)を上回った。

(2)使用者の状態に応じた個別の情報提供
薬局、店舗にいる専門家から、使用者個々の状態に応じた情報提供(用法・用量、服用上の留意点等)を行う。(自動返信メールは情報提供に該当せず。)
情報提供あり91.6%(109件) (令和2年度:88.1%(89件))
令和2年度より3.5ポイント改善され、店頭販売の92.7%(862件)に近づく。

情報提供を行った者の資格は、薬剤師81.7%(89件)(令和2年度:76.4%(68件)/店頭販売:96.9%(835件))
登録販売者 1.8%(2件)(令和2年度:1.1%(1件)/店頭販売:0.1%(9件))
その他・わからなかった16.5% (18件)(令和2年度:22.5% (20件)/店頭販売:3%(26件))

前年度より「薬剤師」の割合が5.1ポイント増加し、「その他・わからなかった」の割合が6ポイント減少した。

(3)第1類医薬品販売時の相談対応
相談*に対し回答あり93.2%(109件)(令和2年度:96.0%(96件)/店頭販売:98.0%(911件))。
相談対応した者の資格は、薬剤師76.4%(84件)(令和2年度:72.9%(70件)/店頭販売:95.7%(890件))。
登録販売者 1.8%(2件)(令和2年度:1.0%(1件)/店頭販売:0.2%(2件))。
その他・わからなかった21.8%(24件)(令和2年度:26.0%(25件)/店頭販売:4.1%(38件))

相談への回答率は前年度より2.8ポイント低下したものの、「薬剤師」の対応率が3.5ポイント上昇、「対応者資格不明」は4.2ポイント低下した。
店頭販売の薬剤師または登録販売者の対応率が95.9%であるのに対して、ネット販売は78.2%17.7ポイント低く、対応者の資格管理が劣っている。

*「子供に飲ませても(使用しても)大丈夫か」、「この薬を飲むと眠くなるか」、「他の薬を飲んでいるが一緒に飲んでも大丈夫か」等を質問し、それに対応する注意事項(添付文書に記載されている事項)等が回答された場合を「適切な回答があった」とした。

第2類医薬品等を販売する際の対応状況:

第2類医薬品等を販売する際の対応状況:

(1)第2類医薬品販売時の相談対応
相談に対し回答あり 97.0(385件)(令和2年度:95.9%(378件)/店頭販売:97.3%(1484件))。
相談対応した者の資格は、薬剤師16.5%(64件)(令和2年度:17.2%(65件)/店頭販売:3.5%(53件))。
登録販売者24.4%(95件)(令和2年度:20.6%(78件)/店頭販売:88.9%(1356件))。
その他・わからなかった59.1%(230件) (令和2年度:62.2%(235件)/店頭販売:7.6%(116件))。

前年度より回答率は1.1ポイント向上。「薬剤師」の対応率は0.7ポイント低下、登録販売者の対応率は3.8ポイント上昇した。他方、「対応者資格不明」は3.1ポイント低下した。店頭販売の薬剤師または登録販売者の対応率が92.4%であるのに対して、ネット販売は40.9%と、51.5ポイント低く、対応者の資格管理が劣っている。

(2)指定第2類医薬品に関する注意喚起の状況
薬局等において、禁忌の確認や専門家への相談を促す掲示・表示を行うとともに、購入者にその内容が適切に伝わる取組を行う。
認識できた98.8%(257件)(令和2年度:95.8%(248件)/店頭販売:86.7%(1322件))。

前年度から対応率は3ポイント向上。店頭販売も12ポイント以上、上回っている。

(3)濫用等のおそれのある医薬品を複数購入しようとした時の対応
1つしか購入できなかった 63.9%(62件)(令和2年度:66.4%(73件)/店頭販売:67.1%(821件))。
複数必要な理由を伝えたところ、購入できた 3.1%(3件)(令和2年度:6.4%(7件)/店頭販売:14.9%(182件))。
質問等されずに購入できた 33.0%(32件)(令和2年度:27.3%(30件)/店頭販売:18.1%(221件))。

濫用等のおそれのある医薬品を複数個購入する旨を伝えた際の適切な対応は、前年度は大幅に改善したものの、今年度は5.8ポイント低下し、店舗販売よりも15ポイントも劣る遵守状況となった。

今後、医薬品ネット販売における販売時の相談対応者の資格と「濫用等のおそれがある医薬品を複数購入しようとしたときの対応」について、更なる管理の徹底が求められます。
《参考情報》
医薬品の販売制度(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000082514.html
【薬局・薬店向け】一般用医薬品の特定販売(インターネット販売)について
(東京都福祉保健局)
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/anzen/iyaku/ippan_kusuri/ippan_seido.html

出典:「一般用医薬品のインターネット販売について」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/ippanyou/pdf/140226-1-3.pdf
(平成26年4月厚生労働省 医薬食品局 総務課)

≪関連記事≫
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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。