アフィリエイト広告の管理指針具体化へ 令和3年度の消費者庁の広告表示適正化への取組(消費者庁 2022年5月公表)

前回の記事では、消費者庁の「景品表示法の運用状況及び消費者取引の適正化への取組」(※1)より、令和3年度の景表法違反状況を取り上げました。

・令和3年度景表法違反、国及び都道府県の措置命令件数は45件。「保健衛生品」が12件(消費者庁 2022年5月公表)

今回は、令和3年度の消費者庁の表示適正化への具体的な取組について報告します。
自社のコンプライアンス対策に、チェックしてみてください。

●健康食品に対する景品表示法と健康増進法との一体的な執行
●新型コロナウイルスへの予防効果等を標ぼうする不当表示等への対応
●事業者が講ずべき管理上の措置の執行 「指導及び助言」が102件
●「アフィリエイト広告等に関する検討会」の開催
●公正競争規約の変更(ドレッシング類、ハム・ソーセージ、発酵乳・乳酸菌飲料、食肉、チョコレー
類、豆乳類、食酢、不動産、ビール)
●都道府県との連携、協力関係強化

健康食品に対する景品表示法と健康増進法との一体的な執行

虚偽・誇大広告等に対しては、景品表示法及び健康増進法に基づく法執行が消費者庁の表示対策課食品表示対策室及びヘルスケア表示指導室において行われた。

  • 平成28年6月30日に全面改訂を行った「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」の周知に引き続き注力。
  • 令和3年度に、インターネット上で特定保健用食品及び機能性表示食品の虚偽・誇大広告の監視を行い、健康増進法第65条第1項(誇大広告の禁止)の規定に違反するおそれのある736事業者に対して、表示の改善を要請した。
  • 令和3年度は、健康食品に対して景品表示法措置命令2件(前年度2件)のほか、健康増進法第65条第1項項(誇大表示の禁止)に違反するおそれがある事案について20件(前年度17件)の指導を行った。

●健康⾷品に関する景品表⽰法及び健康増進法上の留意事項について(要約版)
(パンフレット:消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/160630premiums_9.pdf

●健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について
(全部改定 平成 28 年6月30日 消費者庁)https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/160630premiums_8.pdf

新型コロナウイルスへの予防効果等を標ぼうする不当表示等への対応

インターネット広告の緊急監視の実施
インターネット広告において、景品表示法及び健康増進法の観点から緊急監視を行い、新型コロナウイルスへの予防効果を標ぼうする健康食品、首掛け型空間除菌剤(二酸化塩素)、抗ウイルス処理カーテン、マイナスイオン発生器について改善要請を実施するとともに、消費者に対する注意喚起を行った。

・3度目の緊急事態宣言下、消費者庁の新型コロナウイルス予防健康食品緊急監視(第5弾)、43事業者49商品の表示に改善要請 (消費者庁  2021年4月~6月)

・消費者庁の新型コロナウイルス予防商品緊急監視(第6弾)。健食の「ウイルス予防効果」を認めない根拠は? (消費者庁  2021年12月~2022年2月)

消毒、除菌効果等の表示についての法執行
また、消毒、除菌等に対する消費者の関心が依然として高い中、空間除菌用品、マイナスイオン発生器等の表示について措置命令を行い、令和3年度における措置命令 41 件のうち 11 件が消毒、除菌等の効果等についてのものであった。
令和3年10月に、厚生労働省と合同で、新型コロナウイルスの抗原定性検査キットの購入における注意点を取りまとめ、消費者へ注意喚起を行った。

・新型コロナウイルスの抗原定性検査キットは「体外診断用医薬品」を選んでください!
(消費者庁 2021年10月13日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/025912/

事業者が講ずべき管理上の措置の執行 「指導及び助言」が102件

不当表示等の発生を防止するために、事業者が講ずべき必要な体制の整備その他の必要な措置について、消費者庁は必要な指導及び助言、勧告をすることができる(景品表示法第27条、第28条第1項)。
勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。(第28条第2項)
令和3年度は「指導及び助言」が102件となった。(前年度109件)

指導が行われた事例:

  • 原産国表示について自社ウェブサイトにおいて実際と異なる表示をしていたところ、当該表示の根拠となる情報を確認していなかった
  • 優良誤認表示について景品表示法の考え方の周知啓発・法令遵守の方針等の明確化・表示等を管理するための担当者等を定めず、自社ウェブサイトにおいて当該商品の効果について、表示の根拠となる情報を確認していなかった
  • 優良誤認表示について不当な表示等が明らかになった場合に迅速かつ適切な対応を行っておらず、アフィリエイトサイトにおいて当該商品の効果について、表示の根拠となる情報を確認していなかった
  • 景品事件について景品表示法の考え方の周知啓発・法令遵守の方針等の明確化・景品類の提供等を管理するための担当者等を定めること・不当な景品類の提供等が明らかになった場合に迅速かつ適切な対応を行っておらず、違法とならない景品類の価額の最高額・総額・種類・提供の方法等を確認していなかった

「アフィリエイト広告等に関する検討会」の開催

消費者庁では、令和3年1月からアフィリエイト広告等について実態調査を行い、アフィリエイト広告において不当表示が生じない健全な広告の実施に向けた対応方策を検討するため、「アフィリエイト広告等に関する検討会」を開催し、景品表示法の適用等に関する考え方等について、令和4年2月に同検討会の報告書を公表した。
報告書では、アフィリエイト広告の表示内容について、以下の提言がなされた。

  • 「表示内容の決定に関与した事業者」とされる広告主が責任を負うべき主体であることを周知徹底していくこと
  • 悪質な事業者に対しては、景品表示法とともに、特定商取引に関する法律等の適用を含めた厳正な法執行が重要であること
  • 不当表示の未然防止策として、事業者が講ずべき表示の管理上の措置(景品表示法第26条)に関する指針を、アフィリエイト広告の広告主が講ずべき措置を具体化するために改正すること

《参考記事》
・広告主に義務付けられるアフィリエイト広告の適正管理の措置とは。ステマ規制も強化の方向 (アフィリエイト広告等に関する検討会 報告書 2022年2月15日)

公正競争規約の変更

食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)の一部を改正し、全ての加工食品に原料原産地表示を義務付ける内閣府令(平成29年内閣府令第43号。以下「原料原産地府令」という。)が施行されたことに伴う一部変更が行われた。

ドレッシング類の表示に関する公正競争規約
(施行日:令和3年6月4日)
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/dressing.pdf

ハム・ソーセージ類の表示に関する公正競争規約及び施行規則
(施行日:令和3年6月29日)
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/ham_sausage.pdf

発酵乳・乳酸菌飲料の表示に関する公正競争規約及び施行規則
(施行日:令和3年6月10日)
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/nyusankin.pdf

食肉の表示に関する公正競争規約及び施行規則
(施行日:令和3年7月7日)
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/meat.pdf

チョコレート類の表示に関する公正競争規約及び施行規則
(施行日:令和3年12月10日)
1.食品表示基準の一部改正に伴い、従来の各種基準を引用する規約について、食品表示基準の条文等に対応させるために所要の変更を行った。
2.原料原産地府令が施行されたことに伴う一部変更を行った。
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/chocolate.pdf

豆乳類の表示に関する公正競争規約及び施行規則
(施行日:令和3年12月22日)
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/soy_milk.pdf

食酢の表示に関する公正競争規約及び施行規則
(施行日:令和4年2月1日)
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/vinegar.pdf

ビールの表示に関する公正競争規約及び施行規則
(施行日:令和4年4月15日)
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/beer.pdf

不動産の表示に関する公正競争規約及び施行規則
(施行日:令和4年3月23日)
1. 自由設計型マンション企画の参加者募集広告を行う場合の要件の変更
2. 予告広告を行う場合に必須の本広告に係る表示媒体の変更
3.物件の種別の追加、必要表示事項の追加、物件の内容・取引条件等に係る表示基準の見直し、物件の名称の使用基準の変更
4.過去の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示を行う場合の要件の変更
5. その他、用語の変更、追加及び整理、文意の補足、規定の順序の変更、施行規則から規約への規定の移動等
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/real_estate.pdf

都道府県との連携、協力関係強化

・都道府県における景品表示法の執行力の強化に向けて、公正取引委員会事務総局地方事務所・支所等と協力して北海道・東北地区、関東甲信越地区、中部地区、近畿地区、中国地区、四国地区、九州・沖縄地区のブロックの都道府県との連絡会議を開催し、景品表示法担当職員向けに研修を実施。
(令和3年度においてはコロナ禍を踏まえ、第1回目は書面開催、第2回目はブロックごとのオンラインで開催)

・都道府県職員対象の執行研修や、公正取引委員会事務総局地方事務所・支所等と共に、都道府県が行う景品表示法の運用に関して助言を行う。

・消費者庁は、平成24年4月1日から景品表示法に関する調査情報等を共有するネットワーク(景品表示法執行NETシステム)の運用を開始し(※2)、公正取引委員会事務総局地方事務所・支所等及び都道府県等との情報共有の緊密化、協力関係強化を図っている。

《参考記事》
・都道府県等への措置命令権限付与から7年。景表法執行に向けた運用課題と今後の取り組み

(※1)
令和3年度における景品表示法の運用状況及び表示等の適正化への取組https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_220526_01.pdf

(※2)
・消費者庁『景品表示法執行NETシステム』運用開始!景品表示法執行が迅速化?

令和3年度の消費者庁の表示適正化への取り組みでは、令和2年度に引き続き、「新型コロナウイルスへの予防効果等を標ぼうする不当表示等への対応」に注力されています。
アフィリエイト広告については、「アフィリエイト広告等に関する検討会報告書」において提言された広告主が講ずべき措置管理上の措置指針改正とインターネット留意事項改定が進められています。

事業者の皆さんには、一層の広告管理体制への取り組みが求められます。
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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。