大木製薬とCLO2 Lab「空間除菌製品」の景表法措置命令にみる、除菌効果表示根拠の合理性とは

新型コロナウイルスに対する予防効果を謳った「空間除菌製品」に関して、複数の景品表示法の措置命令が出されています。

いずれの事案においても、不実証広告規制(※)を用いた処分となっており、表示の裏付けとなる「合理的な根拠」が認められずに優良誤認と認定されています。
具体的には、空間除菌効果において、主に、「実使用空間と条件の異なる試験空間で行われた除菌やウイルス不活化などの試験結果」を根拠としているケースが多くみられます。
12月17日には、大木製薬(株)と(株)CLO2 Labに対して、二酸化塩素(ClO2)の作用により『部屋に置いたり首にかけたりするだけで「空間除菌できる」』とうたった商品について、措置命令が出されています。

不当表示の判断基準となる効能効果表示の根拠データは、広告で訴求する内容に適切に対応した、「室内空間における商品使用による空間除菌効果を測る試験設計」となっているかがポイントとなります。

今回は、大木製薬とCLO2 Labが消費者庁に提出した根拠資料の内容(公表、報道されている範囲内で)と、消費者庁の見解について確認してみます。

———-
二酸化塩素による空間除菌を標ぼうする商品の製造販売業者2社に対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2021年12月17日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/027004/
———

(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。

⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。

●大木製薬の表示と提出された根拠資料に対する評価
(ストラップ)
表示内容(例)
「空間除菌」、商品を首から下げている人物の画像、「二酸化塩素のパワーでウイルス除去・除菌 ※1」
打消し表示例:
「※1 1㎥のエリアの密閉空間におけるウイルス試験において、99%の除去効率が証明されています。」

(電動拡散ファン)
表示内容(例)
「空間除菌※[25㎥(6畳相当)密閉試験空間]」「二酸化塩素のパワーで ウイルス除去・除菌と消臭※」「電動ファンが安定拡散を実現」と題して、「『空気より重い二酸化塩素をいかにして安定拡散させるか?』たどり着いた結論が電動ファンによる拡散です。電動ファンは間欠作動設定です。約5秒間ファンが作動し、その後約30秒間の停止を繰り返します。」「●用途:室内」「特長」、「●内容成分と空気中の炭酸ガスが反応して二酸化塩素が発生します。」「●発生した二酸化塩素は酸化力で浮遊する菌やウイルスを除去します。」
打消し表示(例):
「※当社試験にて、人のいない密閉空間で二酸化塩素により特定の『浮遊ウイルス・浮遊菌』の除去試験を実施。」「●当社試験にて25㎥(6畳相当)の密閉空間で二酸化塩素により特定の『浮遊ウイルス・浮遊菌』の除去試験を実施しております。」「●屋内専用です。屋外や空気の流れが激しい場所では、効果が期待できません。」「●利用環境により、成分の広がり、使用期間は異なります。また、全てのウイルス・菌に対して効果があるわけではありません。」

消費者庁記者会見報道:
ストラップについては、1㎥内の密閉した容器内で、シャーレの上に乗ったウィルスが死んだという実験データを提出されたに過ぎず、空間除菌と関係がないので、根拠として用いることは難しい。
ファンタイプの浮遊菌の試験については、大木製薬は試験の開始前夜から10数時間、6畳間の密閉空間の中で電動ファンを回し続け、その後に浮遊菌を空中に散布。それで菌が死んだかどうかを検査している。生活している中ではそんなことはなかなか起きない。実証環境との関連性はなかなかない。

●CLO2 Labの表示と提出された根拠資料に対する評価
(置き型)
表示内容(例)
「ウイルス数(個)」、「設置前」、「設置後(15分後)」及び「ウィルス除去率 99.99%以上」 と記載のあるグラフ並びに「菌・ウイルスを99.99%除去 オキサイダー設置15分後、99.99%の菌・ウイルスの減少が確認されました。」 「リビング以外にも様々な場所にお使いいただけます! おすすめの使用場所」との記載と共に、「玄関」、「寝室」、「トイレ」「その他の置き場所 居室・事務所・喫煙室・浴室・客室・病室・ 介護施設・教室 など」
打消し表示例:
「外部試験機関において、室内に設置したオキサイダー置き型によって、プレート上の菌・ウイルス・カビを15分で99.99%除去できることを確認。 全ての菌・ウイルス・カビ・臭気に対する効果ではありません。 使用空間の環境状態により、効果は異なります。」

(携帯用)
表示内容(例)
「外出先で、あなただけの衛生空間を。外出時の室内空間で、身近な菌やウイルスを除去。」
打消し表示(例)
「(※)外部の検査機関で、放散二酸化塩素による複数のウィルス・菌・カビ・悪臭の除去効果を確認。全ての菌・ウイルス・カビ・臭気に対する効果ではありません。使用空間の環境状態により、効果は異なります。」

消費者庁記者会見報道:
CLO2 Lab『オキサイダー』の置き型、スプレー、携帯型でもウイルス試験が行われているが、こちらも10リットル(2リットル入りペットボトル5本程度)の密閉空間において、シャーレの上に塗ったインフルエンザウィルスが死んだという報告。また携帯用では、使用すれば上の方に二酸化塩素が上がってくるという報告だが、資料では菌を死滅させるための二酸化塩素が一定程度の濃度に高まることが「空気がある空間」、「歩行状態」などで実証できていなかった。

次ページでは、消費者庁の空間除菌製品の除菌効果表示に対する不当表示判断理由について確認します。

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。