「除菌関連商品」広告で気を付けたい効能効果表示。そのエビデンスは大丈夫ですか?(日本広告審査機構 2020年11月11日)

先日の記事でお伝えした、JAROへの新型コロナウイルス関連広告への苦情において、相談件数が今年1月~7月の累計でトップの商品は「除菌関連商品」となっていました。

「除菌関連商品」の広告においては、特に除菌の効能効果に関する表示・表現に注意が必要です。
商品の効果を謳う場合には、薬機法で認められる効果の範囲であることはもとより、景品表示法の不実証広告規制(※)における、表示の裏付けとなる「合理的な根拠」が求められます。
除菌効果についてのエビデンスを持っていると主張しても、表示の裏付けとなる「合理的な根拠」として認められず措置命令を受けたケースは多数あります。

JAROが取り上げた「除菌スプレー」広告への相談事例を参照しながら、表示の裏付けとなる「合理的な根拠」の考え方を確認します。

(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。


【除菌スプレーを吹きかけるだけで「菌を99%除去」とうたえるの?】
相談内容:

除菌スプレーのテレビCM中で女性が「ウイルスにかからないか心配」などと言っていて、さも商品にウイルス除去効果があるように謳っている。ホームページを見たところ、この商品には銀やシリカが配合されているようだが、本当にウイルス除去効果があるのか疑問。さらにCM中で紹介している使用方法は1スプレー分を物に吹きかけるだけで、拭きとったり浸したりはしていない。そのような方法で本当にウイルス除去の効果があるとは思えない。今の時期、皆が新型コロナウイルスに感染することを心配していると思うので、問題ではないか。

商品販売会社A社への照会内容:
・商品は雑貨であり、医薬品・医薬部外品ではない。
・そのため、特定ウイルスに効果がある、殺菌や消毒とはCM中では言っていない。
・除菌や抗菌についてはCM内で言っているが、エビデンスも持っており、根拠のない表現ではない。

JAROの見解:
・薬機法では、身の回り品の除菌・抗菌については、医薬品等ではなく雑貨であっても広告可能。
・効果の根拠資料が、CMで推奨された使用方法で、物への99%以上の菌を除去する根拠となり得ない場合には、優良誤認として景品表示法に抵触するおそれあり。

《表示と試験方法》
CMでは「一吹きするだけで雑菌を99%除去」とアナウンスし、さらに画面に「99%以上除去!」と大きく文字を表示していた。
しかしエビデンスでは「試料をそれぞれ滅菌シャーレに入れたペーパーDiskに10プッシュ添加した」とあり、この試験はシャーレの中で当該商品に菌を浸した状態で行われたものだった。
CMで紹介されている「エレベーター、トイレ、マスク、買い物かご、つり革」などにワンプッシュする、という使用方法で行われた試験ではなかった。

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広告トピック
除菌スプレーを吹きかけるだけで「菌を99%除去」とうたえるの?
(公益社団法人 日本広告審査機構 2020年11月11日掲載)
https://www.jaro.or.jp/shiryou/topic/keshou_iyaku_biyou/099.html
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●不実証広告規制による、表示の裏付けとなる「合理的な根拠」と認められるには
不実証広告規制で求められる根拠資料が、表示の裏付けとなる合理的な根拠であると認められるためには,次の2つの要件を満たす必要があります。
(1)提出資料が客観的に実証された内容のものであること。
(2)表示された効果、性能と、提出資料によって実証された内容が適切に対応していること。

JAROの相談事例でも、エビデンスとして(1)の要件は満たしていたかもしれませんが、(2)を満たしていないと言えるでしょう。
商品の性能や効果に関する表現は、その根拠となる実証データと照らし合わせて、内容が適切に対応しているか、どこまでの内容が訴求可能であるかを見極める必要があります。

今年8月に消費者庁が東亜産業に対し、首掛け空間除菌剤の表示に景表法措置命令を行いましたが、不実証広告規制を用いた処分となっています。
この事案でも東亜産業から根拠資料は提出されましたが、表示の裏付けとなる「合理的な根拠」とは認められませんでした。
「二酸化塩素配合の除去・除菌成分が周囲に浮遊するウイルスや菌を除去します。」「幅広く・様々な環境に最適! 学校 オフィス 病院 電車」「●有効範囲の目安として、装着周囲約1m」といった表示による効果、性能と、提出資料によって実証された内容(狭い密閉空間での試験結果)が適切に対応しているとは認められませんでした。

・通販事業者 東亜産業、首掛け空間除菌剤の表示に景表法措置命令。新型コロナウイルス関連商品に注意(消費者庁 2020年8月28日)

性能に関する表示への不実証広告規制による類似の事案では、過去に以下のものがあります。

2012年11月:シャープ「プラズマクラスターイオン技術を搭載した電気掃除機」

2014年3月:大幸薬品や大木製薬など17社の「二酸化塩素を使った空間除菌剤」

2014年5月:エム・エイチ・シー「車載用マイナスイオン発生器」

2015年2月:空間用虫よけ剤4社に景表法措置命令

2019年5月:通販事業者BLI「害虫駆除用品」

今後も、新型コロナウィルス関連広告に対する法執行は続くことが予想されます。
しっかりと、効能効果の根拠資料について理解し準備しましょう。
フィデスがサポートいたします。

《参考記事》
・景品表示法上の表示の裏付けとなる「合理的な根拠」。効能効果の適切な実証方法

・気になる消費者庁のネット広告監視動向と処分。新型コロナウイルス予防関連商品は注意!

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。