JAROへの苦情、通販定期購入契約の苦情は減少せず。ネット広告への苦情二桁増続く (日本広告審査機構 2018年度の審査概況)

JARO(公益社団法人 日本広告審査機構)が、2018年度に消費者から受け付けた苦情や問い合わせに基づく審査概況を6月19日に公表しています。
業種別では、健康食品や通信販売、広告の媒体別では「インターネット」広告に対する苦情が上位を占める傾向が続いています。

内容を確認してみましょう。

●2018年度の「苦情」件数は11.1%増
総受付件数は1万1051件(前年度1万300件)で、前年度比107.3%となった。
相談のうち「苦情」は8386件(前年度7547件)で、前年度比111.1%となった。

「苦情」を業種別にみてみると、上位は以下の通り。
1位「デジタルコンテンツ等」668件(前年度734件)で、前年度比91.0%。
2位「健康食品」520件(前年度384件)で、前年度比135.4%。
3位「携帯電話サービス」428件(前年度403件)で、前年度比106.2%。
4位「通信販売業」343件(前年度238件)で、前年度比144.1%。

●特定商取引法規制強化後も、定期購入契約の苦情は減少せず
2位の「健康食品」と4位の「通信販売業」は、どちらも大きく増加。
「健康食品」の販売形態は通信販売がほとんどであり、定期購入契約の事例が見られる。
「通信販売業」では、定期購入契約について98件寄せられた。
2017年6月の特定商取引法施行規則の改正において、通販での定期購入契約を行う際の広告に、販売条件の明記が義務付けられ、消費者トラブルの減少が期待されたが、、2017年度95件3件増加となった。

1位の「デジタルコンテンツ等」は、前年度のスマートフォンアプリのテレビCMなどへの苦情が落ち着き減少となったが、引き続きオンラインゲーム、電子コミックや映像の配信サービスなどに意見が寄せられている。
その他、大きく件数が伸びたのは「その他住居関連機器」と「医療機器類似品」で、前者はリコールの告知であるかのような表現が不謹慎であるとの意見が寄せられ、後者は大声で威嚇したり、女性が商品の上に座るシーンが不快であるとの意見が寄せられた。

●「インターネット」広告の苦情は 2 桁増が続く
「苦情」を媒体別にみてみると、上位は以下の通り。
1位「テレビ」4,396件(前年度3,886件)で、前年度比113.1%。
2位「インターネット」2,847件(前年度2,451件)で、前年度比116.2%。
3位「ラジオ」308件(前年度404件)で、前年度比762%。
順位は 2013 年から変動なし。「インターネット」は近年、2 桁増が続いている。
「テレビ」の上位は「携帯電話サービス」331 件、「その他住居関連機器」275 件、「デジタルコンテンツ等」245 件など。
「インターネット」は「デジタルコンテンツ等」422 件、「健康食品」288 件、「通信販売業」172 件など。
「ラジオ」は「行政・団体」44 件、「相談業務」40 件、「買取・売買」39 件など。

●「苦情」内容の46%が広告・表示規制上の問題
「苦情」を内容別にみてみると、構成比は以下の通り。
「広告表現」3,945件(構成比47.0%)。
「広告・表示規制上の問題」3,876件(構成比46.2%)。
 内訳:
 「価格・取引条件等」1,509件(構成比18.0%)
 「品質・規格等」920件(構成比11.0%)
 「その他」1,447件(構成比17.3%)
「広告の手法」557件(構成比6.6%)。

「広告・表示規制上の問題」は、広告・表示が事実と異なる、誤認を招くといった広告規制上問題があると訴える苦情。
業種別件数では「健康食品」325件、「通信販売業」264件、「デジタルコンテンツ等」239 件、「携帯電話サービス」172 件、「外食」119 件、「化粧品」118 件、「専門店」112 件、「人事募集」96 件、「買取・売買」92 件の順。
媒体別では、「インターネット」2,042 件、「テレビ」958 件、「チラシ」177 件、「折込」159 件、「店頭」156 件、「新聞」128 件、「ラジオ」113 件となった。
広告規制に違反するおそれのあるものも含まれ、インターネット媒体が 52.7%を占める。

「広告表現」は、広告の描き方が「セクハラである」「暴力的である」「子どもに悪影響がある」などといった意見。
業種別件数では、「デジタルコンテンツ等」333 件、「その他住居関連機器」259 件、「携帯電話サービス」221 件、「健康食品」174 件、「医療機器類似品」168 件、「自動車」165 件の順。
媒体別では、「テレビ」3,134 件、「インターネット」604 件、「ラジオ」158 件、「新聞」49 件、「交通」38 件となった。
広告表現における苦情では「テレビ」が 79.4%を占める。

「広告の手法」は、 CM の音の大きさ、広告の頻度、ステマ、迷惑な広告掲載方法など。
対象媒体は「テレビ」300件、「インターネット」201件が9割近くを占めている。「テレビ」については音量や頻度がほとんど。
「インターネット」については、迷惑な広告掲載方法が 35 件。「画面いっぱいに広告が広がって記事が読めない」「広告が動き回るので誤タップする」「閉じるボタンを押すと販売サイトに飛ばされる」「突然動画広告が再生される」など、記事やコンテンツが見られないなど強い不快感を訴える苦情が目立った。
その他、ターゲティング広告やリターゲティング広告に関するもの26件、オプトアウト・フィルタリングに関するもの19件。

●「見解」26件を発信、1位「健康食品」、2位「化粧品」
業務委員会で審議し「見解」を発信したのは26件。
内訳は警告21件、要望3件、提言2件(前年度はそれぞれ28件、2件、2件の計32件)。
対象業種は「健康食品」8 件、「化粧品」6 件、「通信販売業」4 件、「医薬部外品」「雑貨」各 2 件、「衣料品」「インターネット回線取次サービス」「社会保険労務士事務所」「カー用品店」各1件。
1位「健康食品」、2位「化粧品」の順は2013年度から変わらず、常に上位を占めている(2012 年度は化粧品が 1 位)。
対象媒体は「インターネット」14件、「テレビ」7件、「ラジオ」「店頭」各2件、「新聞」「チラシ」「折込」「フリーペーパー」各1件(1件の見解で複数の媒体が関わる事例がある)。
1位「インターネット」は2011年度から続いている。

具体的な警告内容は以下の通り。

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2018年度の審査概況
(公益社団法人 日本広告審査機構 2019年6月19日)
https://www.jaro.or.jp/news/ghuq7e0000000hxa-att/20190619ReleaseG.pdf
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《関連記事》
・ネット上の健康食品の成分に関する記事体広告、薬機法に抵触する境目は?

・メール広告からしかたどり着けない中間ランディングページ、不適切表示隠しの巧妙な手法

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。