先日の記事では、11月に入って最初の景表法措置命令(優良誤認)となった健康食品「ブロリコ」事案を取り上げました。
ブロリコ事案では、「成分」による免疫力向上、疾病の治療又は予防の効果をうたった「ブロリコ研究所」と称する自社ウェブサイト、冊子、チラシと、最終商品とを結び付かせる手法について、一体となる広告とみなされ処分となっています。
今回の事案が健康食品の広告手法に与える影響について、考えてみました。
健康食品業界では、「〇〇研究所(〇〇は成分・素材名)」と称する団体が、健康食品に使用する成分・素材の効能効果(主に医薬品的な)についての研究内容などの情報を発信するケースをよく目にします。
一見したところ、学術団体であるかのように見えますが、バックには特定の健康食品企業の運営が垣間見え、成分・素材の効能効果を周知するための普及啓発活動を匂わせています。
このようなケースでは、大抵、社名や商品名は表示されておらず、そこでのコンテンツが薬機法や景表法の規制対象となる「広告」や「表示」とみなされないように対策が施されているのが一般的です。
「〇〇研究所」を利用した広告事例で大きなインパクトを与えたのは、2017年1月に最高裁判決となった適格消費者団体「京都消費者契約ネットワーク」による「サン・クロレラ販売訴訟」です。
「サン・クロレラ販売訴訟」とは、商品名の記載のない健康食品原料に、医薬品のような効果があるとする新聞折込チラシの広告手法について争われてきた事案です。
一審の京都地裁は、クロレラ研究会とサン・クロレラ販売が一体的なものと判断し、新聞折込チラシにたとえ商品名の記載が無くとも、販売と広告の主体が実質的に同一であり、特定の商品の販売促進のシステムが出来上がっているとして、優良誤認表示による広告であることを認めました。
最高裁までもつれた結果、訴訟の差し止め請求そのものは棄却されたものの、不特定多数の消費者に向けた広告も、消費者契約法の取消対象となる「勧誘」に該当するという判断が示されました。
※最高裁判決では、サン・クロレラ販売が現在問題のあるチラシを配布しておらず、一切配布しないと明言していることから、差し止め請求の対象としているチラシ配布行為を「現に行い又は行うおそれがある」(消費者契約法12条1項及び2項)ということはできないため、請求は棄却された。
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健康食品関連ー申し入れ・差止請求 サン・クロレラ販売株式会社
(適格消費者団体 NPO法人京都消費者契約ネットワーク)
http://kccn.jp/mousiir-kenkoushokuhin.html#mousiir-laver-sankurorera
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今回のブロリコ事案は、適格消費者団体からの差し止め訴訟ではなく、国が景表法の観点から違法認定しました。
大手企業においても利用されている、健康食品の成分の研究コンテンツにより効能効果を啓発する広告手法が、見直される契機となりそうです。
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