適格消費者団体、「しじみ習慣」に5回の表示改善申入れ。2年半で協議終了(消費者支援機構関西 2017年10月24日要請活動終了)

適格消費者団体による、通販の健康食品の機能性、効能効果に関する表示に対する削除申入れ事案です。
「特定非営利活動法人 消費者支援機構関西(=KC’s)」は、佐々木食品工業(株)が通販で販売する健康食品「しじみ習慣」に関する同社のウェブサイト、その他媒体の表示について、2015年9月より5回にわたり申入れ・要請活動を行ってきました。
佐々木食品工業と協議を続けた後、改善が行われたとして、2017年10月24日、同社に対し申入れ要請活動を終了しました。
(消費者庁においても、1月26日、消費者契約法第39条第1項に基づき内容が公表されています。)
表示の改善を求めた経緯と内容は、以下の通りです。

<交渉経過>
・2015年9月30日付で当団体より健康食品「しじみ習慣」のWeb上の表記に関し「お問い合わせ」を送付
・2015年10月27日付で同社から回答を受領
・2015年12月16日付で同社に対し「申入れ、要請及び再お問い合わせ」を送付
・2016年1月16日付で同社から回答を受領
・2016年3月24日付で同社に対し「再申入れ兼再要請」を送付
・2016年4月20日付で同社から回答を受領
・2017年1月24日付で同社に対し「再々申入れ」を送付
・2017年2月22日付で同社から回答を受領
・2017年8月25日付で同社に対し「要請書」を送付
・2017年9月13日付で同社から回答を受領

申入れ:消費者契約法第12条に規定される適格消費者団体としての差止請求権に基づくもの。
要請:消費者契約法第12条に基づくものではなく、消費者団体としての任意の要請。

以下、内容を確認します。


・2015年9月30日付でKC’sより健康食品「しじみ習慣」のWeb上の表記に関し「お問い合わせ」を送付

・2015年10月27日付で同社から回答を受領

・2015年12月16日付で同社に対し「申し入れ、要請および再お問い合わせ」を送付
【申入れの趣旨】
「休肝日の代わりにしじみ習慣」、「休肝日?私はしじみ習慣」等の表記は、「しじみ習慣」を摂取することが休肝日を設けることと同じような機能又は効能若しくは効果を持つことを意味する表示である。
しかし、しじみエキスを摂取することが休肝日と同じ効果を持つとは到底考えられず、機能性表示食品でも特定保健用食品でも医薬品でもない加工食品である「しじみ習慣」について当該機能又は効能若しくは効果を表示することは、景品表示法の優良誤認表示に該当するため、当該表記の停止を求める。

【要請の趣旨】
(1)アフィリエイト広告について、薬機法、景品表示法、特定商取引法上の適切な対策を講じる。
(2)自社サイト以外で、同社または同社の関係者が同社製品の広告のためのサイトを設置するときは、それが、同社あるいは同社の関係者が設置した広告サイトであることを明示する。

・2016年1月16日付で同社から回答を受領
【申入れに対する回答の趣旨】
「しじみ習慣」が休肝日の代わりとなるということは意図していないが、消費者誤認する可能性がある。
同社が設置したウェブサイト等において、「しじみ習慣」が休肝日の代わりになるような表記は今後行わず、過去の広告バナーやランディングページにある同様の表記についても削除する旨を回答。

【要請に対する回答の趣旨】
(1)検索を行い、アフィリエイト広告が法令に遵守しているか確認し、遵守されていない場合は、発注先へ協力を要請する。
(2)弊社又は、弊社関係者が設置したサイトの場合はその旨を広告代理店等へ要請していく。

・2016年3月24日付で同社に対し「再申入れ兼再要請」を送付
【再申入れの趣旨】
「ギュッと凝縮した」、「超凝縮」、「濃いエキスをぎゅっと濃縮」等の過度に濃縮したかのような表記は、「しじみ習慣」の一粒当たりのしじみ含有量を明らかにしていないことから、一方的にしじみが多く含有されているかのように表示することであって、景品表示法の優良誤認表示に該当するため、当該表記の停止を求める。

【再要請の趣旨】
同社が提供する「しじみ習慣」一粒当たりに、しじみ何グラム分、あるいは何個分のエキスが入っているのか、webサイトなどで表記するよう求める。
上記は同商品を購入する上で、消費者にとって必要不可欠な情報である。およそ自然の産物である以上、季節や個体差によるばらつきはある程度仕方ないが、例えば牛乳の乳脂肪分の表記で、「○.○%以上」と最低値の数値が書かれているように、正確で分かりやすい情報提供の工夫を求める。

・2016年4月20日付で同社から回答を受領
【再申入れへの回答の趣旨】
「超濃縮」という表現は、基本的に優良誤認を与えるものではないと考えるが、可能性が完全に排除できるものではないと判断し、「超」という表記については、今後、使用を差し控え、各種媒体に関しては、順次変更していく旨を回答。

【再要請への回答の趣旨】
「しじみ習慣」一粒当たりに、何グラム分、あるいは何個分のエキスが入っているのかを消費者に情報提供することは不必要だと考える。
理由:
・食品表示法等の関連法規に表示義務はない。
・シジミ貝の大きさやエキスの収率には季節や個体差、抽出方法による変動があるため、固定した量を明記することで優良誤認となる可能性あり。

しかし、お客様に、より丁寧な説明をする趣旨で、同社webサイトにおいて「しじみ習慣」のしじみ含有に関する表記をしていく。

・2017年1月24日付で同社に対し「再々申入れ」を送付
【再々申入れの趣旨】
同社のweb上では、1月24日時点で以下のような、同社の商品を摂取した人に対して何らかの健康上の効能効果があると受け止められ、一般消費者の誤認を招くと考えられる表示がされており、依然として改善されていない。

【例】「お酒好きの健康に、毎日の元気の源に」、「こんな方におすすめです! 宴席を楽しみたい、身体への負担が気になる、夜、何度も起きる、朝シャキッとしたい」、「飲んだ翌朝シャキッ!元気に1日を過ごせる」、「お酒を飲む人にうれしい働き」etc・・・

「しじみ習慣」に、飲酒をしても身体への負担が軽減される効果がある、二日酔いの症状が軽減される効果がある、良質の睡眠がとれるようになる等の特定の保健の目的が期待できる(健康の維持及び増進に役立つ)機能があることを意味する表示であって、科学的に十分な根拠がないにもかかわらずこのような表示をすることは、景品表示法の優良誤認表示に該当するため、当該表記の停止を求める。

・2017年2月22日付で同社から回答を受領
【再々申入れへの回答の趣旨】
指摘された表記については、優良誤認を与えるものではないと考えているが、いくつか変更している旨を回答。

・2017年8月25日付で同社に対し「要請書」を送付
【要請の趣旨】
2017年6月現在のしじみ習慣のwebサイト上において、なお以下のような表記を含んでいたため、その一部については裁判外で使用の停止等を申し入れていたほか、当該表示等の差止請求に係る訴え提起を準備していたが、2017年7月に、しじみ習慣のwebサイトから、上記の記載がほとんど削除されたことを確認した。

【例】「お酒好きの栄養補給」「宴席を楽しみたい」「飲んだ翌朝シャキッ」「宴席後に早速しじみ習慣を飲みました」「宴席で無理はしたくない 宴席前に2、3粒 宴席の途中で2、3粒 帰宅後(寝る前)に2、3粒」「宴席は苦手だけれど… お付き合いの前に2、3粒、しじみの追加がおすすめ2、3粒、宴席後(寝る前)に2、3粒」「宴席が苦手な方」「しじみ習慣を宴席前と後(寝る前)に2粒ずつを目安にお召し上がりいただく」「就寝前にしじみ習慣を飲むと朝シャキっとする」

しかしながら、同社の公式 twitterには、誤認を招く表示がまだ残っているため、当該表記の削除を求める。

・2017年9月13日付で同社から回答を受領
【申入れへの回答の趣旨】
指摘されたtwitterの投稿について、全て削除した旨を回答。

・2017年10月24日付で同社に対し申入れ終了
同社からの一連の回答内容を精査した結果、以下の改善を受けて、一旦同社に対する申入れ要請活動を終了した。

1)しじみ習慣が休肝日の代わりになるような表記は今後行わないと回答したこと。
2)アフィリエイト広告が法令に遵守しているか確認し、遵守されていない場合は、発注先へ協力を要請すると回答したこと。
3)「超濃縮」等、「超」の付く表記は行わないと回答したこと。
4)Web上の誤認を招く表記を削除したこと。
5)Twitter上の誤認を招く過去の投稿を削除したこと。

なお、KC’sは活動の終了をもって同社の見解を認めたわけではないこと、今後も消費者の誤認を招く広告表示があると判断した場合は差止請求を再開するとしています。

本事案では、適格消費者団体による事業者への差止請求は、約2年半にわたり5回の問合せ、申入れ・要請という粘り強さで行われました。事業者が申入れをはねつけ業務改善がなされなければ、訴訟が提起され、判決または裁判上の和解となり、結果の概要について消費者庁のウェブサイトなどで公表という流れとなります。

行政による措置命令だけでなく、「消費者団体訴訟制度」が事業者にとっての大きなリスクとなることの認識が必要です。

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健康食品販売会社の佐々木食品工業(株)自然食研が販売する「しじみ習慣」のtwitter上の表示の改善を受けて、要請活動を終了しました。
(特定非営利活動法人 消費者支援機構関西 2017年10月24日)
http://www.kc-s.or.jp/detail.php?n_id=10000706

消費者支援機構関西と佐々木食品工業株式会社との差止請求に関する協議が調ったことについて(平成29年10月24日付け)
(消費者庁 2018年1月26日)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/collective_litigation_system/about_qualified_consumer_organization/release39/2018/pdf/release39_180126_0001.pdf
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≪関連記事≫

・「天然植物由来成分 90%以上」。I-ne頭髪洗浄剤の強調表示と注記表示に、適格消費者団体が是正申入れ (消費者機構日本 平成29年8月1日裁判外和解)

・(合)BRONXに勝訴的和解。続く、「お試し価格からの定期購入」に対する適格消費者団体の差止請求 (京都消費者契約ネットワーク 平成29年6月2日和解)

・モイスト「定期購入」広告、適格消費者団体の指摘で改善(平成29年6月13日)

・クロレラ訴訟と消費者契約法改正の行方。「適格消費者団体」とは?

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。