公益社団法人日本通信販売協会(JADMA)「広告適正化委員会」では、2017年に実施された新聞折込チラシの通信販売広告実態調査の結果を発表しました。(※)
この調査は、通信販売取引改善を目的に2012年度から実施されており、前回に引き続き、テレビ通販CMの広告調査も行っています。
まずは、新聞折込チラシ調査の内容を紹介します。
≪調査結果のポイント≫
●主要6都市、折込件数1位は大阪。全般的に件数減少
●折込件数の多い曜日は火曜日、水曜日。土曜日、金曜日は減少傾向
●「ホーム・家電」のチラシが減少するもトップ。「化粧品」「食品」が増加
●メーカー系通販の折込件数が増加。小売は減少
●取引内容に関する不適正な広告表示は52.5%。「支払時期」欠落が37.2%
●商品内容に関する不適正な広告表示は約10%。「化粧品」が58.6%
【折込チラシの折込状況】
●主要6都市、折込件数1位は大阪。全般的に件数減少
主要6都市エリア毎の折込件数は、1. 大阪(18.1%)、2. 札幌(17.4%)、3.名古屋(17.1%)4. 東京(16.8%)、5.福岡(15.8%)、6. 仙台(14.9%)の順。全般的に折込チラシの件数が52件減少したが、大阪は8件増加した。
●折込件数の多い曜日は火曜日、水曜日。土曜日、金曜日は減少傾向
曜日毎の折込件数は、火曜日が全体の19.3%と一番多く、次いで、水曜日の19.0%、月曜日16.9%、木曜日13.0%と続く。一方、日曜日、土曜日は少ない。
水曜日の件数が前回16年度より増加傾向。
●「ホーム・家電」のチラシが減少するもトップ。「化粧品」「食品」が増加
商品分類では、「ホーム・家電」が32.3%、「健康食品」が20.2%、「化粧品」「食品」が18.9%となっている。
前回16年度との比較では、「ホーム・家電」が大幅に減少した(91件、9ポイント減)。一方、増加したのは「食品」が、50件、7.2ポイント増、「化粧品」が17件、3.2ポイント増。
●メーカー系通販の折込件数が増加。小売は減少
広告主の業態では、「メーカー」の展開する通販の折込チラシが32件、5.6ポイント増加。一方、「小売」事業者の折込が、87件、6.3ポイントと大きく減少した。
【取引内容に関する不適正広告状況】
●取引内容に関する不適正な広告表示は52.5%。「支払時期」欠落が37.2%
取引内容に関する広告表示については、600件中315件、52.5%が各種関連法令に定める何らかの記載事項欠落していた。前回と比べると1.2ポイント改善した。
記載に不備があった事項では、「支払時期」が37.2%、「社名」33.5%、「住所」27.7%、「商品引渡時期」25.5%と続く。前回調査から、大きな傾向の変化は見られない。
今回の調査では、主に「特商法の記載事項」「二重価格」「限定価格」「定期購入」の表示が検証・精査された。不適正表示について以下のような傾向が見られた。
・家電量販店の折込広告で屋号のみの記載で正式社名が無記載、コンビニ後払いの支払い時期無記載のケースが多い。
・折込広告には、二重価格表示で通常価格と割引価格が記載されているものの、Webショップには当該商品がないケースや、容量が異なる商品であるケース、常設で割引価格で販売しているケースなど、通常価格が存在しないのではないかと思われる事例が見られた。
・「本日半額以下」「500人限定」と表示されたチラシがあったが、調査においては限定表示が守られていた。
・定期購入の表示については、通常価格なのか、定期購入価格なのか分かりにくい表示はあるものの、「いつでも解約」や「購入回数3回」など条件が分かりやすい広告が大部分であった。
【商品内容に関する不適正広告状況】
●商品内容に関する不適正な広告表示は約10%
商品内容に関する広告表示については、600件中542件、90.3%が適正表示されていた。前回と比べると4.7ポイント増加し、改善されている。しかし依然約1割が不適正な表示となっている。
「表示に関する各種法令やガイドライン等」に抵触する恐れがあるもの、または消費者に不信感を与えかねない表示がある。
●商品内容不適正広告「化粧品」が58.6%
商品内容に関する広告表示ついて、商品分類別の「適していない」における割合は、「化粧品」58.6%が最も多く、次いで「ホーム・家電」が13.8%、「健康食品」が12.1%となっている。前回と比べると「ホーム・家電」、「健康食品」は改善しているが、「化粧品」は5.1ポイント増となり、悪化している。
今回の調査では、主に「機能性表示食品」「化粧品・健康食品の効能効果」「数値・データ」「個人体験談」の表示が検証・精査された。不適正表示について以下のような傾向が見られた。
・化粧品の「シミ」「シワ」「ほうれい線」改善を暗示する表示、「まつ毛」「まゆ毛」が伸びるというまつ毛美容液の広告、医学誌に掲載の化粧品というコピーで皮膚科の医師が登場、医学的に効果があると暗示する表示。
・健康食品の「薬剤師が配合」という表示で効能効果が期待されるかのような表示。一方、「ダイエット」効果訴求は見られず。
・商品の性能説明に各種データを用いる事例が見られたが、裏付けが不明瞭、実際に使用する場合の条件ではない実験結果を表示するなど、消費者が誤認するおそれのあり。
・「シミが改善した」「耳の聞こえが良くなった」などの顧客の声を取り上げて効果訴求する表示が散見された。行き過ぎた感想を語る「個人体験談」も措置命令の対象となる。
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本調査委員会では、不適正な表示を行っている通販各社に対する指導や、折込掲載新聞社への協力要請を行っています。特に「通販の関連法令に抵触する怖れのある広告」を行った通販会社に対しては、「改善の具体策」について書面による回答を依頼し、それに対する協力姿勢がなく、違法性・悪質性があり、改善されない場合にはJADMAから関係省庁などへ通報するとしています。
調査報告書では、「一部不適正な表示が見られ、改善が必要な広告」 「関連法令に抵触するおそれのある広告」 について具体的な審査広告事例が公表されています。
次回は、個別広告事例を解説します。
※
通信販売取引改善のための通販広告実態調査 (2017年度調査)
(公社)日本通信販売協会 広告適正化委員会 2018年6月
http://www.jadma.org/pdf/2018/koukokujittai2017.pdf
<調査概要>
第1回調査:2017年9月1日から11月6日に折り込まれたチラシ(300件)
第2回調査:2017年11月7日から12月16日に折り込まれたチラシ(300件)
※同一表現チラシは1件とし、広告表現が異なる個別折込チラシが各300種となるまで収集。
実施エリア:主要都市である札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡の6都市を選択
対象チラシ:各都市の発行部数トップ紙の朝刊に月曜日から日曜日まで折り込まれたものを収集。新聞に折り込まれる地域タブロイド紙の通販広告も対象。
《関連記事》
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