消費者委員会の意見案まとまる トクホ制度・運用見直し、広告監視の健増法改正も視野に (第241回 消費者委員会本会議 2017年1月17日)

「健康食品の表示・広告の適正化に向けた対応策と、特定保健用食品の制度・運用見直しについての建議」(平成28年4月12日付)への、消費者庁の対応実施状況報告に対する消費者委員会の意見案が出されました。

平成29年1月17日の第241回消費者委員会本会議にて、依然として建議事項への対応状況が不十分であるとして、特定保健用食品の販売後の事後チェックの強化と行政処分、更新制の導入検討、健康増進法改正も視野に入れた広告の監視強化などの意見が出されています。(※1)

消費者委員会本会議では、2016年9月の日本サプリメント(株)トクホ制度初の表示の許可取り消し問題を踏まえて議論がなされていました。(※2)
消費者庁によるトクホと特別用途食品の品質管理調査では、現在販売中のトクホ366 品目のうち、11月1日時点では分析中であった7品目について追加報告が11月29日に公表され、全ての品目の関与成分量は、許可等申請書の記載どおり適切に含有されていることが発表されました。

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特定保健用食品の関与成分に関する調査結果について(第2報)
(消費者庁 平成28年11月29日)
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin1578.pdf
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この調査により明らかになった課題に対して、消費者庁は以下の対応により、消費者への特定保健用食品の最新かつ正確な情報提供を行うとしています。(※3)

●特定保健用食品の制度・運用の見直しについて
課題:
許可条件どおりの製品が販売されているか把握できていない。
消費者庁対応:
・平成28年度に前倒して買い上げ調査の実施 (対象は今回の調査で試験時期が古い品目及び自社分析品目)
・第三者機関による定期的な分析を義務化(次長通知の改正)
・今後、法令に基づかない買上調査で対応し、法令に規定されている収去調査でなくても、許可した内容と明らかに異なる内容の製品を見つけた場合には、当該結果をもって行政処分の対象とできるとの見解。
消費者委員会意見:
特定保健用食品の販売後の事後チェックの確保

収去調査・買上調査を問わず、製品の事後チェックの極めて重要な要素の一つとして、販売されている特定保健用食品の成分分析を、行政自らが実施することを強く求める。
調査の結果、製品に問題があることが明らかになった場合には、制度に則り、適切に行政処分を行うこと。
なお、今後実施する買上調査の結果が、現時点での消費者庁の見解と異なり、何らかの要因で指導及び措置に直結できず、改めて収去調査を実施しないと行政指導ができない状況となった場合には、建議で求めた収去調査を無作為に実施する運用に、速やかに改めることを強く求める。

課題:
許可後に販売の状況を正確に把握できていない。
消費者庁対応:
・販売の有無に関する定期的な調査(毎年1回)の実施とその結果を許可(承認)一覧に追記
・申請者と連絡がつかない品目について、 許可(承認)一覧に状況等を追記(平成28年11月1日)
・失効届の提出依頼を課長通知にて発出(平成28年11月9日)

課題:
新たな科学的知見の報告が法的に明確化されていない。
消費者庁対応:
・新たな科学的知見を入手した場合、消費者庁への報告を義務化(内閣府令の改正)
消費者委員会意見:
新たな科学的根拠の適切な収集方法の確立と再審査の有効性確保

更新制がない現状においては、新たな科学的根拠が適切に収集でき、結果として再審査制が有効に機能することが、製品に含まれる成分の有効性・安全性を、行政が消費者に対して担保し続けられる唯一の手段である。
新たな科学的根拠の適切な収集方法の確立と、再審査が必要となる要件の見直しを含む再審査制を有効に機能させるために必要な検討及び体制整備を早急に行うことを強く求める。ただし、再審査制を更新制に代わる取組として有効に機能させることができないのであれば、平成23年の提言で求めたとおり、更新制の導入検討を速やかに行うべきである。

また、健康食品の表示・広告の適正化に向けた対応策については、以下を求めています。
●消費者への周知の強化
多くの人の目に留まる形での健康食品に関する基礎知識や特保制度に関する周知が、依然行われていない。特に、高齢者が日常生活の中で目に留めやすい、CS・BSを含むテレビ・新聞・雑誌といった形での周知を行うことは極めて重要と考えるため、早急に行うことを強く求める。

●健康増進法に基づく速やかな監視・指導
昨今、物品の供給を行う事業者を対象とする景品表示法では対象となり得ず、「何人も」対象となる健康増進法でしか監視・指導及び措置が実施できない表示・広告が増加し、その内容が適切と思えないものも多い。健康増進法も十分に活用し、更に速やかな監視・指導を行うことを強く求める。
消費者庁は健康増進法の改正を行わずとも、適切な監視・指導及び措置は行えるとしたが、現行の健康増進法においては、現状以上には速やかな監視・指導及び措置が行えないのであれば、建議で求めた健康増進法改正に関する検討を速やかに行うべきである。

その他、消費者庁が実施予定もしくは検討予定と説明した以下の事項についても、迅速かつ確実な実施を求めています。

●事業者に対して、特定保健用食品の広告に、バランスの取れた食生活の普及啓発を図る文言の表示を求めること。
●特定保健用食品の製品情報公開を義務化し、公開情報の内容充実を図ること。

消費者委員会では今後も上記意見への対応を中心に、引き続き、建議事項への対応状況を消費者庁に確認していく、としています。

(※1)
第241回 消費者委員会本会議(内閣府 2017年1月17日)
【資料2】 「健康食品の表示・広告の適正化に向けた対応策と、特定保健用食品の制度・運用見直しについての建議」の実施報告に対する意見(案)
https://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2016/238/doc/20161220_shiryou2.pdf

(※2)
第238回 消費者委員会本会議(内閣府 2016年12月20日)
【資料1】
「健康食品の表示・広告の適正化に向けた対応策と、特定保健用食品の制度・運用見直しについての建議」の実施状況報告において説明願いたい事項
https://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2016/238/doc/20161220_shiryou1.pdf

(※3)
第238回 消費者委員会本会議(内閣府 2016年12月20日)
【資料3】「健康食品の表示・広告の適正化に向けた対応策と、特定保健用食品の制度・運用見直しについての建議」説明資料
https://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2016/238/doc/20161220_shiryou3_1.pdf

≪関連記事≫

・消費者委員会の意見案まとまる トクホ制度・運用見直し、広告監視の健増法改正も視野に
(第241回 消費者委員会本会議 2017年1月17日)

健康食品の品質管理と健食ビジネス戦略 
(消費者庁 平成27年度:機能性表示食品制度における機能性に関する科学的根拠の検証)

・トクホ、特別用途食品品質調査結果公表 許可取り消しの判断根拠 (平成28年11月 消費者庁)

・日本サプリメント トクホ初の許可取り消しと、トクホ全商品の調査要請

・トクホの更新制度は復活するのか?保健機能食品の品質管理規制

・強まる健康食品への規制 トクホ広告審査と業界の自主規制の取り組み
(日健栄協 第4回 特定保健用食品広告審査会)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。