糖質カット炊飯器に重ねての景品表示法の処分です。
2月8日、消費者庁は、糖質カット炊飯機の販売事業者4社に対し、商品の糖質カット炊飯機能表示について、景品表示法違反（優良誤認）の措置命令を行ったと公表しました。
4社の命令発出日は、（株）ニトリ（札幌市北区）2月7日、Areti（株）（東京都中央区）2月6日、リソウジャパン（株）（同中央区）2月1日、AINX（株）（同港区）2月5日となっています。

糖質カット炊飯機能表示については、2023年10月に、別の販売事業者4社（（株）forty-four、ソウイジャパン（株）、（株）EPEIOS JAPAN、HR貿易（株））に対して同様の内容で措置命令が、消費者庁よりだされています。

・糖質カット炊飯器の販売事業者4社に景表法措置命令。みせかけの糖質低減率表示に「合理的な根拠」認めず(消費者庁　2023年10月31日)

前回同様、不実証広告規制(※)を用いた処分となっており、4社が提出した根拠資料は、いずれも表示の裏付けとなる「合理的な根拠」として認められませんでした。
表示媒体として、前回対象となった自社ウェブサイトや、楽天、アマゾン、ヤフー内の自社ウェブサイト、プレスリリースやクラウドファンディングサービス「Makuake」での販売サイトに加えて、「X（旧Twitter）」、「Instagram」といったSNSのアカウントの投稿が対象となっています。

なお、今回処分を受けたAINXは、2023年3月に国民生活センターが実施した糖質カット炊飯器の商品テストにおいて、景品表示法上問題となるおそれがあると指摘されていた銘柄でした。

処分の概要と、違反認定のポイント、国民生活センターの商品テストとの関連性について確認します。

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糖質カット炊飯器の販売事業者4社に対する景品表示法に基づく措置命令について
　(消費者庁　2024年2月8日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/036249
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（※）
不実証広告規制（7条２項）
消費者庁長官は、商品・サービスの内容（効果、性能）に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。

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違反事業者・対象商品

（株）ニトリ（札幌市北区）の『糖質カット炊飯ジャー』（糖質カット炊飯器）
Areti（株）（アレティ／東京都中央区）の『ていとうシェフ』（炊飯調理器）
リソウジャパン（株）（同中央区）の『糖質カット炊飯器』（糖質カット炊飯器）
AINX（株）（アイネクス／同港区）の『Smart Rice Cooker』（糖質カット炊飯器）

違反概要

（株）ニトリ
表示媒体、表示期間：
1）自社ウェブサイト「ニトリ公式通販ニトリネット」：2023年4月27日、5月15日、24日、25日、6月5日、7日、9日、13日、28日、7月5日、24日、31日、8月7日
2）店頭POP：2023年3月15日～8月7日
3）商品パッケージ：2023年2月20日～9月12日
4）「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト「ニトリ楽天市場店」：2023年4月27日、5月15日、24日、25日、31日、6月5日、7日、13日、28日、7月5日、24日、31日、8月7日
5）「Yahoo！ショッピング」に開設した自社ウェブサイト「ニトリYahoo！店」：2023年4月27日、5月15日、6月7日、13日、7月5日、10日、24日、31日、8月7日

表示内容：
本件商品及び低糖質釜と称する画像並びに「糖質カット機能なし」と「糖質カット炊飯ジャー」とのご飯100gあたりの糖質を比較した表と共に、「糖質カット炊飯ジャー（４合 NJ101 ホワイト）」、「いつものご飯が低糖質で美味しくヘルシーに！」、「糖質カット機能なし 糖質 43g」、「糖質カット炊飯ジャー 糖質 22.2g」、「糖質約48％カット！」、「低糖質モードで一度に最大1.5合のヘルシー糖質カットご飯が炊ける。」及び「低糖質釜を設置して、糖質成分を分離、カット」等と表示。

あたかも本件商品の糖質カット炊飯機能で炊飯することにより、通常の炊飯機能で炊飯した米飯と同様の炊き上がりで、米飯に含まれる糖質（でんぷん）が、48％カットできるかのように示す表示をしていた。

違反表示例：（株）ニトリ（「糖質カット炊飯ジャー」　店頭POP）

Areti（株）
表示媒体、表示期間：
クラウドファンディングサービス「Makuake」に開設した自社ウェブサイト「Areti株式会社」：
2023年5月10日、18日、25日、6月5日、7日、13日、15日、7月7日、21日、28日、8月4日、18日、25日、9月1日、8日

表示内容：
例えば、「カラダ作りのための炊飯調理器 糖質カット炊飯・低温調理・発酵など12種類のモード」、「ストーリー ① いつものお米をヘルシーに【糖質最大59％カット】」、
米飯の画像と共に、「ポイント１ 低糖質白米モードなら糖質を最大59％※OFF」及び「糖質59％OFFの場合、カロリーは58％OFF。」、
試験データの画像並びに「低糖質白米モード」と題する棒グラフ及び「白米モード」と題する棒グラフと共に、「低糖質白米モード16.8g 白米モード41.6g」及び「59％糖質カット」等と表示。

あたかも本件商品の糖質カット炊飯機能で炊飯することにより、通常の炊飯機能で炊飯した米飯と同様の炊き上がりで、米飯に含まれる糖質（でんぷん）が、59％カットできるかのように示す表示をしていた。

違反表示例：Areti（株）（「ていとうシェフ」　「Makuake」自社Webサイト）

リソウジャパン（株）
表示媒体、表示期間：
1）自社ウェブサイト「RISOU」：
2023年5月18日、7月14日、24日、31日、8月7日、21日、28日、9月4日、11日
2）クラウドファンディングサービス「Makuake」に開設した自社ウェブサイト「リソウジャパン株式会社」及びサイト上の動画：
2023年5月10日、18日、6月5日、12日～15日
3）PR TIMESのウェブサイト（2023.1.13）及びサイト上の動画：
2023年5月10日、18日、6月5日～7日、13日

表示内容：
本件商品の画像と共に、「RS－021 56％糖質カット炊飯器 お米を撹拌させることで糖質最大で56％カットを実現しっかり美味しいご飯をお召し上がりください！ ２つの釜を使い分けることで、糖質カット炊飯3合と通常炊飯5.5合を一度に炊き上げます。」及び「仕様 備考お米を撹拌させることで糖質最大で56％カットを実現しっかり美味しいご飯をお召し上がりください！ ２つの釜を使い分けることで、糖質カット炊飯3合と通常炊飯5.5合を一度に炊き上げます。」と表示。

あたかも本件商品の糖質カット炊飯機能で炊飯することにより、通常の炊飯機能で炊飯した米飯と同様の炊き上がりで、米飯に含まれる糖質（でんぷん）が、56％カットできるかのように示す表示をしていた。

違反表示例：リソウジャパン（株）（「糖質カット炊飯器」　「Makuake」自社Webサイト）

AINX（株）
表示媒体、表示期間：
1）自社ウェブサイト「AINX公式ホームページ」：2022年10月11日
2）自社ウェブサイト「STORES」：2022年10月11日
3）PR TIMESのウェブサイト（2022.9.27）：2022年10月4日、11日、25
4）「Amazon.co.jp」に開設した自社ウェブサイト「AINX株式会社」：2022年9月29日
5）「Yahoo！ショッピング」に開設した自社ウェブサイト「AINX公式ショップ」：2022年9月29日
6）「Qoo10」に開設した自社ウェブサイト「AINXオフィシャルストア」：2022年9月29日
7）「X（旧Twitter）」に投稿された「AINX_co_ltd」と称するアカウントの投稿：
2021年8月1日、10日、18日、26日
8）「Instagram」に投稿された「ainx_co_ltd」と称するアカウントの投稿：
2021年8月1日、10日、18日、26日

表示内容：
本件商品及び容器に入れられた米飯等のの画像と共に、「AINX Smart rice cooker AX－RC3W／AX－RC3B／AX－RC3G」及び「〝毎日のご飯を今日から低糖質に〟 これからの食生活をデザインする、アイネクスの炊飯器」、「★低糖質炊飯モード実行時、最大33％の糖質カット 実現した業界高水準モデル ★業界初の糖質カット炊飯トレーを設置することで糖質カットする方式を採用し、炊きムラを防ぎ、糖質カット炊飯でも美味しいお米を炊く事が可能に」等と表示。

あたかも本件商品の糖質カット炊飯機能で炊飯することにより、通常の炊飯機能で炊飯した米飯と同様の炊き上がりで、米飯に含まれる糖質（でんぷん）が、33％カットできるかのように示す表示をしていた。

違反表示例：AINX（株）（「Smart Rice Cooker」自社ウェブサイト）

実際：
4社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。

合理的根拠として認められなかった、「みせかけの糖質低減率データ」

本件4社の糖質カット炊飯器の機能は前回2023年10月の事案と同様に、いずれも、釜から糖質を含んだ煮汁を排出することにより大幅な糖質低減が得られることをうたっています。
また、掲載された糖質カット率は、いずれも通常炊飯したご飯と糖質カット機能で炊いた同量のご飯に占める糖質量の差を示す外部検査機関による試験結果を、広告の糖質低減率の根拠としています。
しかし、実際はご飯の水分量を多くすることで、みせかけの糖質低減率データを作ることが可能であり、前回2023年10月の事案同様、「通常の炊飯機能で炊飯した米飯と同様の炊き上がり」での大幅な糖質低減率が得られることの合理的根拠としては認められませんでした。

なお、ニトリに関しては、「※糖質(でんぷん)量は、お米の種類、季節(水温、室温)、水加減、電圧などにより変わります。※通常炊飯と低糖質炊飯は炊き方が違うため、炊き上がり後の食感が異なります。」との打消し表示がありましたが、打消し効果は留められていません。

違反表示例：（株）ニトリ（「糖質カット炊飯ジャー」　自社ウェブサイト）

コンプライアンス対策として国センの商品テストにも留意すべし

措置命令に先立ち、国民生活センターが糖質カット炊飯器の糖質低減率等に関する商品テストの結果を2023年3月に公表しました。
テストにおいて、4銘柄（（株）forty-four、ソウイジャパン（株）、AINX（株）、ウィナーズ（株））の製品が、広告などで示されていた低減率を下回り、景品表示法上問題となるおそれがあると指摘されていました。
指摘を受けた4銘柄のうち、2銘柄（（株）forty-fourの『LOCABO（ロカボ）』、ソウイジャパン（株）の『Low Caloriena』）が前回の措置命令で違反認定を受け、残る2銘柄のうちAINX（株）が今回処分を受けることとなりました。
措置命令対象製品広告の糖質低減率は50％前後でしたが、今回、低減率33％のAINXが違反認定され、同程度の低減率をうたった残るウィナーズに対する処分の有無が気になります。

・「糖質カット炊飯器」炊いたご飯に含まれる糖質の総量に大差なし。景表法違反のおそれも（国民生活センター商品テスト　2023年3月）
・糖質カット炊飯器の不当表示問題。消費者庁と国センとで異なる違反認定の視点
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商品テストで指摘を受けたAINXの表示期間は2022年以前のものですが、それ以外の3社の表示期間は2023年2月～9月となっており、2023年10月の措置命令公表以降に不当表示はなされておらず、10月以前に違反被疑事案として調査対象となっていたことが推測されます。

2023年3月の商品テスト結果の公表後、速やかに表示を改善することで処分を受けるリスク回避できた可能性があります。

《関連記事》
・水素関連食品 3社に景表法措置命令　商品テスト対象銘柄も
（消費者庁:平成29年3月3日）

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