通販定期購入に対する、特定商取引法の誇大広告(12条)+最終確認画面の表示義務違反(12条の6第1項)を適用条項とした法執行が続いています。
消費者庁は、2024年10月16日、美容液等を販売する通信販売業者である(株)HappyLifeBio(本店所在地:東京都東久留米市)と同社の代表取締役 藤井 一良に対しに対して、特定商取引法違反で9カ月間の業務停止(禁止)を命じました。
10月4日にも、(株)SUNSIRIに対して特商法による3カ月の業務停止命令処分が出されたところです。
どちらの案件も、化粧品の効果(シワやしみ)に対する第12条の2の規定に基づく誇大広告認定と、最終確認画面の定期購入契約の解除に関する事項の表示義務違反(12条の6第1項)によるものです。
・特商法でも不実証広告規制による違反認定。美容クリームのシミ・しわ改善効果+通販定期購入でSUNSIRIに特商法業務停止命令(3カ月) (消費者庁 2024年10月3日)
HappyLifeBioに対しては、業務停止期間が9カ月間と非常に重い処分となっています。
消費者庁によると、これまでにPIO-NETに登録された同社に関する消費者相談件数は合計8076件に上るということです。
(SUNSIRIに関する消費者相談件数は合計3978件)
処分の内容について確認します。
——————————————————————————————
通信販売業者【株式会社HappyLifeBio】に対する行政処分について
特定商取引法違反の通信販売業者に対する業務停止命令(9か月)及び指示並びに
当該業者の代表取締役に対する業務禁止命令(9か月)について
(消費者庁 2024年10月17日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/039697
——————————————————————————————
【事業概要】
処分対象事業者:株式会社HappyLifeBio(本店所在地:東京都東久留米市)
取扱商品:「ハダキララ」と称する美容液等
取引類型:通信販売 自社が運営するウェブサイト「https:// www.happylifebio.co.jp」
代表者:代表取締役 藤井 一良
【認定した違反行為】
同社は、次のとおり、特定商取引法の規定に違反する行為をしており、通通信販売に係る取引の公正及び購入者の利益が著しく害されるおそれがあると認められた。
(1)誇大広告(特定商取引法第12条)
少なくとも2024年5月22日から2024年7月9日までの間、本件商品の効能について以下の広告をしていた。
商品の効能に関する表示➀
あたかも、本件商品について、皮膚に塗布するのみで、当該箇所に存在するしみを3日間で確実に消すことができる効能があるかのような表示。
(ⅰ)「シミが99.9%消える!!」
(ⅱ)「だから!10年以上悩み続けたシミも」、「目に見えるほどの効果を実感しました!」
(ⅲ)「\だけど!/「シミを完全に消すなら絶対これ!」と美容皮膚科で働く友人が激推しする“シミの漂白液”を使ってみると…」
(ⅳ)「シミが完全に消滅!経過を撮っておいたのですがどんどんシミが薄くなってますよね!」
(ⅴ)「だから!濃いシミが自宅で簡単に消える時代が来たんです!!」
(ⅵ)「どんな人でも3日でシミが消える」
(ⅶ)「「\3日でシミ消滅は確実!!/それが・・・\シミの漂白剤/『ハダキララ』」
商品の効能に関する表示②
あたかも、本件商品を塗布するのみで即座にしわ及びしみを完全かつ確実に消すことができるかのような表示。
(ⅷ)「どんなシミ肌でも2度とシミができない肌に生まれ変わるんです!」
(ⅸ)「つまりこのシミの漂白剤さえあればすべてのシミ悩みが解決♪」
消費者庁は、HappyLifeBioに対し、特定商取引法第12条の2の規定に基づき当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社から資料が提出された。
しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。
よって、商品の効能につき、実際のものよりも著しく優良であると人を誤認させるような表示に該当するものとみなされる。
【表示例】
(2)最終確認画面における表示義務違反(特定商取引法第12条の6第1項)
少なくとも2024年5月22日から2024年6月18日までの間、
チャットボットページ上における定期購入契約の最終確認画面上において、簡易な手続により本件定期購入契約を容易に解除できるかのように示す表示をしていた。
最終確認画面上の定期購入契約の解除条件・方法の表示内容:
・2回目注文を休止・停止する際は、初回の商品発送日の13日目からマイページ・お問い合わせフォーム・メール・LINE・電話にて受け付け、次回出荷準備予定日の10日前までに連絡する。
・解約手続きをするにはたまったポイントを『ハダキララ』モールにてすべて消化する必要があるとし、ポイントを使わずに解約したい場合はポイント消滅請求によってポイントを消滅させることができる。
しかし、チャットボットには解約に関する電話番号を記載していなかったほか、「ご利用規約」ページとは異なる解約条件を記載しており、定期購入契約の解除方法は煩雑な手続を経る必要があることなどを明示しておらず、売買契約の解除に関する事項の一部しか表示していなかった。
実際の解除に関する事項:
電話による解約を希望する場合
1)消費者が、商品の受領後、次回のお届け予定日の10日前までに問合せ窓口に電話をかけ、
2)自動音声により案内される「休止、解約に関するお問い合わせ」ではなく、「その他のお問い合わせ」の番号を押した上で、自動音声により案内される別の電話番号に改めて電話をかけ直し、
3)自動音声に従って顧客が登録している自らの電話番号及び♯を押して解約の仮受付をし、
4)HappyLifeBioによる確認を受け、同社からの「定期コースの停止可否の結果」のメールを待つ
ポイント消滅請求について:
・マイページ→解約方法の案内ページへのボタン→解約方法の案内ページを開いた上で、そのページをスクロールしていくと表示されるリンクを自ら発見してポイント消滅請求を行う
・HappyLifeBioに対し、何らかの方法により問合せを行って、ポイント消滅のURLのメール送信をさせた上で、そのURLからポイント消滅画面に入る
・サポートセンターのスタッフに管理画面よりポイント消滅を行わせる
【表示例】
本件定期購⼊契約の特定申込みに係る手続が表示される映像面
【処分の内容】
(1)業務停止命令
内容:
通信販売に関する業務のうち、次の業務を停止すること。
1)HappyLifeBioが行う通信販売に関する商品の販売条件について広告を行うこと。
2)HappyLifeBioが行う通信販売に関する商品の売買契約の申込みを受けること。
3)HappyLifeBioが行う通信販売に関する商品の売買契約を締結すること。
期間:
2024年10月17日から2025年7月16日まで(9か月間)
業務停止命令に違反した場合は、行為者に対して3年以下の懲役又は300万円以下の罰金又はこれを併科する手続きを、法人に対しては3億円以下の罰金を科する手続きを行うこととなっています。
(2)指示
1.前記違反行為の発生原因について検証し、違反行為の再発防止策及び社内のコンプライアンス体制を構築(法令及び契約に基づく返金及び解約の問合せ等に適切かつ誠実に対応することを含む。)して、これを同社の役員及び従業員に、業務停止命令に係る業務を再開するまでに周知徹底すること。
2.2024年5月22日から2024年10月16日までの間にHappyLifeBioとの間で本件売買契約を締結した全ての相手方に対し、消費者庁のウェブサイトに掲載される、業務停止命令及び本指示をした旨を公表する公表資料を添付して、2024年11月4日までに文書により通知し、同日までにその通知結果について消費者庁長官宛てに文書により報告すること。
3.誇大広告の内容を消費者に周知すること。
4.今後、HappyLifeBioが行う通信販売について、特定商取引法の各規定を遵守すること。
上記指示に違反した者には、6月以下の懲役又は100 万円以下の罰金、又はこれを併科、違反が法人の業務の場合には、行為者を罰するほか、その法人に対し100 万円以下の罰金が課せられます。
また、本件では、HappyLifeBioの代表取締役 藤井 一良に対して、同社が命ぜられた業務停止の範囲内の業務を新たに開始すること(当該業務を営む法人の当該業務を担当する役員となることを含む。)を9か月間禁じる処分が下っています。
※藤井は、HappyLifeBioの代表取締役であり、かつ、同社が停止を命ぜられた業務の遂行に主導的な役割を果たしていた。
上記指示に違反した者には、個人は3年以下の懲役又は300万円以下の罰金、法人は3億円以下の罰金が科せられます。
続く、誇大広告(12条)+最終確認画面の表示義務違反(12条の6第1項)による法執行
今年3月15日の(株)サン(健康食品)、4月9日の(株)オルリンクス製薬(健康食品)、4月18日の(株)HAL(電子たばこ)、10月4日(株)SUNSIRI(美容クリーム)に続き、今回で5事案目となります。
HappyLifeBioをめぐっては、2023年より複数の消費者団体が申入れ活動などを行っていました。
適格消費者団体 NPO法人 消費者支援ネットくまもと(2023.10.20)
化粧水等の通信販売を営んでいる株式会社Happy Life Bio(株式会社ハッピーライフバイオ)に対し、消費者契約法41条1項に基づく事前請求書を送付しました。
適格消費者団体・特定適格消費者団体NPO法人 埼玉消費者被害をなくす会
(株)Happy Life Bioに「再申入書」を送付しました(2023.9.06)
適格消費者団体 NPO法人 とちぎ消費者リンク(2024.8.26)
株式会社HappyLifeBioに再申入れ書を送付しました。
通販定期購入による消費者被害が沈静化するまで、誇大広告(12条)+最終確認画面の表示義務違反(12条の6第1項)による法執行は続くことが予測されます。
特定商取引法のポイントについて、以下の記事で解説しています。
(会員限定コンテンツです。会員登録(無料)はこちらから)
≪参考記事≫
・改正特商法対応急務、「最終確認画面」の義務表示事項と定期購入での禁止表示のポイント(2022年6月1日施行)
・消費者保護の更なる強化。特商法・消契法の改正案閣議決定(平成28年3月4日)
・電子たばこのネット通販定期購入(株)HALに特商法業務停止命令(3カ月)。「メーカー希望小売価格」に誇大広告認定 (消費者庁 2024年4月18日)
・定期購入契約が容易に解約できるかのような表示。ネット通販定期購入オルリンクス製薬に特商法業務停止命令(3カ月) (消費者庁 2024年4月10日)
・No.1不当表示、特商法の通信販売規制でも。法改正後2件目の処分、ネット通販定期購入(株)サンに業務停止命令(3カ月) (消費者庁 2024年3月15日)
・特商法改正後初の処分。ネット通販定期購入(株)LITに特商法による業務停止命令(6カ月)。積極的な消費者被害救済の指示も(消費者庁 2023年6月28日)
・ネット通販定期購入(株)BIZENTOに特商法による業務停止命令(3カ月)。「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン(案)」のパブコメ開始(東北経済産業局 2021年11月25日)
===================================
◆フィデスの美・健広告法務オンライン講座◆
法律を「知っている」から、実務で「判断」「活用」
できるコンプライアンス対応力向上を図ります。
詳細はこちら
===================================
===================================
◆フィデスの広告法務コンサルティング◆
消費生活アドバイザーが、貴社の広告コンプライアンス
体制構築をサポートします。
詳細はこちら
===================================
————————————————————-
◆本ブログをメルマガでまとめ読み!
本ブログの更新情報を、ダイジェストでお届けしています。
登録はこちら
————————————————————
この記事へのコメントはありません。