医療法人社団祐真会、Googleマップの口コミ投稿にステマ告示初の措置命令 (消費者庁 2024年6月7日)

2023年10月1日に施行された ステルスマーケティング告示の初の行政処分です。

消費者庁は2024年6月6日に、医療法人社団祐真会(東京都大田区)の運営するクリニックの口コミ表示に対して、景品表示法第5条第3号による措置命令を行いました。
発表によると、同法人は昨年10月2~17日、運営する「マチノマ大森内科クリニック」にインフルエンザの予防接種を受けに来た人に対し、Googleマップの口コミでの高評価を依頼。「接種前に星5つか4つで投稿すれば、1650円の摂取料金から550円を割り引く」と伝え、投稿が確認されれば実際に値引きしていたということです。

処分の内容と、レビュー投稿での「事業者の表示」の判断基準を確認します。

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医療法人社団祐真会に対する景品表示法に基づく措置命令について
 (消費者庁 2024年6月7日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/038178
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●違反概要
【対象役務】
祐真会がクリニックにおいて提供する診療サービス

【表示個所】
「Googleマップ」内の祐真会が開設し運営するクリニックの「プロフィール」と称する施設情報を示す表示における「クチコミ」と称する当該施設の口コミ及び評価を示す箇所

【表示期間】
2023年12月8日以降
2023年12月8日~2024年5月1日

【違反表示内容】
インフルエンザワクチン接種のためにクリニックに来院した者(第三者)に対し、
「Googleマップ」内の祐真会が開設し運営するクリニックの「プロフィール」における「口コミ投稿欄」のクリニックの評価として「★★★★★」(「星5」)又は「★★★★」(「星4」)の投稿をすることを条件に、当該第三者がクリニックに対して支払うインフルエンザワクチン接種費用から割り引くことを伝え、これに応じて当該割引を受けた第三者が投稿している又は投稿していたことから、
祐真会は、本件役務に関する投稿表示内容の決定に関与しているものであり、当該投稿による表示は事業者の表示と認められる。

上記表示は、表示内容全体から一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭になっているとは認められないことから、当該表示は、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難であると認められる表示に該当するものであった。

星5表示件数:45件

表示例:Googleマップ内のクリニックのプロフィールにおける口コミ投稿欄の投稿

(消費者庁資料より引用)

表示内容ではなく、「広告を隠す行為」自体を規制するステマ規制

今回、消費者庁が処分で認定したのは、「投稿内容」ではなく「評点(星5)」となっています。個人の特定の懸念があるため、投稿内容、ユーザーアカウントは公表されていません。
ステマ規制は、「広告を隠す行為」自体を規制するものですので、優良・有利誤認のように表示内容そのものが不当表示認定されるものではないことから、今後も違反認定された表示内容は公表されない可能性があります。一般消費者の投稿に対する配慮は必要である反面、事業者の予見可能性の観点からは公表を求めたいところですが、運用の難しさを感じます。

レビュー投稿での「事業者の表示」の判断基準

本件では、Googleマップの口コミでの高評価投稿を条件とした対価の提供という、事業者からの第三者に対する明示的依頼があり、一般消費者の投稿であっても第三者の自主的な意思による表示とは認められませんでした。
違反とならないためには、「広告・宣伝・PR」、「A社の商品提供を受けた投稿」など、広告であることが明瞭となる表示が必要です。
ECサイトのレビューのケースについて、事業者の表示となるものとならない表示の事例を消費者庁の示すガイドライン(※)からピックアップしました。

事業者の表示となるケース
・出店事業者が、「いわゆるブローカー」や、自らの商品購入者に依頼して、購入商品について、 ECサイトのレビューを通じて表示させる場合。
例:
★5つの評価をしてくださいといったレビュー投稿の内容を指示したり、必ずレビュー投稿してください、と依頼するケース。

事業者の表示とならないケース(第三者が行う表示)
・出店事業者の商品購入者が、ECサイトのレビュー機能を通じて自主的な意思で行った事業者の商品の表示。
例:
レビュー投稿キャンペーンのようなもので、キャンペーンに応募して投稿するかしないかは第三者の自由意志である場合。
事業者が商品購入者に対してECサイトのレビュー投稿に対する謝礼として、次回割引クーポン等を配布する場合でも、事業者と購入者との間で、投稿内容について情報のやり取りが直接又は間接的に一切行われていない場合。

なお、第三者の自主的な意思と認められるのは、投稿の内容だけでなく、投稿するかしないかも自由意志である場合となります。商品やサービスを無償で提供し、SNSを通じた表示を行うことを依頼したが投稿内容は自由というケースは、投稿することを前提としているので、投稿内容の決定に関与したとみなされますので、注意が必要です。

(※)
「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/assets/representation_cms216_230328_03.pdf

措置命令ではステマ表示を速やかに取りやめなければならない

なお、祐真会は、本件措置命令が発出された時点において違反認定された表示45アカウントのうち、35件が削除されておらず、表示を取りやめるよう命じられています。
削除には、同法人自ら投稿者に対して投稿削除を依頼しなければなりません。
大規模キャンペーンなどで、PRなど事業者の表示であることの明示が漏れてしまうと、多大な対応コストの発生に繋がりかねません。
第3号告示は課徴金賦課の対象ではないからといって、事業損失は軽いと考えるのは早計です。
2023年10月1日の法施行前の表示であっても表示が残っている場合は規制対象となりますので、未対応となっていないか再確認しておくとよいでしょう。

《参考記事》

・広告主に課されるアフィリエイト広告の適正管理。ステマ規制も示される(事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針改正 2022年6月29日)

・顧客による自主的な投稿ではない「口コミ」評価のNo.1表示に優良誤認。埼玉県 整骨院「くまのみ」に景表法措置命令(埼玉県 2023年3月14日)

・「妊活」サプリ、ゼネラルリンクに景表法措置命令 ステマランキングサイトによる広告手法に注意(消費者庁 2020年3月10日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。