オンライン個別学習指導のバンザン、不適正な「満足度1位」と期間限定キャンペーンに景表法措置命令。(消費者庁 2023年1月12日)

受験シーズンのこの時期、オンライン個別学習指導の「No.1」表示と期間限定キャンペーン表示に景品表示法による処分です。

消費者庁は1月12日に、インターネットによる通信教育事業者(株)バンザン(東京都新宿区)が提供するオンライン個別学習指導の表示に優良誤認による措置命令を行いました。
「満足度1位」などと記した表示をめぐっては、昨今不当表示が横行しており、2022年に「日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)が、「No.1 を取得させる」という名目で、非公正な「No.1 調査」を請け負う事業者に対する抗議文を発表し、更に、「No.1広告」などランキング広告や比較広告に関するガイドラインを公表しています。

(一社) 日本マーケティング・リサーチ協会
非公正な「No.1 調査」への抗議状(2022年1月18日)
https://www.jmra-net.or.jp/rule/20220118.html

「ランキング広告表示に使用する調査データ開示ガイドライン」と「比較広告のための調査実施の手引き」を発行しました(2022年5月26日)
http://www.jmra-net.or.jp/rule/guideline/

行政の動きとしては、消費者庁が2022年6月にエステ会社(株)PMKメディカルラボの「施術満足度1位」の表示に景品表示法の措置命令を行っています。

・エステのPMKメディカルラボ、不適正な「満足度1位」表示に景表法措置命令。(消費者庁 2022年6月15日)

安易な「No.1」表示を行うことは違反リスクを伴いますので、今後も十分注意が必要です。
また、「期間限定キャンペーン」に対する措置命令も、過去に度々出されています。

処分の内容と適正なNo.1表示のための要件、「期間限定キャンペーン」の違反要件を確認します。

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株式会社バンザンに対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2023年1月12日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/031751/
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【違反内容】
対象役務:
オンライン個別学習指導サービス5種
「メガスタ高校生」「メガスタ医学部」「メガスタ中学生」「メガスタ私立」「メガスタ小学生」

《優良誤認表示》
表示媒体・表示期間:
自社ウェブサイト:2022年4月4日~7月12日
パンフレット:2022年6月10日~7月19日
YouTube動画広告:2022年3月8日~7月14日

表示内容:
(1)利用者満足度
5サービスについて、例えば、自社ウェブサイトにおいて、「オンライン家庭教師で利用者満足度No.1に選ばれました!」、「第1位オンライン家庭教師 利用者満足度」等と表示。
あたかも、バンザンのサービス及び他の事業者の同種のサービス利用者に対する利用者満足度を客観的な調査方法で調査した結果において、バンザンのサービス利用者の満足度の順位が第1位であるかのように示す表示をしていた。

実際:
バンザンが委託した事業者による調査は、回答者にバンザンのサービス及び他の事業者の同種のサービスの利用の有無を確認することなく実施したもので、サービス利用者の満足度を客観的な調査方法で調査したものではなかった。

(2)口コミ人気度
5サービスについて、例えば、自社ウェブサイトにおいて、「第1位 オンライン家庭教師 口コミ人気度」等と表示。
あたかも、バンザンのサービス及び他の事業者の同種のサービスに関する口コミの人気度を客観的な調査方法で調査した結果において、バンザンのサービスの口コミの人気度の順位が第1位であるかのように示す表示をしていた。

実際:
バンザンが委託した事業者による調査は、回答者の条件を付さずに委託事業者に登録している会員全員を対象に、設定した回答者数に到達するまで実施したもので、サービスの口コミの人気度を客観的な調査方法で調査したものではなかった。

(3)推奨
「メガスタ高校生」について、例えば、自社ウェブサイトにおいて、「第1位 AO・推薦入試にお勧め出来るオンライン家庭教師」等と表示。
あたかも、バンザンの「メガスタ高校生」及び他の事業者の同種のサービスについて、AO・推薦入試対策として推奨できるものであるかを客観的な調査方法で調査した結果において、「メガスタ高校生」の順位が第1位であるかのように示す表示をしていた。

実際:
バンザンが委託した事業者による調査は、回答者の条件を付さずに委託事業者に登録している会員全員を対象に、設定した回答者数に到達するまで実施したもので、サービスについて、AO・推薦入試対策として推奨できるものであるかを客観的な調査方法で調査したものではなかった。

【表示例】パンフレット

(消費者庁公表資料より引用)

《有利誤認表示》
表示媒体・表示期間:
自社ウェブサイト:2022年4月12日~7月15日

表示内容:
例えば、「オンラインプロ教師メガスタ 『返金保証』と『成績保証』」、「ご不安なく始めていただくために、2つの保証制度をご用意しています。」、「返金保証」、「成績保証」、「4/30まで」等と表示。
※「返金保証」は5サービスについて、「成績保証」はメガスタ高校生、メガスタ私立、メガスタ中学生について表示。

「返金保証」については、あたかも、表示期限までに申し込んだ場合又は入会前の学習面談を受けた場合に限り、入会金及び4回分の授業料が返金される「返金保証制度」を利用できるかのように表示をしていた。
「成績保証」については、あたかも、表示期限までに申し込んだ場合に限り、通常授業1か月分と同時間分の追加授業を無料で受けられる「成績保証制度」を利用できるかのように表示をしていた。

実際:
表示期限後に申し込んだ場合であっても、「返金保証制度」および「成績保証制度」を利用できるものであった。

【表示例】自社ウェブサイト

(消費者庁公表資料より引用)

不適正な「No.1」表示となったポイントは

本件のNo.1」表示が不適正とみなされたポイントは、「No.1」評価調査において不適切な「調査対象者」設定がなされ、客観的な調査方法に基づく評価ではなかった点です。
「利用者満足度」においては、調査対象者の条件は調査対象サービスの利用者であることが求められ、「人気度」や「お勧め」においては、当該サービスについて口コミしたりお勧めしたりするような対象者条件の設定が求められます。

PMKメディカルラボの事案においても、満足度調査に対して実際にサービスを利用したことのない対象者に対するサイトのイメージ調査の結果が使用されていました。
(調査結果の恣意的な加工も行われていました)

なお、いずれの事案でも、満足度調査に「サイトのイメージ調査」が用いられています。

適正なNo.1表示のための要件とは

2008年6月に公正取引委員会が、消費者モニターを活用したNo.1表示に関する実態調査を行い、景品表示法上の考え方を整理し「No.1表示に関する実態調査について」(※)という報告書を公表しています。
報告書では、適正なNo.1表示のための要件として、以下の要件の両方を満たす必要があるとしています。

  • No.1表示の内容が客観的な調査に基づいていること
  • 調査結果を正確かつ適正に引用していること

「No.1表示」を行う際の景品表示法上の注意点について、以下の記事で解説しています。
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No.1表示に対する措置命令事案として、過去には以下のものがあります。

格安SIMの通信速度および、販売数量シェアに対する優良誤認事案。
・FREETELのSIMサービス、「業界No.1」「通信料0円」表示に優良・有利誤認の景表法措置命令。打消し表示に注意を(消費者庁:平成29年4月21日)

接骨院の「お客様評価」に対する優良誤認事案。
埼玉県 接骨院MJGの「お客様評価」「やせプログラム」表示に景表法措置命令(埼玉県 2019年11月18日)

家庭教師派遣の「第一志望校合格率」、「顧客満足度」に対する優良誤認事案。
・埼玉県、家庭教師派遣(株)ワン・ツー・ワンに景表法措置命令。合格率や教師登録数、解約料等の表示に誤認認定 (埼玉県 2020年9月14日)

エステ会社のサービスを利用した者に対する調査ではない「施術満足度1位」に対する優良誤認事案。
エステのPMKメディカルラボ、不適正な「満足度1位」表示に景表法措置命令。(消費者庁 2022年6月15日)

「No.1」表示に対する監視の目が強まる中、広告主だけではなく、関連する調査会社や広告代理店に対しても適正化に向けた取り組みが求められます。

度々処分対象となっている「期間限定キャンペーン」

期間限定キャンペーンは、消費者に「今買う(申し込む)ことが得だ」と思わせて購入を促す手法ですので、表示した期限後も同一内容のキャンペーンを間断なく継続することは、実際よりも有利な条件で購入できるかのように誤認させる有利誤認となります。
これまでにも、「期間限定キャンペーン」に対する措置命令は度々出されています。

昨年発出された措置命令事案です。
・資格取得講座の二重価格と期間限定キャンペーンに有利誤認。「未来ケアカレッジ」のEE21に措置命令 (消費者庁:2022年3月24日)

・セドナエンタープライズ脱毛器、期間限定キャンペーンの繰り返しに有利誤認。同一とみなされたキャンペーン内容は?(消費者庁:2022年3月15日)

期間限定の割引キャンペーンの恣意的な繰り返しには注意が必要です。

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。