●消費税法の「総額表示」ルールも要チェック
今回の事案は、看板表示におけるわかりにくい税抜き価格表示が景品表示法での処分となりました。
税抜き価格が税込価格と誤認されることが有利誤認につながるということですが、「税抜」、「税別」の文字が大きく明瞭に表示されていれば、打消し効果が認められ、もしかすると景表法上の処分は免れたかもしれません。
しかし、消費税法上のルールでは不十分と言えます。
消費税法では、消費者に対して商品やサービスを販売する課税事業者への総額表示(税込価格表示)を義務付けており、その猶予期間は2021年3月末に終了し、4月1日から完全義務化されています。
税抜き価格を表示するのであれば、例えば、「10000円(税込価格11,000円)」のように、税抜き価格が税込価格と誤認されないように表示する必要があります。
また、本件のような「10,000円(税抜)」のような表示では、消費税の金額や税率が具体的に示されていません。仮に「税抜」の文字が大きく明瞭に表示され、消費税が別途かかることを表記していても、具体的な金額がわからなければ総額表示には該当しないとみなされます。
総額表示義務の対象は、事業者があらかじめ消費者に対して行う価格の表示で、媒体による区別はなく、どのような表示媒体(ECサイトの価格、店頭表示、チラシ広告、新聞・テレビの広告など)でも対象となります。
(ただし、口頭で伝えるような価格は、総額表示義務の対象とはなりません)
消費税法の「総額表示」ルールと、景表法の打消し表示の表示方法について、再度確認しておきましょう。
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No.6902 「総額表示」の義務付け(国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6902.htm
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●景表法の打消し表示のルール(全ての媒体に共通して問題となる表示方法)
今回の事案で誤認表示の打消しが認められなかった「税抜」の表示ですが、景品表示法上の問題となるおそれがあるポイントを確認しましょう。
- 一般消費者が打消し表示を見落としてしまうほど文字が小さい場合。
- (打消し表示が強調表示の近くに表示されていても)強調表示が大きな文字に対して、打消し表示が小さな文字で表示されている。
- 打消し表示の背景が無地の単色ではなく、複数の色彩が入り組んでおり、 打消し表示の文字と背景との区別がつきにくいような場合。
- (一般消費者が見落としてしまうほど小さくない場合であっても)打消し表示が強調表示から離れた場所に表示されており、一般消費者が打消し表示に気付かない場合。
- (打消し表示に気付いたとしても)当該打消し表示が、離れた場所に表示された強調表示に対する打消し表示であると認識できないような場合。
上記以外にも、消費者庁が公表したWeb広告や動画、スマートフォンにおいて打消し表示を行う際の留意事項がありますので、内容を確認しておきましょう。
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打消し表示に関する実態調査報告書
(消費者庁 平成29年7月)http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180921_0001.pdf
スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書
(消費者庁 平成30年5月)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180516_0002.pdf
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≪参考記事≫
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