コロナ太り対策?ビジョンズ、マッサージクリームの痩身効果表示に景表法措置命令(消費者庁:2021年6月22日)

今回は、コロナ太り対策を意識した商品に対する景表法措置命令です。

消費者庁は6月22日、雑貨品等の企画、製造、販売事業者ビジョンズ(株)(東京都品川区)に対し、同社がOEM製造でインターネット販売していたマッサージクリームの痩身効果の表示について、景品表示法違反(優良誤認)の措置命令を行いました。

今回の違反も不実証広告規制(※)を用いた処分となっており、表示の裏付けとなる「合理的な根拠」が認められず、打消し表示も認められませんでした。

健康食品や雑貨、EMS機器などだけでなく、化粧品においても塗るだけ、貼るだけといった「何かをするだけで痩せる」という表示には注意が必要です。

違反概要と消費者庁の見解について確認します。


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ビジョンズ株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について
(2021年6月22日 消費者庁)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/024661/
———-
(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。

【事業者の概要】
ビジョンズ(株)
東京都品川区、雑貨品等の企画、製造及び販売業等

【対象商品】
「プルマモア マッサージ&モイストボディクリーム」と称する商品

【表示媒体】
自社ウェブサイト

【表示期間】
2020年7月29日から同年12月22日までの間

【違反内容】
本件商品の容器包装の画像と共に、
「ついに…部分痩せが可能に」、「女の格を上げるのは塗るだけダイエット?!」、「ダイエットにも美容にもこれ一本!」及び「痩身効果 ホスファチジコリン ※脂肪溶解注射のメイン成分」等と、表示することにより、あたかも、本件商品を身体の部位に塗布するだけで、商品に含まれる成分の作用により当該部位に短期間で著しい痩身効果が得られるかのように示す表示をしていた。

表示例(自社ウェブサイト):
(消費者庁公表資料より引用)

実際:
同社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。

●打消し表示について
「※掲載しているお声は、個人の感想であり、実感には個人差がございます。」、「※適度な運動とバランスの良い食事にプルマモアを併用いただいた結果です。」及び「※マッサージの効果による」と表示していましたが、当該表示は、一般消費者が対象表示から受ける商品の効果に関する認識を打ち消すものではない、とみなされています。
打消し表示が小さく見えづらい表記となっており、一般消費者が気がつくものではないと消費者庁はコメントしています。

表示例:
(消費者庁公表資料より引用 赤枠部分)

●消費者庁の「合理的な根拠」に関する見解
記者会見での質疑で、表示対策課の調査官は不実証広告規制における表示の裏付けとなる「合理的な根拠」に関する判断について、以下のように述べています。

・「ホスファチジルコリン」という成分が、美容関係で皮下注射により脂肪を溶かすという触れ込みで実際に使われていることは確か。ただし、実際に痩せるのかどうかは判断していない。
専門家の話では「皮下注射をして仮に脂肪が柔らかくなっても脂肪が燃焼しなければならない。溶けただけでは外に排出されるわけではないため、カロリーとして消費するか排出しないと瘦せることにはつながらないのではないか」と聞いている。
・ビジョンズ側からは、「ホスファチジルコリン」が含有されているという成分分析表は提出されたが、消費者庁としては商品の成分内容について分析センター等で確認は行っていない。
・商品の成分分析を行うまでもなく、提出資料では痩せる根拠とはならないということが判断できる。
・(ビジョンズ側は)クリームを使った実験はしていなかった。一般論として、クリームを塗って経皮に吸収されることはあるが、深部にまで吸収されるかどうかは疑わしい。

また、本件商品は、有名ブロガーを広告に起用し、インスタグラム等で人気を博していたもので、ビジョンズ側は、今回の違法表示について「ウェブ会社に任せてしまった」と説明しています。
自社で販売する商品の広告については、たとえ広告内容の決定を他の者に委ねていたとしても、広告主であるビジョンズが景表法の規制対象となります。
広告規制に関する正しい理解と広告管理責任が求められます。

新型コロナウイルス感染症による巣ごもり需要があるなか、消費者庁ではこれからも同様の事案について注視していくとしています。

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。