加圧シャツ等の販売事業者9社、加圧シャツ、ダイエットサプリ、美白化粧品等の通販事業者(株)Growas、黒髪サプリ通販事業者(株)アルトルイズムに続く、年度末の消費者庁による景表法の措置命令事案です。
3月29日、消費者庁は、酵素等の成分の作用による痩身効果を標ぼうする食品の販売事業者5社に対し、5社が販売する食品の表示について、景品表示法違反(優良誤認)の措置命令を行いました。
平成31年1月の、はぴねすくらぶの酵素サプリ、平成30年10月の言歩木のアイケア酵素飲料に続き、酵素系健康食品の成分の作用により効能効果を謳う表示に景表法措置命令が続いています。
優良誤認は不実証広告規制(※)を用いた処分となっています。
また、5社ともに痩身効果に対する打消し表示は、認められませんでした。
処分を前に、ジプソフィラとモイストの2社は、不当表示を認める謝罪広告を日刊新聞紙2紙掲載。このため、消費者庁は2社を除く3社にのみ、消費者に対する誤認排除措置を命じています。
モイストは、2013年、ダイエットサプリ「烏龍減肥」で措置命令を受けて以来、2度目の処分となっています。
・ダイエットサプリの痩身効果表示に景表法措置命令。折込チラシ、同梱広告にも注意!
(消費者庁:平成25年9月17日)
http://blog.fides-cd.co.jp/article/375060627.html
処分のポイントと各社の対応について確認します。
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酵素等の成分の作用による痩身効果を標ぼうする食品の販売事業者5社に対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 平成31年3月29日)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/release/2018/#190329_1
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(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。
●違反概要
【対象事業者・商品・表示媒体・期間】
(1)ジェイフロンティア株式会社
商品:酵水素328選生サプリメント
表示媒体、表示期間:
【新聞折込チラシ、ポスティングチラシ】
平成29年4月17日、同年8月28日、同年11月14日、
平成30年1月10日及び平成29年9月8日
【自社Webサイト】
(1) 平成28年11月24日から平成29年11月17日までの間
(2) 平成29年11月17日から平成30年1月5日までの間
(3) 平成29年12月中旬から平成30年1月5日までの間
(4) 平成30年1月5日から同年3月15日までの間
(5) 平成28年11月24日から平成29年11月17日までの間
違反表示例:酵水素328選生サプリメント
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_190329_0003.pdf
(2)株式会社ビーボ
商品:ベルタ酵素ドリンク
表示媒体:自社Webサイト
表示期間:
(1) 平成30年7月24日から同年12月21日までの間
(2) 平成30年10月17日から同年12月21日までの間
違反表示例:ベルタ酵素ドリンク
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_190329_0004.pdf
(3)株式会社ユニヴァ・フュージョン
商品:コンブチャクレンズ
表示媒体:自社Webサイト
表示期間:平成27年10月30日から平成30年4月1日までの間 違反表示例:コンブチャクレンズ
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_190329_0005.pdf
(4)株式会社ジプソフィラ
商品:生酵素
表示媒体:自社Webサイト
表示期間:平成30年3月21日から同年11月21日までの間
違反表示例:生酵素
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_190329_0006.pdf
(5)株式会社モイスト
商品:雑穀麹の生酵素
表示媒体:自社Webサイト
表示期間:
(1) 平成27年11月2日から平成29年7月18日までの間
(2) 平成29年7月18日から平成31年2月15日までの間
(3) 平成29年10月27日から平成31年2月15日までの間
違反表示例:雑穀麹の生酵素
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_190329_0007.pdf
【違反内容】
表示内容:
あたかも、対象商品を摂取するだけで、本件商品に含まれる成分の作用により、容易に痩身効果が得られるかのように示す表示をしていた。
実際:
5社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。
●体験談広告の打消し表示について
5社は、自社ウェブサイトの体験談の表示について、「体験談は個人の感想で、効能・効果を保証するものではない。」「置き換えと適度な食事制限の結果」等の打消し表示を記載していましたが、当該記載は、一般消費者が対象表示から受ける商品の効果に関する認識を打ち消すものではない、とみなされました。
打消し表示例:
ジェイフロンティア
「※個人の感想です。また、効果を保証するものではありません。※適切な食事管理・運動とあわせて置き換えダイエットによるカロリー制限を行った結果です。効果には個人
差があります。」
ビーボ
・「※1食置き換えと適度な食事制限及び糖質制限の結果」と記載していたが、当該記載は、くびれのある細身の腹部を露出した写真及び本件商品の容器包装の写真と共に、「本気でダイエットなら ベルタ酵素ドリンク99%が、痩せています」との記載が大きな文字で表示されているのに対して、小さな文字で表示。
・「具体的な酵素ダイエット方法って? ファスティングと食事改善」及び「ベルタ酵素で置き換えダイエット!」と記載していたが、当該記載は、前記の表示から1スクロール以上離れた箇所に記載されている。
・「※体験者の減量数値はN21を統計処理した結果、確率的に可能な範囲(実績値2014年10月LM研究財団調べ)ですが、100%の結果を保証するものではありません。」と記載。
ユニヴァ・フュージョン
「※掲載されたコメントは個人の感想であり、効能・効果を保証するものではございません。」と記載。
ジプソフィラ
「※個人の感想であり、効果・効能を示すものではありません。」及び「※個人の感想で
あり、効能・効果を保証するものではありません」と記載。
モイスト
「◎体験談は個人の感想です。使用感には個人差があります。」等と記載。
今回の事案では、打消し表示について「体験談は個人の感想で、効能・効果を保証するものではない。」旨の記載が打消し効果を認められなかっただけでなく、ビーボのように、健康食品の痩身効果の標ぼうについて薬機法では認められている「置き換えと適度な食事制限の結果」等の打消し表示を記載していても、表示方法が不適切であったことから、打消し効果を認められませんでした。
景表法における打ち消し表示の留意点を確認しておきましょう。
●「個人の感想です。」と打ち消し表示を併記するだけでは不十分
体験談を用いる際、「個人の感想です。効果には個人差があります」、「個人の感想です。効果を保証するものではありません」といった打消し表示を記載していたとしても、体験談等を含めた表示全体から「大体の人に効果がある」と消費者が認識を抱くことに留意する必要があります。
体験談により消費者の誤認を招かないようにするためには、体験談の内容と実際の商品・サービスの効果、性能等に適切に対応させることが必要です。
商品の効果、性能等に関して事業者が行った調査について、
(ⅰ)被験者の数及びその属性
(ⅱ)そのうち体験談と同じような効果、性能等が得られた者が占める割合
(ⅲ)体験談と同じような効果、性能等が得られなかった者が占める割合
等を明瞭に表示しましょう。
(景品表示法(第4条)、特定商取引法(第12条))
●全ての媒体に共通して問題となる表示方法
・一般消費者が打消し表示を見落としてしまうほど文字が小さい場合。
・(打消し表示が強調表示の近くに表示されていても)強調表示が大きな文字に対して、打消し表示が小さな文字で表示されている。
・打消し表示の背景が無地の単色ではなく、複数の色彩が入り組んでおり、 打消し表示の文字と背景との区別がつきにくいような場合。
・(一般消費者が見落としてしまうほど小さくない場合であっても)打消し表示が強調表示から離れた場所に表示されており、一般消費者が打消し表示に気付かない場合。
・(打消し表示に気付いたとしても)当該打消し表示が、離れた場所に表示された強調表示に対する打消し表示であると認識できないような場合。
●Web 広告において問題となる表示方法
・強調表示の位置から1スクロール以上離れた場所に打消し表示が表示されており、一般消費者が打消し表示に気付かない場合。
・打消し表示に気付いたとしても、当該打消し表示が、離れた場所に表示された強調表示に対する打消し表示であると認識できないような場合。
※一般消費者が認識できるか否かを判断する際は、(ⅰ)強調表示の前後の文脈や強調表示の近くにある記号等から一般消費者が打消し表示の存在を連想するか否かという点に加えて、(ⅱ)どの程度スクロールする必要があるのかという点等も勘案される。
次回は、処分に対する各社の対応について、確認します。
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・景品表示法(優良誤認)の不実証広告規制。表示の裏付けとなる「合理的な根拠」の判断基準とは
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