ペット用品のネット通販で定期購入トラブル急増。前年同期件数の6倍以上(国民生活センター 2023年2月1日公表)

近年、ペット用品のネット購入での消費者トラブルが増加しています。特に「お試しのつもりでサプリメントを購入したが定期購入だった」という、人のサプリメントでの定期購入トラブルと同様の相談件数が急増している状況が見られます。

PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)に寄せられた、ペット用品全体の相談件数が2022年度12月末まで)は1683件。そのうちネット通販の定期購入に関する相談件数が580件となっており、前年同期件数の94件から6倍以上に増加しています。

ネット通販の定期購入トラブルは、健康食品に代わって化粧品等についての相談件数が増加傾向にありますが、他の商材にも広がっています。ペット用品の通販「定期購入」に関する消費者相談状況を確認しましょう。

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愛するペットのための買い物
-インターネットで購入する前に、しっかり確認しましたか?-
(国民生活センター 2023年2月1日:公表)
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20230201_1.html
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ペット用品の消費者相談におけるネット通販割合が75.5%

22年度(12月末まで)のネット通販による相談件数が1271件であった。(ペット用品全体1683件の75.5%)
前年同期799件(ペット用品全体1149件の69.5%)から件数、割合ともに増加している。

(国民生活センター公表資料より)

相談内容、定期購入トラブル34.5%、商品未着、連絡不能31%

ペット用品のネット通販での主な相談は、次のような内容となっている。

(1)定期購入に関するトラブル
「お試しのつもりでサプリメントを購入したが定期購入だった」等。薬機法違反のおそれのあるものも。

(2)商品未着、連絡不能に関するトラブル
「ネットで商品を前払いで頼んだが、一向に届かない」等

(3)消費者都合に関するトラブル
「ネットで買った商品のサイズがペットに合わないので返品したい」等

特に、22年度(12月末まで)の(1)定期購入に関するトラブルは580件で、ペット用品相談全体の34.5%、前年同期件数の94件から6倍以上に増加。
(2)商品未着、連絡不能に関するトラブルは521件で、ペット用品相談全体の31%、前年同期件数の420件から1.2倍に増加。

(国民生活センター公表資料より)

主な事例:
(1)定期購入に関するトラブル
【事例1】
ネット通販で犬用の歯磨き粉を買った。2回目の商品が届き定期購入とわかったが、その旨の記載はなかった
ネットの広告を見て、初回お試し価格 1,200 円程度の犬用歯磨き粉を買った。先日2回目の商品が届き定期購入とわかったが、申込時にその旨の記載はなかった。商品代金は5,000円で高額だ。2回目の商品は不要なので返品したい。(2022年6月受付 60歳代 女性)

【事例2】
SNSの「犬の白内障が良くなる」という広告から犬用サプリを購入した。2回目の商品が届き定期購入とわかったが、定期購入を申し込んだ覚えも無い
広告には「お試し期間」とあり1袋 2,000 円程度のサプリだったので購入した。商品はすぐに届いたが、その1週間後、突然2回目が届き驚いた。2回目は3カ月分3袋で金額は約4万円と高額だった。サプリの効果を全く感じていなかったし、定期購入を申し込んだ覚えも無いので、支払いたくない。(2022年8月受付 40歳代 女性)

(2)商品未着、連絡不能に関するトラブル
【事例3】
ネット通販でペットフードを注文した。代金を指定口座に振り込んだが商品が届かず、業者と連絡が取れなくなった
ネットでペットフードを検索したところ、安価で販売している通販サイトを見つけた。代金をクレジットカードで決済しようと思ったが、銀行振込しか選べなかった。業者から口座名義人が個人名の案内メールが届いた。「大幅値引きしているので銀行振込でお願いします」とメールに書いてあり、信用して振り込んだが、1週間経っても商品が届かない。業者にメールを送ったが返信がなく、HPに記載のあった電話番号にかけたが、使われていなかった。(2022年 10月受付 50 歳代 男性)

【事例4】
ネット広告を見て犬用のベッドを購入した。商品が届かず問い合わせたが、奇妙な日本語で怪しい
通販サイトの犬用ベッド広告をみつけ、カードで決済し注文した。返信メールには「外国発送なので届くまでに数日かかる」と書いてあった。1週間経過しても届かず、メールで問い合わせると「私たちはあなたがこの経験していることを残念に思います」等の変な日本語の返信メールだったので、怪しいサイトだとわかった。通販サイトの表記には住所も電話番号も記載がない。
(2022 年9月受付 40 歳代 女性)

(3)消費者都合に関するトラブル
【事例5】
ネット通販で犬小屋を注文した。小型~中型犬用との記載があったが、飼っている中型犬は入ることができなかった
小型~中型犬用との記載のある犬小屋を、飼っている中型犬も利用できるだろうと思い購入した。商品が届き、組み立てたところ、飼犬が入ることができなかった。販売業者に返品を申し出たところ、「サイズは書いてある、返品は受け付けない」と断られた。(2022 年8月受付 50 歳代 男性)

【事例6】
ネット通販でキャットフードを購入したが、間違えて別のタイプの商品を注文してしまった。返品等に応じられず納得できない
広告には返品不可との記載があったが、店に事情を伝え「返品か交換できないか」とメールで問い合わせたところ、「衛生上・安全上の理由から応じられない」との回答だった。
(2022年 10月受付 60 歳代 男性)

化粧品、健康食品以外にも広がる「定期購入」

通信販売の「お試し定期購入」に関する消費者相談が、2021年度には5万8,261件に達する中、これまでは、化粧品、健康食品等が中心の相談でしたが、21年度はそれらがやや減少し(20年度:56,094件、21年度:52,446件)、加えて「電子タバコ」や「ドッグフード」「犬用サプリメント」「犬の歯磨き粉」など、他の商品にも相談(5,815件)が寄せられる状況となっていました。

(国民生活センター公表資料より)

・2021年度も増加していた通販「定期購入」トラブル。電子タバコや医薬品など商品に広がりが(国民生活センター 2022年7月公表)

定期購入トラブル対策の特商法改正による法執行に期待

2022年6月1日に施行された特定商取引法の改正では、定期購入契約での「お試し」や「トライアル」、「いつでも解約可能」などの強調表示での消費者を誤認させるような表示に関する禁止規定も盛り込まれました。

販売業者は、販売サイトの「最終確認画面」において、顧客が「注文確定」の直前段階で、分量、販売価格・対価、支払の時期・方法、引渡・提供時期、申込期間(期限のある場合)、申込みの撤回、解除に関することなどの契約の申込みの内容を確認できるように表示することを義務付けています。
特に定期購入については、各回に引き渡す商品の数量、代金等のほか、引渡しの回数、消費者が支払うこととなる代金の総額を明確に表示しなければなりません。
また、事例1,2のように初回と2回目以降の内容量、代金が異なる場合等には、各回の分量、初回の代金と対比して2回目以降の代金が明確に把握できるように表示することとされています。
違反行為により消費者が誤認して申し込みをした場合には取消権が認められ、契約解除の妨害に当たる行為に対しては罰則付きの禁止となります。

2023年度以降、厳正な法執行により消費者トラブルが減少することに期待します。

・改正特商法対応急務、「最終確認画面」の義務表示事項と定期購入での禁止表示のポイント(2022年6月1日施行)

ペット用サプリメントも薬機法規制対象

動物の病気の予防・治療・診断等に使用するためのワクチンや、薬、検査キットなどは「動物用医薬品」と呼ばれ、薬機法に基づき規制されています。
栄養を摂ることを目的として使用するためのサプリメント、ミネラルウォーター、生肉、スナック、ガム等は、ペットフードとして、「ペットフード安全法」に基づき規制され、動物の病気の予防や治療に使用する薬等の動物用医薬品とは区別されています。
事例2のように「〇〇病が良くなる」や「〇〇病の予防」をうたうペット用のサプリメント等も、薬機法に違反する可能性があります。

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動物用医薬品等に該当するか否かの考え方(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/yakuzi/y_import/index.html
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通販はクーリング・オフの対象外ですが

ネット通販に不慣れな消費者は、事例5、6のようにたとえ商品説明ページに商品情報が表示されていても不注意で見落としてしまうこともあります。
返品特約として自己都合による返品を受け付けないとする場合は特に、お客様が誤認して購入してしまうことのないよう、親切で分かりやすい情報提供を心掛けたいものです。

≪参考記事≫

・悪質通販「定期購入」の新たな手口に注意喚起。規制に向けた行政の動きは?(国民生活センター 2022年9月公表)

・ネット通販「定期購入販売」関連相談、前年度比57.1%と大幅減少 (JADMA 2021年度消費者相談件数)

・JAROへの苦情、健康食品6割減。審査事案の3分の1がアフィリエイトサイト関連(日本広告審査機構 2021年度の審査概況)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。