6割強の人が購入・契約に不安。被害を受けたサイレントカスタマーは46%(令和3年度 消費者意識基本調査)

消費者の意識や行動、トラブル経験を理解することは、事業者においてマクロな視点でのマーケティング活動や顧客体験(CX)向上の指針を得ることにつながります。

消費者庁では、消費者問題の現状や求められる政策ニーズを把握し、消費者政策の企画立案にいかすことを目的に、平成24年度より「消費者意識基本調査」を実施しています。 令和3年度調査より、日頃の消費生活での意識や行動、消費者事故・トラブルの経験、申し出行動に関する項目をピックアップしてご紹介します。

  • 消費意識や行動について
  • トラブルや被害に遭う不安の程度
  • トラブルや被害に遭う不安を感じる理由
  • 購入商品や利用サービスでの消費者被害の経験
  • 被害を受けた商品・サービス
  • 被害を受けた商品・サービスの販売・購入形態
  • 被害を受けた商品・サービスについての相談又は申し出の有無
  • 被害を受けた商品・サービスについての相談又は申し出をした相手

「買う前に機能・品質・価格等を十分に調べる」が67%

消費意識や行動について、「当てはまる(『とても当てはまる』+『ある程度当てはまる』)」の割合が最も高いのは、「買う前に機能・品質・価格等を十分に調べる」が66.7%と最も高く、次いで「多少高くても品質の良いものを選ぶ」(63.1%)、「実際に商品の現物を確認してから買う」(60.4%)の順。
一方、「当てはまらない(『あまり当てはまらない』+『ほとんど・全く当てはまらない』」の割合が高い順にみると、「有名人やキャラクター等を応援するためにお金を使う」が79.8%と最も高く、次いで「家計簿やアプリで家計管理をする」(65.2%)、「今しかできない参加型の体験やコンテンツにお金を使う」(62.6%)の順。

家計管理までは徹底できないものの、堅実な消費行動を心がける傾向が読み取れます。

購入や契約に対して不安を感じている人は66%

商品の購入やサービスの提供に伴う契約でトラブルや被害に遭う不安の程度について、「不安を感じる(『非常に不安を感じる』+『不安を感じる』+『少し不安を感じる』」は、66.1%。一方、「不安は感じない」の割合は19.2%。
「不安を感じる」の割合は、性別では大きな差異はみられない。
年齢層別では「30~39歳」(74.8%)で最も高く、次いで「40~49歳」(72.4%)が高く、一方、「80歳以上」(49.9%)、「70~79歳」(52.9%)が低くなっている。

6割強の人が購入・契約に不安を感じており、特に働き・子育て世代の30~40代の不安が高い傾向が読み取れます。

トラブルや被害に遭う不安を感じるのは、知識不足や情報過多

トラブルや被害に遭う「不安を感じる」と回答した人に、その理由について聞いたところ、「法律や契約に関する知識が乏しいため」が65.7%と最も高く、次いで「情報があふれていて、正しい情報を判断しにくいため」(61.2%)、「悪質業者の手口や対処方法が分からないため」48.9%)、「高額契約や複雑な契約をした経験が少ないため」(46.9%)の順となっている。

トラブルや被害に遭う不安を感じるのは、知識不足や情報過多により判断が困難になっていると感じている人が多いことが読み取れます。

商品や利用したサービスに対する期待とのギャップに被害意識

この1年間に購入した商品や利用したサービスについて、消費者被害の経験をした人の割合が高い内容は、「商品の機能・品質やサービスの質が期待よりかなり劣っていた」12.0%、次いで「表示・広告と実際の商品・サービスの内容がかなり違っていた」7.8%、「思っていたよりかなり高い金額を請求された」(3.6%)の順。

前回調査と比較して、「ある」の割合は「商品の機能・品質やサービスの質が期待よりかなり劣っていた」(9.3%→12.0%)が2.7ポイント増加。「表示・広告と実際の商品・サービスの内容がかなり違っていた」(5.2%→7.8%)が2.6ポイント増加。

被害を受けた最多商品「食料品」前年度比5.8ポイント増、「保健衛生品」17.1ポイント減、最多サービス「放送・通信」1.1ポイント減

被害事例数772件のうち「商品に関するもの」の品目では、「食料品(外食や出前は除く。)」が最も高く10.8%、次いで「保健衛生品(薬、メガネ、電気治療器、化粧品、シャンプー、美容器具、殺虫剤、ちり紙等)」(10.6%)、「住居品(洗濯機、ミシン、掃除機、洗剤、冷暖房機器、カーテン、照明器具、消火器等)」、「衣料品(洋服、下着等)」(共に8.9%)の順となっている。
前回の調査結果と比較して、「食料品」(5.0%→10.8%)が5.8ポイント増加し、「保健衛生品」(27.7%→10.6%)17.1ポイント減少。

「サービスに関するもの」の品目では、「放送・通信(テレビ、電話、インターネット等)」が最も高く3.4%。
前回の調査結果と比較して、「放送・通信(テレビ、電話、インターネット等)」(4.5%→3.4%)が1.1ポイント減少、「金融・保険(預貯金、株、投資信託、先物取引、保険、住宅ローン、サラ金等)」(0.4→1.7%)が1.3ポイント増加。

被害を受けた販売形態、「通信販売(インターネット取引)」43%、「店舗」27%

被害事例数772件を販売・購入形態別に分けたところ、「通信販売(インターネット取引)」の割合が最も高く43.0%、次いで「店舗」(26.9%)となっている。

前回の調査結果と比較して、「通信販売(インターネット取引)」(50.1%→43.0%)は7.1ポイント減少し、「店舗」(25.1%→26.9%)は1.8ポイント増加した。

なお、前回調査から「通信販売」のカテゴリーを、(インターネット取引)と(インターネット取引を除く)」に分けている。
過去の調査結果は、以下の図のとおり。

トラブル経験者の内、「相談・申出」した人は37%、誰にもしていない46%

相談又は申し出の有無別では、「した」の割合が 37.2%、「誰にもしていない」が45.5%となっている。
前回の調査結果と比較して、大きな変化はみられない。

トラブル「相談・申出」先は「家族、知人、同僚等の身近な人」と「メーカー等」。「販売店、代理店等」は減少

相談又は申出をした被害事例(287件)について、「相談又は申し出をした相手」は、「家族、知人、同僚等の身近な人」が46.0%と最も高く、次いで「商品やサービスの提供元であるメーカー等の事業者」(23.0%)、「商品・サービスの勧誘や販売を行う販売店、代理店等」(23.0%)の順となっている。}
「市区町村や消費生活センター等の行政機関の相談窓口」の割合は8.7%にとどまる。

前回の調査結果と比較してみると、「販売店、代理店等」(35.9%→23.0%)が12.9ポイント減少、「家族、知人、同僚等の身近な人」(35.9%→46.0%)が10.1ポイント、「メーカー等」(29.9%→39.0%)が9.1ポイントそれぞれ増加。

今回調査で浮き彫りとなった消費意識・行動は、商品購入前に機能・品質・価格等を十分に調べる傾向が強いものの、法律や契約に関する知識不足や情報過多により判断が困難になっていることから、6割強の人が購入・契約に不安を感じていると言えるでしょう。
コロナ禍の影響でネット通販利用が拡大した前回令和2年調査では、被害を受けた販売形態の5割をネット通販が占めましたが、今回調査では引き続きトップであるものの、減少傾向が見られました。
被害経験としては、商品の機能・品質やサービスの質に対する期待や表示・広告とのギャップに被害意識を持つ人の割合が高まっています。
また、被害経験をしても申出や相談をしないサイレントカスタマーは45%存在しています。
消費者の被害経験を減らし安心して商品購入してもらうために、期待や表示・広告とのギャップを感じさせない消費者目線での丁寧な情報提供が求められます。
とりわけ、現物確認ができない通販においては、重要な視点と言えるでしょう。

消費者の商品購入における意識やSNS利用状況の記事も併せてご確認ください。
・見たことのあるSNS広告、「大幅値下げをうたうセール広告」が最多。違法広告に注意(令和3年度 消費者意識基本調査)

(※)
消費者意識基本調査(消費者庁 令和3年度実施)https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/research_report/survey_002/

調 査 項 目
(1)「生活全般や消費生活における意識や行動」について
(2)「SNS の利用」について
(3)「SDGs やエシカル消費に関する意識や取組」について
(4)「消費者事故・トラブル」について
(5)「消費生活相談の窓口」について
(6)「消費者契約」について

調査対象
 母集団:全国の満 15 歳以上の日本国籍を有する者
 標本数:10,000 人
 地点数:400 地点(374 市区町村)
 抽出法:層化2段無作為抽出法
調査時期  令和3年11月8日~11月23日
調査方法  郵送配布、郵送回収(WEB 回答併用)
有効回収数(率):5,493 人(54.9%)

≪関連記事≫

・消費者被害を受けた販売形態の5割がネット通販。「相談・申出」先、36%が「販売店、代理店等」(令和2年度 消費者意識基本調査)

・消費者意識、4人に3人が表示確認を心掛け、現物を見て購入する人は68%(令和元年度 消費者意識基本調査)

・8割の消費者が表示確認を心掛け、約6割が「偽装・誇大表示」に高い関心(平成30年度 消費者意識基本調査)

・「クーリング・オフ制度」の認知度9割。「特定適格消費者団体」の認知度は13%(平成28年度 消費者意識基本調査)

・消費生活の心がけ「表示や説明の確認」74%、「個人情報管理」57%。約9割が個人情報漏えい不安 (平成25年度 消費者意識基本調査)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。