第一類医薬品の新型コロナ抗原検査キットのネット販売解禁。販売時の留意点は?「医療用」、「研究用」の扱いは?

新型コロナウイルス感染についてセルフチェックに使用する一般用抗原定性検査キット(以下「抗原検査キット(OTC)」)が、薬機法に基づき承認を得て、2022年8月24日以降、薬剤師による情報提供を受けた上で薬局、薬店のほか一部のインターネット通信販売サイトでも購入することが可能となりました。

セルフチェック用の検査キットに関する法規制のこれまでの流れと、ネット販売における注意ポイントを整理しました。


「医療用」検査キットはネット販売不可、「研究用」は雑貨扱い

国の承認を受けたセルフチェック用の検査キットに関しては、医療用の抗原定性検査キット(以下「医療用検査薬」)について、2021年9月27日から一部の薬局で薬剤師に相談の上、購入可能となっていました。ただし、薬機法上、インターネットでの販売は認められてはいません。
—————
新型コロナウイルス抗原定性検査キットのインターネット販売の留意事項について
(厚生労働省事務連絡 2022年9月13日)
https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/attachment/174230.pdf
—————

他方、従前から、国の承認を受けていない「研究用」と称する抗原検査キットや抗体検査キットがドラッグストアやネット通信販売サイトなどで販売されていますが、性能等が確認されたものではないとして購入を控えるよう、消費者庁や国民生活センターが消費者への注意喚起を行っています。
つまり、今回の「抗原検査キット(OTC)」のネット販売が解禁される以前は、消費者は承認された検査キットを手軽に購入することができず、未承認の検査キットの誤認購入や使用トラブルが懸念されていました。
—————
新型コロナウイルスの抗原定性検査キットは国が承認した「体外診断用医薬品」を選んでください!
(消費者庁 2021年10月13日、2022年9月9日改訂)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/025912/
—————

(消費者庁公表リーフレット)

—————
新型コロナウイルスの研究用抗原検査キット及び抗体検査キット使用についての注意
(消費者庁 2021年3月26日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/023650/
—————

—————
新型コロナウイルス感染のセルフチェックには国が承認した抗原定性検査キットを!-購入時には薬剤師から説明を受けて正しく使用しましょう-
(国民生活センター 2022年9月21日:公表)
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20220921_2.html
—————

OTC検査キットは第一類医薬品、販売時の留意事項は

「抗原検査キット(OTC)」は薬機法における第一類医薬品であり、販売に当たっては丁寧な説明や、販売に当たっての記録の保存等を適切に行う必要があります。

販売時における、厚生労働省が示した留意事項を確認します。
—————
新型コロナウイルス感染症流行下における
一般用新型コロナウイルス抗原定性検査キットの販売時における留意事項について
(厚生労働省事務連絡 2022年8月24日)
https://www.mhlw.go.jp/content/000980340.pdf
—————

【販売時の情報提供】
(1)抗原検査キット(OTC)は、セルフチェックとして使用するものであり、使用者自身で新型コロナウイルス感染症の診断を行うことはできない。

(2)検査の実施方法等について、製造販売業者が作成した説明用資料を適切に用い、図や動画等も活用しながら、丁寧に説明を行うこと。

(3)結果の判定について、使用者が検査後に適切な行動を選択できるよう丁寧に説明を行うこと。
例:
 陽性の判定、 陰性の判定の場合でも、症状がある場合には、使用者の居住する自治体の受診等の案内に従って、受診等を行うこと。

(4)インターネット販売を行う場合には、メール等により提供した情報全体について理解したことだけを確認するのではなく、個別にチェックボックスを設けるなど(1)~(3)の項目ごとに個別に理解したことを確認すること。

(5)購入した抗原検査キット(OTC)の転売は、薬機法に違反するおそれがあることを情報提供する。

【陳列、広告、販売、搬送及び記録】
(1)販売等に当たり、抗原検査キット(OTC)と、「研究用抗原 検査キット」を併売するなど、購入者が両者を混同するような陳列、広告及び販売等は行わないこと。
消費者が適切に薬機法に基づく承認を受けた抗原検査キットを選択できる環境整備に努める。

(2)搬送についても薬局の管理者や店舗管理者の管理業務に含まれるものであり、販売した抗原検査キット(OTC)を搬送する際は、配送業者等に対して必要な指示を出すこと等を通じて、抗原検査キット(OTC)の適正管理を行わなければならないこと。

 (3)第一類医薬品を販売等した場合は、薬機法施行規則の規定により、品名、数量、日時等を書面に記載し、2年間保存しなければならないこと。

コロナ検査キットに対する法規制状況

新型コロナウイルスの検査キットをめぐっては、2021年3月26日、消費者庁研究用抗原検査キットの販売事業者2社及び抗体検査キットの販売事業者3社に対し、景品表示法に違反のおそれがあるとして行政指導を行いました。
・新型コロナ抗原検査キット、抗体検査キットの販売事業者5社に景表法行政指導。消費者庁の監視続く(消費者庁 2021年3月26日)

違反表示例として、自社ウェブサイトにおいて

「厚生労働省承認済み【国内唯一】」
「厚労省令で定める医療機器届出番号1●B●X●●●00●●00●01」
(※実際の表示では番号が明記されているもの)
「ご注意ください!!唯一、認可され輸入が許されている商品です。」

と表示することにより、
あたかも、当該抗原検査キットが厚生労働省によって承認等され、当該事業者と同種又は類似の商品を供給している他の事業者のものよりも品質、性能が著しく優良であるかのように示す表示をしていたというものです。

また、抗体検査キットについては、2020年12月25日にも、販売事業者6社に対して行政指導が行われています。
・新型コロナウイルス抗体検査キットの販売事業者6社に景表法行政指導。消費者庁の監視続く(消費者庁 2020年12月25日)

「研究用抗原検査キット」の販売そのものは、法律で禁止されているものではありませんが、「医薬品」ではなく「雑貨」扱いで、虚偽の内容を表示すれば、処分を受けることになります。

新型コロナウイルス関連の景品表示法に基づく監視は継続して行われており、第6弾となる緊急監視が実施され、6回の公表で合計 226 事業者による 249 商品又は役務に対して、改善要請が出されています。
・消費者庁の新型コロナウイルス予防商品緊急監視(第6弾)。健食の「ウイルス予防効果」を認めない根拠は? (消費者庁  2021年12月~2022年2月)

今後も消費者庁の厳しい監視と、消費者への注意喚起が続くことが予想されます。
また、国民生活センターでは、検査キットに関する消費者トラブル事例について情報提供しています。事業者として消費者トラブルの未然防止を図るうえで、ご参考ください。
————-
新型コロナウイルス感染症の検査キットでのトラブル-事前に注意事項をよく確認し、目的に合わせ、適切に利用しましょう-
(国民生活センター 2021年11月4日:公表 2022年9月21日:更新)
https://www.kokusen.go.jp/test/data/s_test/n-20211104_2.html#header_wrap
————-

===================================
◆フィデスの広告法務コンサルティング◆
消費生活アドバイザーが、貴社の広告コンプライアンス
体制構築をサポートします。
詳細はこちら
===================================

————————————————————-
◆本ブログをメルマガでまとめ読み!
本ブログの1週間分の情報を、ダイジェストでお届けしています。

登録はこちら

——————————————————-

関連記事

  1. 事業者団体のコンプライアンスの取組、会員企業の要望がカギ (平成26年…

  2. 「八丁味噌」GI登録問題で考える、日本の農産品に対する海外でのブランド…

  3. 加工食品の原料原産地表示義務付けの経過措置期限迫る!新型コロナウイルス…

  4. 3度目の緊急事態宣言下、消費者庁の新型コロナウイルス予防健康食品緊急監…

  5. ヤフー広告審査非承認理由、薬機法、No.1表示規定への抵触が各3割。最…

  6. 埼玉県、大学・高校と連携して違反広告監視。1事業者に行政処分、25事業…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。

最近の記事

2024年10月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。