2021年度も増加していた通販「定期購入」トラブル。電子タバコや医薬品など商品に広がりが(国民生活センター 2022年7月公表)

通信販売の「お試し定期購入」に関する消費者相談が、5万8,261件に達したことが、国民生活センターによる注意喚起の公表によりわかりました。

ネット通販の定期購入トラブルについては、PIO-NET(注)に寄せられた苦情相談件数が2015年度から急増し始め、2019年には5万件を突破し、20年度は5万6094件に達していました。
ただし、2016 年度~2021 年度までは化粧品、健康食品、飲料に関する相談のみを集計していましたが、21年度は集計方法が異なり、全ての商品に関する「定期購入」の相談件数をカウントしています。
これまでは、化粧品、健康食品等が中心の相談でしたが、21年度はそれらがやや減少し(20年度:56,094件、21年度:52,446件)、加えて電子タバコや医薬品など、他の商品にも相談(5,815件)が寄せられている状況となっています。

更に、2022 年度の「定期購入」の全ての商品に関する相談件数は、5月31日までで8,629 件に達しており、今年度も21年度と同レベルの相談件数に達することが懸念されます。

他団体に寄せられた消費者相談状況においては、法規制強化が奏功し、「定期購入」に関する相談件数は減少に転じていました。
日本通信販売協会(JADMA)が公表した2021年度の通販の「定期購入」に関する消費者相談では、前年度比57.1%と大幅に減少していました。

・ネット通販「定期購入販売」関連相談、前年度比57.1%と大幅減少 (JADMA 2021年度消費者相談件数)

また、日本広告審査機構JARO)が公表した消費者からの広告相談においても、2021年度の定期購入に関する苦情は減少しています。

・JAROへの苦情、健康食品6割減。審査事案の3分の1がアフィリエイトサイト関連(日本広告審査機構 2021年度の審査概況)

いずれも、健康食品に関する相談の顕著な減少によるものですが、代わって化粧品等についての相談件数が増加傾向を示していました。通販「定期購入」に関する最新の消費者相談状況を確認しましょう。


【PIO-NET における相談の傾向
(2021 年度受付分(2022 年5月 31 日までの登録分))

●「化粧品」、「健康食品」に関する相談でも商品の幅が広がっている
2021年度は、1位「化粧品」、2位「健康食品」。契約当事者の属性による特徴あり。
【化粧品】33,765件
・ほとんどの年代の女性で「美容液」「ファンデーション」「化粧水」に関する相談が多い。
・20歳未満~30歳代の男性では「除毛クリーム」「マウスウォッシュ」も目立つ。
・40歳以上の女性を中心に「美白クリーム」「美白美容液」など肌の美白効果やしわを目立たなくする効果のある化粧品、「白髪染めシャンプー」など。
【健康食品】17,931件
・ほとんどの属性で「ダイエットサプリ」に関する相談が多い。
・30歳~40歳代の女性では「バストアップサプリ」も目立つ。
・20歳未満~30歳代の男性では「筋肉増強サプリ」も目立つ。

●「他の教養娯楽品」「医薬品」などの商品にも「定期購入」の販売方法が広がっている
2021 年度は、3位「他の教養娯楽品」、4位「医薬品」。
【他の教養娯楽品】
・「電子タバコ」や「電子タバコのカートリッジ」、「ドッグフード」「犬用サプリメント」「犬の歯磨き粉」などに関する相談が目立つ。
【医薬品】
・60 歳以上を中心に相談が寄せられている。
・「漢方薬」「湿布薬」「医薬ビタミン剤」「鎮痛剤」「うがい薬」「水虫薬」「関節痛薬」などが目立つ。

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「おトクにお試しだけ」のつもりが「定期購入」に!?(No.1)
-電子タバコや医薬品でも!!-
(国民生活センター 2022年7月21日:公表)
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20220721_2.html
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JAROが公表した消費者からの広告相談の報告によれば、最近の新たな悪質事例が紹介されています。

  • 化粧品のインフィード広告や動画共有サイトの広告に、「初回お得な価格」「定期縛りなし」と書かれているのを見て通販サイトから申し込むと、契約完了時に「ちょっと待って!」などと書かれたページが表示され、「もう一箱もらえます」「特別クーポンでさらに〇%引き」など本契約がよりお得に購入できるかのような表示が出る。
  • 「今から5分間」などとカウントダウンが始まり、短い時間の中で選択を迫られて当該キャンペーンに申し込むと、最初の契約では定期購入回数の縛りはなかったのに、新たに提示された契約では複数回の購入条件となっており、総額が数万円になる。
  • 定期縛りに関する表示は、カウントダウンのページに記載されているが、「お得」と強調された表示に比べて、非常に分かりにくくなっている。
  • 新たな契約に関する表示は契約完了時に画面上に表示されるのみであり、後から確認することが困難となっている。

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2021年度の審査概況
(公益社団法人 日本広告審査機構 2022年6月29日)
https://www.jaro.or.jp/news/20220707a.html
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2022年6月1日に施行された特定商取引法の改正では、定期購入契約での「お試し」や「トライアル」、「いつでも解約可能」などの強調表示での消費者を誤認させるような表示に関する禁止規定も盛り込まれました。
違反行為により消費者が誤認して申し込みをした場合には取消権が認められ、契約解除の妨害に当たる行為に対しては罰則付きの禁止となります。
・改正特商法対応急務、「最終確認画面」の義務表示事項と定期購入での禁止表示のポイント(2022年6月1日施行)

しかし、新たな悪質手法では、契約に関する表示が契約完了時に画面上に表示されるのみであることから、後から確認することが困難で証拠が残りにくいことが、行政の調査や法執行のネックとなります。変容が見られる悪質な「定期購入」販売に対して、機動的な法執行を行うことができるのか、今後も注視したいと思います。

≪参考記事≫
・2019年度の通販「定期購入」契約相談が5万件超に。規制強化の議論が進む

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。