アフィリエイトコンサルDYMに景表法措置命令。就活サービスのアフィリエイト広告に優良誤認認定 (消費者庁 2022年4月27日)

アフィリエイト広告に対する法執行が強まっています。

消費者庁は4月27日、有料職業紹介事業を行う(株)DYM(東京都品川区)に対し、就職支援サービスの表示に対する景品表示法違反の措置命令を出しました。
自社サイトに加えて、複数のアフィリエイトサイトや動画広告における表示において、就職率や選考内容、求人企業数などで実態と異なる表示を行い優良誤認が認められました。
同社は、Webでの販促支援事業としてアフィリエイトコンサルティングサービスも行っている事業者です。

2022年2月には、アフィリエイト広告に対する景品表示法の適用などに関する考え方と不当表示の防止に向けた、「アフィリエイト広告等に関する検討会」報告書が公表されており、広告主となる事業者やASPのアフィリエイト広告の管理責任が明確化され、今後、法執行が本格化しそうです。

処分のポイントについて確認します。

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株式会社DYMに対する景品表示法に基づく措置命令について
 (消費者庁 2022年4月27日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/028525/
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違反概要

【対象役務】
役務(1)「DYM就職」と称する就職支援サービス
役務(2)「DYM新卒」と称する就職支援サービス

【表示媒体・期間】
役務(1)「DYM就職」
自社ウェブサイト「DYM就職」:
2021年8月10日、9月17日・28日、10月6日・21日、11月12日・15日・22日・29日、
12月6日・13日・20日・27日、2022年1月4日・11日・17日・24日・31日

アフィリエイトサイト
「GOOD JOBLOG Kazutomo Nagasawa Official Blog」
「じょぶおたく」
2021年8月11日、9月17日・28日、10月6日・14日

「月曜日をワクワクにforWORK ジョブシフト」
「引きこもらない引きこもり」
2021年11月1日・15日・22日・29日、12月6日・13日・20日・27日、
2022年1月4日・11日・17日・24日・31日

「人生プラン軌道修正 脱既卒NEETガイド」
「【第二新卒】キャリアアドバイザーが語る!成功する転職論」
2021年11月1日・15日・22日・29日、12月6日・13日・20日・27日、2022年1月4日

「~20代の第二新卒転職を現役人事が応援!~第二新卒転職のABC」
2021年11月1日

役務(2)「DYM新卒」
自社ウェブサイト「Meets Company」
2021年10月22日・26日、11月4日・12日・15日・22日・29日、12月6日・13日・20日・27日

アフィリエイトサイト
「JOB HUNTING.com」
2021年10月22日・26日、11月1日・15日・22日・29日、12月6日・13日・20日・27日、
2022年1月4日・11日

「ミーツカンパニーの参加企業の調べ方とは!?注目企業11社を紹介!」
2021年11月1日・15日・22日・29日、12月6日・13日・20日・27日、
2022年1月4日・11日・17日・24日・31日

動画広告「YouTube」
2020年6月22日から2021年11月24日までの間

【違反内容】
役務(1)「DYM就職」
・例えば「第二新卒・既卒・フリーターの方を優良企業の正社員に!」や「相談からの就職率驚異の96%!!」と表示するなど、あたかも、「DYM就職」の提供を受けた求職者のうち、DYMから紹介を受けた企業に就職した者の割合は、96パーセントであるかのように示す表示をしていた。
しかし、実際には96パーセントという数値は、DYMが任意の方法で算定した、特定の一時点における最も高い数値であった。

・例えば「バイト経験しかないんだけど正社員に転職できる・・・?」と表示するなど、あたかも、「DYM就職」においてDYMから紹介される就職案件には、人材派遣会社から派遣先企業に派遣されて業務に従事するものは含まれないかのように示す表示をしていた。
しかし、実際には、人材派遣会社から派遣先企業に派遣されて業務に従事するものが含まれていた。

・例えば「取扱企業社数 2,500 社」と表示するなど、あたかもDYMは 2,500 以上の求人情報を有しており、当該企業数の求人情報の中から求職者に企業を紹介することができるかのように示す表示をしていた。
しかし、実際には、2018年5月1日以降、DYMが有している求人情報は、最大2,000社程度であって、2,500社を下回るものであった。

・例えば「書類では一切判断しません!人物重視採用を行ってます!」と表示するなど、あたかも、書類選考なしで、DYMから紹介される全ての企業の採用面接を受けることができるかのように示す表示をしていた。
しかし、実際には採用面接を受けるには書類選考が必要な企業があった。

違反表示例:
アフィリエイトサイト「GOOD JOBLOG Kazutomo Nagasawa Official Blog」

(消費者庁資料より引用)

役務(2)「DYM新卒」
・例えば「1 回約8社の少人数座談会形式」と表示するなど、あたかも、「DYM新卒」に含まれている「Meets Company」と称するイベントに8社の企業が参加するかのように示す表示をしていた。
しかし、実際には参加企業数が8社であった回数は、1割未満であった。

・例えば「内定取得率95.8%」や「イベント参加者の90%以上が内定獲得!」と表示するなど、あたかも、イベントに参加した求職者のうち、企業から就職の内定を取得した者の割合が 95.8 パーセント又は90パーセント以上であるかのような表示をしていた。
しかし、実際には95.8パーセント又は90パーセントという数値は、DYMが任意の方法で算定した、特定の一時点における最も高い数値であった。

・例えば「取扱企業数 2,500 社」や「就活生利用率4人に1人」と表示するなど、あたかもDYMは 2,500 以上の企業の求人情報を有しており、当該企業数の求人情報の中から求職者に企業を紹介することができるものであり、また、就職活動中の学生の4人に1人が「DYM新卒」を利用しているかのように示す表示をしていた。
しかし、実際には、2018年5月1日以降、DYMが有している企業求人情報は、最大2,000社程度であって、2,500社を下回るものであり、また、DYMが関係する各種サービスに登録している者を含めて「DYM新卒」の利用者として算定したものであって、就職活動中の学生の4人に1人が利用しているものではなかった。

違反表示例:
自社ウェブサイト「Meets Company」

(消費者庁資料より引用)

広告主にアフィリエイト広告「自ら決定」認定

本事案では、合計9件のアフィリエイトサイトが表示対象媒体となっています。
DYMは、ASPを通じて、これらのアフィリエイトサイトの表示内容を自ら決定しているとみなされました。

同社は4月27日に自社ホームページで公表した「お知らせとお詫び」において、アフィリエイト広告に関する今後の対応として、次のように述べています。

消費者庁より上記各表示に関するご指摘をいただくより以前の2020年10月以降、顧問弁護士の助言も踏まえ、各表示の是正を行なっておりましたが、対応が不十分であったものがあり、本件措置命令を受けるに至った次第です。弊社では、アフィリエイターに対する表示内容の是正指示やアフィリエイターとの契約解除等、表示内容の是正に向けた各種取り組みをすでに進めておりますが、今後も引き続き、外部専門家の意見を適宜仰ぎつつ、適切な広告表示の実現を図ってまいります。

2022年4月27日 (株) DYM
「お知らせとお詫び」
https://dym.asia/news/pdf/20220427.pdf

広告主となる事業者のアフィリエイト広告の管理責任が明確に

アフィリエイト広告に対する法執行は2020年に入って活発になっています。

アフィリエイト広告が違反認定された措置命令事案として、20年3月に埼玉県によるサプリメントの痩身効果に対するニコリオ事案があります。
埼玉県、ダイエットサプリ通販のニコリオに景表法措置命令と特商法業務停止命令。アフィリエイトも注意! (埼玉県 2020年3月31日・4月1日)

2020年7月には、大阪府警による健康食品通販会社ステラ漢方(株)及び、広告代理店、委託先の制作会社の社長や従業員の薬機法違反逮捕がありました。
・健康食品「肝パワーEプラス」の記事態広告アフィリエイトで薬機法違反。広告主、広告代理店、制作会社社員が同時逮捕

2021年に入って、虚偽・誇大なアフィリエイト広告に対する初の消費者安全法による注意喚起と、アフィリエイト広告自体を違反認定した消費者庁初の景表法措置命令が出されました。
・シミ消し化粧品のアフィリエイト広告に、初の消費者安全法による注意喚起 (消費者庁 2021年3月1日)
・T.Sコーポレーション男性用育毛剤のアフィリエイト広告に、消費者庁による初の景表法措置命令(消費者庁 2021年3月3日)

また、アフィリエイトだけでなく、インスタグラム投稿を違反対象とした措置命令も出されています。
・アフィリエイトに加えてインスタ投稿が違反対象表示に。アクガレージとアシストの豊胸サプリに景表法措置命令(消費者庁 2021年11月9日)

いずれも、健康・美容関連商材が対象となっていましたが、今回は就職支援サービスでした。今後は商材に関わらず、アフィリエイト広告の適正化に本格的な法執行が進みそうです。
広告主となる事業者やASPには、アフィリエイト広告の管理責任が強く求められていくこととなります。

アフィリエイト広告に携わる方々に、コンプライアンス情報として押さえておいていただきたいポイントをまとめた記事も併せてご参照ください。

《参考記事》
・令和3年8月施行の改正薬機法で新設の課徴金制度、アフィリエイトは課徴金の対象になるのか?
令和3年度、アフィリエイト広告の適正化に向けた本格的な法執行へ

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。