今後のアフィリエイト広告に対するコンプライアンス対応についての方向性が示されました。
アフィリエイト広告に対する景品表示法の適用などに関する考え方と、不当表示の防止に向けた取り組みを議論する「アフィリエイト広告等に関する検討会」。
2021年6月から6回の検討会を経て、2022年2月15日に報告書が公表されました。
今後、報告書の提言に沿って、アフィリエイト広告に対する規制が具体的に進められることとなります。
報告書の提言のポイント
- アフィリエイト広告の景品表示法上の一義的な責任主体は「広告主」であることを明確化
- 悪質事業者には他の法律との連携により、「広告主」以外のASPや広告代理店、アフィリエイター、個人にも法執行
- 広告主によるアフィリエイト広告を適切に管理するための措置の指針の明確化
- アフィリエイト広告における「広告」である旨の表記の義務付け
- 「ステマ」に対する景品表示法規制強化の動き
- 広告主の責任によるアフィリエイト広告管理で不十分な場合は、景品表示法改正も
アフィリエイト広告に携わる方々に、コンプライアンス情報として押さえておいていただきたい内容となります。
提言の概要を整理しました。
アフィリエイト広告の不当表示に対する景品表示法上の規制対象は「広告主」
アフィリエイト広告は、景品表示法上は広告主の表示とされます。
表示内容については、ASPやアフィリエイターにも一定の責任はあると考えられるものの、まずは「表示内容の決定に関与した事業者」とされる広告主が責任を負うべき主体である、としています。
これまでのアフィリエイト広告の表示に対する措置命令事案においても、広告主が処分対象として考え方が示されてきましたが、それを改めて明言しました。
「広告内容はあくまでアフィリエイターが作成したものであり、広告主の責任ではない」という主張は通りません。
この認識を周知徹底するためにも、アフィリエイト広告を用いた不当表示に対して、景品表示法に基づく厳正な対処を求めています。
「広告主」以外のASPや広告代理店、アフィリエイター、個人等も、他の法律による法執行対象に
景品表示法上の一義的な責任主体は「広告主」ですが、広告主と連携共同して通信販売を行い、一体となって事業活動を行っていると認められる事業者(ASPやアフィリエイターなど)については、景品表示法上の供給主体と認められ、景品表示法が適用されます。
問題となる広告の実質的な指示役を担う個人に対しては、個人を規制対象とすることもできる特定商取引法を適用し、広告業務禁止命令を行います。
また、健康食品や化粧品での不当表示を繰り返すASPやアフィリエイターに対しては“何人規制”を行う健康増進法、薬機法の活用や警察との連携、消費者安全法に基づく公表・注意喚起を行うとしています。
悪質な広告主の背景に、広告主の出資会社や、問題があるアフィリエイト広告の出稿の仕方等を指示するコンサルタント会社や広告代理店、広告制作会社等の存在があり、そこから広告主がその事業活動の実質的な方針について指示を受けているという状況に対応するものです。
広告主はアフィリエイト広告を管理するために適切な措置を講ずる必要がある
既に規定のある「景品表示法第 26 条に基づく事業者が講ずべき表示の管理上の措置」に関して、今回、アフィリエイト広告の広告主向けに具体的な指針を策定するよう消費者庁に求めています。
既存の「事業者が講ずべき表示の管理上の措置」に関する指針は、基本的に、事業者内部で完結する表示システムを念頭に置いたもので、アフィリエイト広告のように表示の作成等を事業者の外部(ASPやアフィリエイター等)に委託する場合を念頭に置いて定められたものとなっていません。そのため、アフィリエイト広告の広告主が自ら講ずべき措置の具体的な指針が示されることとなりました。
なお、事業者は、必要な管理上の措置を講じていれば、課徴金の納付を命じられないこととなっています。
《想定される措置の内容》
●表示の管理
- アフィリエイターとの間の契約において、不当表示が行われないような取決めをする。
- アフィリエイト広告の出稿前後に表示内容の確認を行う。確認方法は、広告主の個別事情に応じて確認の対象や頻度等を検討する。
確認方法例:特に販売実績が良好なアフィリエイターの広告について重点的な確認を行うなど。 - アフィリエイト広告の表示内容を保存する。
- 広告主がアフィリエイト広告の表示の根拠となる情報を事後的に都度確認できる体制をとる。
対応例:
・広告主自ら又はアフィリエイター等を通じて、表示の根拠資料を保管する。
・広告主とアフィリエイターとの間でいつまで保管するのか、保管しなかったときは誰がどのような責任を負うのかなどの取決めをする。
・広告主自らが全てのアフィリエイト広告について情報確認や保管が困難な場合、不当表示の未然防止に必要十分なパトロールや、売上の大きいアフィリエイターを重点的にチェックする。 - アフィリエイト広告を管理する担当者を定め、自社の広告内容として監視・監督する。
- 管理担当者及びアフィリエイターに対して、景品表示法等の定期的な研修を実施する。
●不当表示が行われた場合の対応
- 広告主は、消費者がアフィリエイト広告を通じて購入した商品・サービスについて、情報提供や連絡等を確実に行うことができる連絡窓口を設置する。
- アフィリエイト広告に不当表示が行われた場合に、広告主は、その不当な表示を自ら又はアフィリエイターを通じて迅速に削除・修正できる対応体制を構築する。
- アフィリエイターが問題のある表示を行なった場合、広告主(広告代理店等を通じて取引する場合も含む。)とASP等を介したアフィリエイターとの間の契約において、提携解除や報酬の支払い停止、返還等を行う旨を定める。
●アフィリエイト広告に、広告主との関係性を理解できる「広告」である旨の表記の義務付け
広告主がアフィリエイト広告による宣伝活動を行う場合には、アフィリエイト広告において、消費者が広告主との関係性を理解できるよう、広告主の広告である旨を明記するといった措置を求めています。 アフィリエイター自身が、広告である旨の表示を削除した場合も、アフィリエイターが問題のある表示を行なった場合と同様、アフィリエイターとの間の契約において、提携解除や報酬の支払い停止、返還等を行う旨を定めます。
上記、管理上の措置に関する指針を、消費者庁において夏頃をめどに成案を公表するとしています。
広告主が正当な理由なく管理上の措置を講じていない場合には、消費者庁は勧告を行うことができ、広告主がその勧告に従わない場合は、その旨を公表できることとなっています。
指針に具体的な措置を明記するに当たっての留意事項として、アフィリエイト広告の取引実態は様々であると考えられることから、事業者が行っている取組の実態把握に努めるとともに、パブリックコメント等を通じて実効性のあるものとするとしています。
また、関係事業者等が主導する協議会を設置し、悪質な事業者についての情報共有や、公正競争規約も視野にアフィリエイト広告における契約内容のひな型や自主ルールの策定を行い、官民連携による対応を行うことで、悪質な広告主等に対する抑止力にすることを期待しています。
「ステマ」に対する景品表示法規制強化の動き
これまでの景品表示法の考え方では、ステルスマーケティング(広告であるにもかかわらず、広告である旨明示しない行為、ステマ)行為そのものを、違法としているのではなく、あくまで、その表示内容が優良又は有利誤認表示であることを禁じています。
しかし、今回の報告書では、アフィリエイト広告同様、ステルスマーケティングについて、実際には広告主による広告であるにもかかわらず、その旨が明瞭に表示されていない場合、一般消費者が純粋な第三者による広告であると誤認するおそれがあり、広告主による広告である旨を明瞭に表示させることが必要であるという見解を示しています。
そして、消費者庁に対して、ステルスマーケティングの実態を踏まえ、消費者の誤認を排除する方策を検討すべきであると提言していることから、今後、広告主のステマ行為そのものを景品表示法により規制する方向にシフトしていることが読み取れます。
広告主の責任によるアフィリエイト広告管理で不十分な場合は、景品表示法改正も
現時点では、広告主が責任をもってアフィリエイト広告を管理することにより、不当表示となるアフィリエイト広告を防止できるとして、景品表示法の改正を見送りました。
しかし、例えば、アフィリエイターが広告主の指示や表示内容のレギュレーションを超えて問題のある表示を行うなどの問題行為が多発した場合は、景品表示法を改正して、供給主体又は責任主体の位置付けの見直し等を検討すべきとしています。
アフィリエイト広告等に関する検討会(消費者庁)https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/meeting_materials/review_meeting_003/
アフィリエイト広告等に関する検討会 報告書(2022年2月15日)https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/meeting_materials/review_meeting_003/assets/representation_cms216_220215_01.pdf
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《参考記事》
・アフィリエイトに加えてインスタ投稿が違反対象表示に。アクガレージとアシストの豊胸サプリに景表法措置命令(消費者庁 2021年11月9日)
・令和3年8月施行の改正薬機法で新設の課徴金制度、アフィリエイトは課徴金の対象になるのか?
・令和3年度、アフィリエイト広告の適正化に向けた本格的な法執行へ
・T.Sコーポレーション男性用育毛剤のアフィリエイト広告に、消費者庁による初の景表法措置命令 (消費者庁 2021年3月3日)
・シミ消し化粧品のアフィリエイト広告に、初の消費者安全法による注意喚起 (消費者庁 2021年3月1日)
・健康食品「肝パワーEプラス」の記事態広告アフィリエイトで薬機法違反。広告主、広告代理店、制作会社社員が同時逮捕
・消費者庁も注目!口コミ・インフルエンサーマーケティングの消費トラブルと業界自主規制(第30回インターネット消費者取引連絡会(平成30年9月))
・口コミ・インフルエンサーマーケティングの法規制(第30回インターネット消費者取引連絡会(平成30年9月))
・「口コミ・インフルエンサーマーケティング」に求められるコンプライアンスとは
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