機能性表示食品広告48件中7件に違反の恐れあり。事後チェック指針への適合性は次回審査以降に (日健栄協 第3回機能性表示食品広告審査会)

2015 年4月に発足した機能性表示食品制度。
制度施行から6年を経た2021年4月末現在の届出件数は、4,001件と拡大を続けています。

機能性表示食品の広告表示の適正化に向けて、事業者団体の取組みとして、健康食品産業協議会と日本通信販売協会が「『機能性表示食品』適正広告自主基準」(※2)を2016年4月公表しています。
また、消費者庁では不適切な表示に対する事業者の予見可能性を高め、事業者による自主点検や業界団体による自主規制等の取組を円滑にする目的で、機能性表示食品の事後チェック指針(※3)の運用を2020年4月から始めています。

機能性表示食品の広告表示に関しては、2017 年に葛の花由来イソフラボンを機能性関与成分とした機能性表示食品の販売事業者16社に対し 景品表示法に基づく初の措置命令が出されましたが、その後の処分は2020年度までは出されていません。

・「葛の花」16社に、機能性表示食品で初の景表法措置命令。届出内容と表示の整合性
(消費者庁:平成29年11月7日)

そんな中、2013年度より「特定保健用食品広告審査会」を実施してきた公益財団法人 日本健康・栄養食品協会(日健栄協)では、2018年度より機能性表示食品の広告の適正化と向上を図ることを目的として「機能性表示食品広告審査会」を年1回開催しています。
今回、第3回審査会2020年11月に実施し、2021年1月28日に審査結果を公表しています。
審査した48件の広告中7件で、審査指針に抵触するおそれがあると判定しました。


審査対象は、同協会会員企業が出稿した広告。
健康増進法等の関連法規、「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(※1)および「『機能性表示食品』適正広告自主基準」(※2)を審査指針として、審査対象広告について、当該機能性表示食品の「届出表示」及び審査指針との適合性の観点から審査されています。
審査委員会は、外部専門家(第三者委員)4名と協会会員企業のメンバーで構成された広告部会の代表(企業委員)3 名で構成されています。

【日時】2020年11月27日(金) 13時00分~17時00分

【審査対象広告】
収集対象:2020年3月1日~同年5月31日(3ヶ月間)出稿分
収集方法:協会会員企業に提供依頼
収集件数:48件 (内訳:テレビ22件、新聞13件、雑誌1件、Web (LP) 12件)

【審査結果】
TV:22件中「C」判定(1件)
新聞:13件中「C」判定(3件)
Web(LP):12件中「C」判定(3件)
会社数と商品数:「C」判定(4社5商品)

「A」判定:0件
・健康増進法等に抵触するもの、もしくは抵触するおそれのあるもの。
・消費者庁の「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」)に著しく抵触(*)するもの。(*)著しく抵触:1つの広告の中に抵触する箇所が複数ある。
・虚偽、機能性表示食品の届出範囲を超える表現など「『機能性表示品』適正広告自主基準」に著しく抵触するもの。

「B」判定:0件
・「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」に抵触するもの。
・「『機能性表示品』適正広告自主基準」に抵触するもの。

「C」判定:7件
・「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」に抵触するおそれのあるもの。
・「『機能性表示品』適正広告自主基準」に抵触するおそれのあるもの。
・消費者に誤認を与えるおそれのあるもの。

機能性表示食品広告審査会では、届出表示のエビデンスの妥当性の確認については今後の課題としています。
また、2020年4月1日より運用開始された機能性表示食品の事後チェック指針(※3)については、指針公表前に出稿された広告が含まれるため、今回の審査においては適合性を考慮していないものの、今後の審査会では審査指針に含めるとしています。

前回の第2回審査会では、19社36商品中、「B」判定(2社3商品)、「C」判定(5社8商品)でした。今回は16社45商品中、「C」判定(4社5商品)で改善が見られますが、そもそも協会会員企業に提供を依頼した広告を審査しているのですから、A判定やB判定はあり得ないとも言えます。

機能性表示食品制度は、事業者の責任において、科学的根拠に応じた多岐にわたる機能性訴求が可能となる反面、多様な機能性を誤認なく適切に消費者に伝える必要があります。
事業者の裁量が大きい分、消費者にとってわかりやすい広告・表示が一層求められています。

(※1)
●健康⾷品に関する景品表⽰法及び健康増進法上の留意事項について(要約版)
(パンフレット:消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/160630premiums_9.pdf

●健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について
(全部改定 平成 28 年6月 30 日 消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/160630premiums_8.pdf

(※2)
「『機能性表示食品』適正広告自主基準」
((一社)健康食品産業協議会 (公財)日本通信販売協会 2016年4月)
https://www.jadma.or.jp/pdf/criteria_for_advertise.pdf

(※3)
「機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく事後的規制(事後チェック)の 透明性の確保等に関する指針」(事後チェック指針)の策定について
(2020年3月24日 消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/about_foods_with_function_claims/pdf/about_foods_with_function_claims_200324_0001.pdf

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機能性表示食品広告審査会の設置について
http://www.jhnfa.org/k11-1.pdf

第3回 機能性表示食品広告審査会(2020年11月27日実施) 審査結果
(2021年1月28日 公益財団法人 日本健康・栄養食品協会)
https://www.jhnfa.org/kinou11.html
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≪関連記事≫
・機能性表示食品広告44件中12件に違反の恐れあり。届出表示のエビデンスの妥当性確認は今後の課題(日健栄協 第2回機能性表示食品広告審査会)

・機能性表示食品 届出表示のエビデンスの妥当性 「客観的評価機関」としての公正競争規約に期待

・機能性表示食品の事後チェック指針案のパブコメ開始! 指針に対する消費者庁の思惑は?(消費者庁 2020年1月16日:公表)

・機能性表示食品の広告規制の透明化。消費者庁「事後チェック指針」公表へ

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。