消費者意識、4人に3人が表示確認を心掛け、現物を見て購入する人は68%(令和元年度 消費者意識基本調査)

消費者の意識や行動、トラブル経験を理解することは、事業者においてマクロな視点でのマーケティング活動の指針を得ることにつながります。

消費者庁では、消費者問題の現状や求められる政策ニーズを把握し、消費者政策の企画立案にいかすことを目的に、平成24年度より「消費者意識基本調査」を実施しています。
本ブログでは2回に分けて、令和元年度調査をご紹介します。
前編では、日頃の消費生活での意識や行動、消費者事故・トラブルの経験、申し出行動、後編では、食品の表示に関する項目をピックアップしてご紹介します。

前編:
●消費者として心掛けている行動
●日頃の買物で意識していること
●消費行動について
●購入商品や利用サービスでの消費者被害の経験
●被害を受けた商品・サービス
●被害を受けた商品・サービスの販売・購入形態
●被害を受けた商品・サービスについての相談又は申し出の有無
●被害を受けた商品・サービスについての相談又は申し出をした相手


●表示確認は4人に3人、個人情報の管理6割超、環境配慮は5割超が意識
消費者として心掛けている行動について、「心掛けている(『かなり心掛けている』+『ある程度心掛けている』)の割合でみた。
「表示や説明を十分確認し、その内容を理解した上で商品やサービスを選択する」が最も高く76.1%で、次いで「個人情報の管理について理解し、適切な行動をとる」(65.3%)、「環境に配慮した商品やサービスを選択する」(56.9%)、「商品やサービスについて問題があれば、事業者に申立てを行う」(49.2%)。
前回調査比では、全体に減少傾向で、「環境に配慮した商品やサービスを選択する」(59.3%→56.9%)が2.4ポイント、「表示や説明を十分確認し、その内容を理解した上で商品やサービスを選択する」(77.9%→76.1%)が1.8ポイント、「商品やサービスについて問題があれば、事業者に申立てを行う」(50.8%→49.2%)が1.6ポイント減少した。

●買い物で意識しているのは、プラスチックごみの削減やリサイクル
日頃の買物について、「意識している(『かなり意識している』+『ある程度意識している』)の割合が高い順に、「弁当・総菜などを購入するときに不要なフォーク・スプーンをもらわない」が最も高く63.5%、次いで「ごみを減らし、再利用やリサイクルを行う」(63.4%)、「レジ袋をもらわない」(56.2%)の順。
一方、「意識していない(『あまり意識していない』+『ほとんど・全く意識していない』)」の割合が高い順にみると、「フェアトレード商品を選ぶ」が最も高く49.8%、次いで「社会貢献活動に熱心な企業のものを選ぶ」(45.4%)、「リサイクル素材でできた商品(再生紙など)を選ぶ」(32.3%)の順。

●「実際に現物を見て購入」が68%。「お買い得商品購入」は64%
消費行動について、「当てはまる(『かなり当てはまる』+『ある程度当てはまる』)の割合が高い順に、「実際に現物を見て商品を確認してから買う」が最も高く67.6%、次いで「値
下げされた『お買い得商品』を買うほうだ」(64.0%)、「買物が好き」(58.6%)の順。
一方、「当てはまらない(『あまり当てはまらない』+『ほとんど・全く当てはまらない』)」の割合が高い順にみると、「タイムセールをよく利用する」が44.9%と最も高く、次いで「衝動買いをするほうだ」(37.4%)、「まとめ買いをする」(34.9%)の順。

●商品や利用したサービスに対する期待や表示・広告とのギャップに被害意識
この1年間に購入した商品や利用したサービスについて、消費者被害の経験をした人の割合が高い内容は、「商品の機能・品質やサービスの質が期待よりかなり劣っていた」7.4%、次いで「表示・広告と実際の商品・サービスの内容がかなり違っていた」(5.4%)。
前回調査と比較して、「ある」の割合は「表示・広告と実際の商品・サービスの内容がかなり違っていた」(3.8%→5.4%)が1.6ポイント、「思っていたよりかなり高い金額を請求された」(1.8%→2.9%)が1.1ポイント、それぞれ増加。

●被害を受けた最多商品「食料品」、最多サービス「放送・通信」。「外食・食事宅配」も増加
被害事例数650件のうち「商品に関するもの」の品目では、「食料品(外食や出前は除く。)」が16.2%と最も高く、次いで「住居品(洗濯機、ミシン、掃除機、洗剤、冷暖房機器、カーテン、照明器具、消火器等)」が8.6%、「衣料品(洋服、下着等)」(7.7%)、「保健衛生品(薬、メガネ、電気治療器、化粧品、シャンプー、美容器具、殺虫剤、ちり紙等)」(7.4%)の順となっている。
前回調査と比較して、「食料品(外食や出前は除く。)」(9.3%→16.2%)が6.9ポイント増加。
「サービスに関するもの」の品目では、「放送・通信(テレビ、電話、インターネット等)」が最も高く9.4%、次いで「外食・食事宅配」(5.7%)、「保健サービス(病院、マッサージ、脱毛、美容院、エステ、サウナ等)」(2.8%)の順となっている。
前回調査と比較して、「外食・食事宅配」(2.7%→5.7%)が3.0ポイント増加。

●被害を受けた販売形態、「通信販売」41.7%、5.2ポイント減少
被害事例数650件を販売・購入形態別に分けたところ、「通信販売(インターネット取引を含む。)」の割合が最も高く41.7%、次いで「店舗」(38.2%)となっている。
前回の調査結果と比較して、「通信販売(インターネット取引を含む。)」(46.9%→41.7%)が5.2ポイント減少、「店舗」(35.5%→38.2%)が2.7ポイント増加している。

●トラブル経験者の内、「相談・申出」した人は45%
相談又は申し出の有無別では、「した」の割合が 44.8%、「誰にもしていない」が45.4%となっている。
前回の調査結果と比較して、「相談又は申出を『した』」(50.8%→44.8%)が6.0ポイント減少。

●トラブル「相談・申出」先トップは「家族、知人、同僚等の身近な人」。「販売店、代理店等」は減少
相談又は申出をした被害事例(291件)について、「相談又は申し出をした相手」は、「家族、知人、同僚等の身近な人」の割合が43.6%と最も高く、次いで「商品やサービスの提供元であるメーカー等の事業者」(37.5%)、「商品・サービスの勧誘や販売を行う販売店、代理店等」(28.2%)の順となっている。
「市区町村や消費生活センター等の行政機関の相談窓口」の割合は8.6%にとどまる。
前回の調査結果と比較してみると、「家族、知人、同僚等の身近な人」(34.6%→43.6%)が9.0ポイント増加、「販売店、代理店等」(40.6%→28.2%)が12.4ポイント減少。

消費行動において「実際に現物を見て商品を確認してから買う」が当てはまる人が68%となっていました。
また、「まとめ買いをする」については32%でした。

この調査の調査時期は昨年11月なのですが、今年の3月以降のコロナ禍の影響で、ネット通販利用が拡大したことや、買い物回数を減らすために「まとめ買い」をするようになったことなどが、消費者意識として令和2年度調査にどのように表れてくるのか気になります。

消費者として心掛けている行動としては、4人に3人の消費者が表示確認を心掛ける中、消費者被害の経験では、商品や利用したサービスに対する期待や表示・広告とのギャップに被害意識を持つ人の割合が高い状況が続いています。
また、トラブルを受けたとする消費者のうち、「相談・申出」を行ったのは45%で減少傾向でした。その「相談・申出」先は「家族、知人、同僚等の身近な人」が大きく増加する半面、「販売店、代理店等」は大きく減少しました。

これは、「販売店、代理店等」に対する消費者の信頼が低下していることを示しているのかもしれません。
直接消費者に接する事業者の消費者対応は、トラブルの時ほど消費者に寄り添うものであってほしいと思います。

(※)
消費者意識基本調査(消費者庁 令和元年度実施)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/research_report/survey_002/
調 査 項 目
(1)「生活全般や消費生活における意識や行動」について
(2)「食品をめぐる意識や取組」について
(3)「消費者事故・トラブル」について
(4)「食品の表示」について
(5)「消費者契約」について
(6)「消費者政策への評価」について
調査対象
母集団:全国の満 15 歳以上の日本国籍を有する者
標本数:10,000 人
地点数:400 地点(389 市区町村)
抽出法:層化2段無作為抽出法
調査時期  令和元年11月7日~11月30日
調査方法  訪問留置・訪問回収法
有効回収数(率):6,173人(61.7%)

≪関連記事≫

・8割の消費者が表示確認を心掛け、約6割が「偽装・誇大表示」に高い関心(平成30年度 消費者意識基本調査)

・「クーリング・オフ制度」の認知度9割。「特定適格消費者団体」の認知度は13%(平成28年度 消費者意識基本調査)

・消費生活の心がけ「表示や説明の確認」74%、「個人情報管理」57%。約9割が個人情報漏えい不安 (平成25年度 消費者意識基本調査)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。