2019年12月26日の(株)TOLUTO、(株)アクアに続いて、健康食品のネット通販の「定期購入」契約に関する表示に対する特定商取引法違反処分が出されています。
消費者庁は、2020年1月22日、健康食品(ダイエットサプリメント)等を販売する通販事業者の(株)GRACE(グレース)(本店所在地:東京都新宿区)に対し、特定商取引法違反の指示を行いました。
TOLUTOでは3カ月間の業務停止命令、アクアは指示処分でした。
・ネット通販定期購入の表示に特商法での処分 (株)TOLUTOと前代表取締役等に業務停止命令(2019年12月26日)
・(株)アクア ネット通販定期購入の最終申込ボタン表示に特商法で指示処分(2019年12月26日)
処分が続く「定期購入」契約に関する表示の、違反内容を確認します。
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特定商取引法違反の通信販売業者に対する指示について
(消費者庁 2020年1月22日)
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_transaction_cms202_200122_01.pdf
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【事業概要】
取扱商品:「麹の贅沢生酵素」と称する健康食品(ダイエットサプリメント)等
取引類型:通信販売 ウェブサイト「emichil store」
代表者:代表取締役 江頭 竜輔
【処分の内容】
指示
1. 定期購入契約の申し込みとなる操作が、契約の申込みとなることを、顧客がその操作を行う際に容易に認識できるように、直ちに「麹の贅沢生酵素」と称するダイエットサプリメントに係る表示を是正すること。
2. 今回の違反行為の発生原因について調査分析の上検証し、その検証結果を踏まえて違反行為の再発防止策及び社内のコンプライアンス体制を構築すること。
3. その検証結果、再発防止策及びコンプライアンス体制について2020年2月21日までに報告すること。
4. 2020年1月21日以降通信販売を継続するときは、同社の行う通信販売に係る表示について、特定商取引法の各規定を遵守すること。
【認定した違反行為】
同社は、次のとおり、特定商取引法の規定に違反する行為をしており、通信販売に係る取引の公正及び購入者の利益が害されるおそれがあると認められた。
顧客の意に反して通信販売に係る売買契約の申込みをさせようとする行為
(特定商取引法第14条第1項第2号の規定に基づく施行規則第16条第1項第1号)
「初回完全無料贅沢コース」
購入者に商品を1か月に1回の頻度で継続して引き渡し、代金を支払わせる定期購入契約の申し込み最終段階の画面上において、
申込みを完了させるためにクリック又はタップの操作をさせるボタンに「初回完全無料の贅沢コースに参加する」と表示していた。
→
当該操作が定期購入契約の申し込みとなることを、容易に認識できるように表示していなかった。
【表示例1】
(消費者庁の公表資料から抜粋)
「贅沢おまとめコース」
購入者に商品を3か月に1回の頻度で継続して引き渡し、代金を支払わせる定期購入契約の申し込み最終段階の画面上において、
申込みを完了させるためにクリック又はタップの操作をさせるボタンに「購入完了ページへ」と表示していた。
→
当該操作が定期購入契約の申し込みとなることを、容易に認識できるように表示していなかった。
【表示例2】
(消費者庁の公表資料から抜粋)
同じ指示処分となったアクアの事案と同様、「定期購入であること」「支払総額」「契約期間」などの販売条件は容易に確認できるように記載されていましたが、定期購入コースの最終申し込みボタンの文言が、そのボタンの押下で契約の申し込みとなることが認識しづらい表示とみなされ指示処分となりました。
「初回完全無料の贅沢コース」については、最終申込画面上の注文内容の確認・訂正の表示と最終申し込みボタンの間に、「贅沢おまとめコース」の説明も挿入されており、誤認されやすくなっていると言えます。
「贅沢おまとめコース」については、最終確認画面の表示が「ご入力内容のご確認」となっていること、ページ上部の説明文が「下記ご注文内容で送信してもよろしいでしょうか。よろしければ一番下の「ご注文完了ページへ」ボタンをクリックしてください。」といった記載などから、サイトを総合的にみて、このページが最終確認画面であり、「購入完了ページへ」のボタン押下が契約の申し込みとなることが認識しづらいと判断されたのでは、と推測します。
消費者の誤認を避けるために、申し込み手続き画面の遷移はシンプルに、最終申し込みボタンの文言は、「この内容で注文する」といったダイレクトな文言が求められます。
報道では、
全国の消費生活センターなどに2018年4月~19年12月、同社に関する相談が4779件寄せられた。
と報じています。
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通販のGRACEに是正指示 ネット申し込みで特商法違反
(共同通信 2020年1月22日)
https://www.47news.jp/news/4443820.html
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消費者庁が公表した改正ガイドラインによると、有料の申込みとなることの表示(施行規則第16条第1項第1号)について以下のように解説しています。
【適切な表示例】
例1:最終確認画面が表示される場合
「注文内容の確認」といった表題の画面(いわゆる最終確認画面)が必ず表示され、その画面上で「この内容で注文する」といった表示のあるボタンをクリックしてはじめて申込みになる場合。
例2:最終確認画面がない場合
以下のような措置が講じられ、最終的な申込みの操作となることが明示されている場合。
・最終的な申込みにあたるボタンのテキストに「私は上記の商品を購入(注文、申込み)します」と表示されている。
・最終的な申込みにあたるボタンに近接して「購入(注文、申込み)しますか」との表示があり、ボタンのテキストに「はい」と表示されている。
【不適切な表示例】
例3:不適切な最終申し込みボタン(「申込み」であること不明瞭)
最終的な申込みにあたるボタン上では、「購入(注文、申込み)」などといった用語ではなく、「送信」などの用語で表示がされており、また、画面上の他の部分でも「申込み」であることを明らかにする表示がない場合。
例4:不適切な最終申し込みボタン(「有償契約の申込み」であること不明瞭)
最終的な申込みにあたるボタンに近接して「プレゼント」と表示されているなど、有償契約の申込みではないとの誤解を招くような表示がなされている場合。
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インターネット通販における
「意に反して契約の申込みをさせようとする行為」に係るガイドライン
(消費者庁 平成29年11月1日)
https://www.no-trouble.caa.go.jp/pdf/20171228ac01.pdf
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通販の定期購入契約トラブルが増加する中、取り締まりは、今後、一層強化される見込みです。
購入手続き画面表示のOK、NG具体例など、以下の記事も併せてご確認ください。
・通販の定期購入契約、購入手続き画面表示の具体例を解説(特定商取引に関する法律施行規則改正(平成29年12月1日施行))
・国セン3度目の注意喚起。監視強化必至の通販定期購入の注意点とは
・消費者保護の更なる強化。特商法・消契法の改正案閣議決定(平成28年3月4日)
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