2017年度の国民生活センターと全国の消費生活センター等に寄せられた「お試し価格からの定期購入」に対するトラブルが18,497件と、2016年度(14,320件)に引き続き増加する中(※)、適格消費者団体による差止請求の動きが活発です。
(※)
2017年度のPIO-NETにみる消費生活相談の概要(国民生活センター 2018年8月8日)
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20180808_1.html
「サン・クロレラ販売訴訟」を起こした適格消費者団体の「京都消費者契約ネットワーク(KCCN)」が、今回は、(株)ラッシャーマンに対して健康食品販売サイトの定期購入の表示の差し止めを求めた訴訟で、2018年11月13日に和解が成立したと発表しました。
経緯は以下の通りです。
・2017年11月28日、KCCNはラッシャーマンに対して、問題表示の差止請求を行った。
・それに対して同社は、12月5日に該当表示の削除、改訂および、数回の購入継続が条件となる商品販売形態を変更し、いつでも解約可能な定期購入としていく旨の回答書を送った。
・12月15日、KCCNは、改訂後の表示についても有利誤認となる表示であると判断し、差止請求訴訟を京都地方裁判所に提起。
・訴訟提起後、ラッシャーマンは、その販売方法を複数回の購入を条件とせず、いつでも解約可能な形態へと変更したことから、2018年11月13日に本件訴訟について和解成立。
ラッシャーマンと同時期に(株)ART OF LIFEに対しても、同様の定期購入表示の差し止め請求と訴訟提起が行われていましたが、2018年3月20日に勝訴的和解が発表されています。
ラッシャーマンの事案は、ART OF LIFEの事案から約8か月遅れての和解となっています。
表示の差し止めを求めた内容を確認します。
表示媒体:
(株)ラッシャーマンウェブサイト
対象商品:
「「DCC(ディープチェンジクレアチン)」」
問題となる表示:
対象となる商品を複数回の購入を条件とする定期購入で販売する場合に「初回実質無料 送料560円(税込み)のみ」「95%OFF送料無料560円(税込)」等と表示し、対象となる商品を560円で購入可能であるかのように示す表示。
法律上の問題点:
有利誤認(景品表示法30条1項2号)に該当する。
(1) 取引条件について著しく有利な表示をしていること
・本件商品を「定期便「メガ得コース」で購入した場合、最低4回の継続購入及び、2回目以降は7840円での購入が契約内容となっているにもかかわらず、同社ウェブサイトの記載では、560円で試しに購入することが可能であるかのように表示されている。
・「いますぐ試してみる」という言葉を用いていることからも、同社は、本件商品を「1度だけ試す」というイメージを消費者に与えている。
・継続購入を契約条件として附帯させる場合には、1回だけ試してみるということが、そもそもできない。
・4回継続購入した場合の総額を4で除すれば、本件商品の単価は6020円であるから、初回購入が560円の負担のみで可能であるかのような表示自体が虚偽である。
(2) 「誤認される表示」に該当すること
・同社ウェブサイトの冒頭で「初回実質無料」「送料560円(税込)のみ」と表示し、その直下に購入者情報の入力画面に進むためのハイパーリンクが貼ってある。
・「初回実質無料」の表示の近くに「お得な定期コースは4回以上のご利用をお約束頂くコースとなっております。詳しくは下記の「メガ得コースについて」を確認ください。」と記載されてはいるものの「実質無料」の表示よりも極めて小さいポイント記載されており、明らかに消費者の目にとまりにくい。
・消費者は、定期購入に関する事項を見る前に購入手続に進む可能性が高い。
・2017年1月1日から同年9月24日までに、国民生活センターに「ラッシャーマン」に関し寄せられた苦情・相談は842事例であり、内容の回答のあった100件のうち、そのほとんどが消費者に覚えの無い定期購入の苦情・相談であった。
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健康食品関連 申し入れ・差止請求 株式会社ラッシャーマン
(京都消費者契約ネットワーク(KCCN))
http://kccn.jp/mousiir-kenkoushokuhin.html#mousiir-laver-lashaman
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適格消費者団体による「定期購入」広告に関する差止請求の過去の事案には、以下のものがあります。
・健康食品関連 申し入れ・差止請求 株式会社ART OF LIFE
(京都消費者契約ネットワーク(KCCN))
http://kccn.jp/mousiir-kenkoushokuhin.html#mousiir-laver-artoflife
・(合)BRONXに勝訴的和解。続く、「お試し価格からの定期購入」に対する適格消費者団体の差止請求 (京都消費者契約ネットワーク 平成29年6月2日和解)
・モイスト「定期購入」広告、適格消費者団体の指摘で改善(平成29年6月13日)
定期購入トラブルが終息するまで、適格消費者団体による消費者保護の活動は続けられるでしょう。通販の定期購入契約のポイントを再度チェックしておきましょう。
・通販の定期購入契約、購入手続き画面表示の具体例を解説
(特定商取引に関する法律施行規則改正(平成29年12月1日施行))
・お試し価格を設定して定期購入契約を行う際の注意ポイント
「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」改訂(経済産業省 平成29年6月)
≪関連記事≫
・適格消費者団体、「しじみ習慣」に5回の表示改善申入れ。2年半で協議終了
・クロレラ訴訟と消費者契約法改正の行方。「適格消費者団体」とは?
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