4年目に入った機能性表示食品制度品質管理の課題とは(1)。届出後における品質分析実施状況(届出資料編)

機能性表示食品制度開始から4年目となり、届出公表件数は1,000 件を大きく超えています。
機能性表示食品は、トクホや特別用途食品のような許可制ではなく、国の事後チェックを前提とした制度であることから、消費者庁ではこれまで「機能性関与成分の分析方法の検証」「機能性表示食品の買上調査」等を行ってきました。

平成30年8月には、『平成29年度機能性表示食品の届出後における分析実施状況及び健康被害の情報収集等に関する調査・検証事業報告書』を公表。
この事業は、以下を目的に実施されています。

1.届出食品が機能性表示食品としての一定の品質を確保していることを示す届出者による届出後の取組の状況を明らかにすること
2.届出者が健康被害情報を適切に収集・評価し、消費者庁への報告を行うためにガイドラインに示すべき内容を検討するための基礎資料を得ること

上記目的に対して以下の検証項目が設定され、それぞれの検証項目について有識者によるワーキンググループを設置し、議論がなされています。
1) 届出後の分析の実施に関する届出内容の整理と、実際の分析実施状況及びその公開状況の把握
①届出資料別紙様式(Ⅲ)-3の記載内容の分析
②届出者を対象としたアンケート調査による、届出後の分析実施状況の把握
③届出者を対象としたアンケート調査による、届出後の分析実施に係る公開状況の把握
2) 機能性表示食品の健康被害の情報収集・評価・消費者庁への報告手順及び報告基準の検討
①届出者を対象としたアンケート調査による、健康被害情報の収集状況の把握
②届出者を対象とした調書調査による、健康被害情報の重篤度及び因果関係の判定と、消費者庁への報告に関する実態の把握
③届出者が実際に利用している健康被害情報の収集フォーマット及び健康被害事例の収集による、健康被害情報の収集の方法に係る実態の把握

本ブログでは、各検証項目の内容を順次一部抜粋して紹介します。
今回は「1)~①届出資料別紙様式(Ⅲ)-3の記載内容の分析」について取り上げます。


【届出資料の整理結果】
●機能性表示食品の届出状況
平成29 年9月30 日までに届け出られた機能性表示食品(撤回されたものを除く。)1,124 件。
食品形態別の届出件数は、加工食品(サプリメント形状)が518 件(46.1%)、加工食品(その他)が597 件(53.1%)、生鮮食品が9件(0.8%)であった。

●機能性関与成分の定量・定性分析(別紙様式(Ⅲ)-3(4))の記載
・機能性関与成分の分析については、1,124件中1,120件(99.6%)の届出資料で掲載されていた。
・記載がなかった4件のうち、分析手法について記載がなく、成分名のみ記載されている届出は3件、いずれも記載がない届出が1件。

●安全性を担保する必要がある成分(別紙様式(Ⅲ)-3(4))の記載
・分析を行う成分名について記載がある届出は1,124 件中49 件(4.4%)。
・分析手法について記載がある届出は 1,124 件中 49 件(4.4%)。
・成分名の記載があるにもかかわらず分析手法が記載されていない届出が1件。
・分析手法が記載されているにもかかわらず成分名の記載がない届出が1件。
・食品形態別にみると、加工食品(サプリメント形状)は518 件中46 件(8.9%)、加工食品(その他)は597 件中3件(0.5%)が分析を行う成分名を記載していた。生鮮食品9件のうち分析を行う成分名を記載している届出はなかった。

【機能性表示食品制度における品質管理の課題】
記載内容のばらつき
・届出資料別紙様式(Ⅲ)-3の記載内容を整理した結果、同じ内容であっても届出者によって表記方法の差が見られた。同じ分析手法でも表記の違いが散見された。
・分析手法として、公定法や国際基準法といった一般的に認められた分析手法や業界団体の規格を挙げている届出も存在した。
・届出資料の中には、分析手法、崩壊性試験方法、基原について、第三者が確認することが困難なものも見られた。

「分析方法を示す資料」は届出時に消費者庁に提出されてはいるが、非公開資料であるため、第三者が分析手法を確認することはできない(平成30年3月30日時点)。
機能性表示食品の品質管理に対する消費者の信頼を確保するためには、届出資料の記載内容を基に、第三者がその適切性を判断できるよう、可能な限り詳細な情報を開示することが望ましい。
ガイドライン改訂版(平成30年3月28日改訂)では、「定性試験及び定量試験の分析方法を示す資料は、第三者機関において分析ができることが前提となる。」と追記され、詳細な分析方法・手順の開示が求められることとなった。本規定はガイドライン改正前に届出された食品にも適用されるため、本規定に基づき情報公開が進められることで、届出後の分析実施に関する消費者の信頼が高まることが期待される。

次回は、「②届出者を対象としたアンケート調査による、届出後の分析実施状況の把握」について取り上げます。

(※)
平成29年度機能性表示食品の届出後における分析実施状況及び健康被害の情報収集等に関する調査・検証事業報告書 (消費者庁  平成30年3月)https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/research/2017/pdf/information_research_2017_180822_0001.pdf

≪関連記事≫
・3年目に入った機能性表示食品制度最新動向。消費者庁の体制も本格化(消費者庁 平成28年度:機能性表示食品制度の施行状況について)

・健康食品の品質管理と健食ビジネス戦略 (消費者庁 平成27年度:機能性表示食品制度における機能性に関する科学的根拠の検証)

・機能性表示食品制度開始から1年。今後の制度運用動向 (消費者庁:平成28年1月)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。