「葛の花」16社、特定適格消費者団体から返金申し入れ。課徴金だけじゃない被害回復裁判リスク!(消費者支援機構関西 22018年3月5日)

2017年11月7日に「葛の花由来イソフラボン」を含む機能性表示食品(葛の花)で景品表示法に基づく措置命令の一斉処分を受けた16社に対し、特定適格消費者団体が、消費者契約法上の不実告知に該当するものとして、2018年3月5日、消費者への返金対応を求める申し入れを行っています。
16社のうち9社に対しては、2018年1月19日に、景品表示法に基づく課徴金納付命令も出されています。
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「葛の花由来イソフラボン」を配合した機能性表示食品の販売業者16社に対し、消費者が希望する場合は、返金等を行うよう申入れを行いました。
(特定非営利活動法人 消費者支援機構関西 2018年3月9日)
http://www.kc-s.or.jp/detail.php?n_id=10000723
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景品表示法の優良誤認表示や有利誤認表示を理由に措置命令や課徴金納付命令を受けた事案は、消費者契約法の取消対象となる「勧誘」に該当するとみなされた場合、消費者契約法の「不実告知」として、特定適格消費者団体から被害の回復を求める訴訟を受ける可能性があります。

今回、特定適格消費者団体である消費者支援機構関西(=KC’s)が行った申入れ内容と、特定適格消費者団体の被害回復制度の事業リスクについて確認します。

《申し入れの経緯と内容》
●消費者庁の措置命令
2017年11月7日、消費者庁は、葛の花由来イソフラボンを機能性関与成分として痩身効果を標ぼうする機能性表示食品を販売していた業者16社に対し、景品表示法措置命令(優良誤認)を行った。

●KC’sが16社に「お問い合わせ」文書を送付
2017年12月19日、16社が標榜していた痩身効果については、消費者契約法上の不実告知に該当するものとして、KC’sは、販売数量や、商品を購入した消費者に返金する意思があるかについての回答を求める、「お問い合わせ」文書を送付した。

●消費者が希望する場合は、返金を行うよう申入れ
2018年3月5日、「お問い合わせ」に対する16社からの回答を踏まえ、KC’sは、16社に対し、「申入書兼要請書」として申入れを行った。

申し入れ内容:
(1)措置命令の対象となった表示により対象商品を購入した消費者に対して
①返金を求めることができる旨の通知をするとともに、消費者からの返金申し出に応じること。
②消費者の負担が少ない返金方法を提供すること。
(2)KC’sに対し(1)についての返金の実施状況について定期的に報告すること。

《被害回復制度の事業リスク》
●景品表示法の不当表示と消費者契約法の不実告知
「サン・クロレラ販売訴訟」の最高裁判決において、不特定多数の消費者に向けた広告も、消費者契約法の取消対象となる「勧誘」に該当するという判断が示されました。
チラシやウェブサイトの商品紹介ページといった広告について、景品表示法の禁止する不当表示と認定された場合、消費者契約法の不実告知(重要事項について事実と異なることを言う)に該当する可能性があります。

●特定適格消費者団体による被害回復制度
事業者が広告等に不実告知を行った場合には、特定適格消費者団体から、消費者被害を集団的に回復するための「被害回復裁判手続」を受けるリスクが発生します。
「被害回復裁判手続」は、二段階型の消費者団体訴訟制度で、適格消費者団体の中から内閣総理大臣が新たに認定した特定適格消費者団体が、消費者に代わって被害の集団的な回復を求めることができる制度です。
(平成25年12月11日に「消費者裁判手続特例法(正式名称:消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例法)」により創設され、被害回復の制度が平成28年10月1日から施行)

第1段階の訴訟では、多くの消費者が不実告知によって誤認をし、契約の申込みまたはその承諾の意思表示をしたということを理由に、その意思表示の取消しに伴う既払代金の返還請求に対する事業者側の責任を確定するための提訴を受け、勝訴判決や和解によって事業者側の責任が確定した場合、
第2段階の訴訟で、個別の消費者の債権を確定する手続きを経て、特定適格消費者団体に届出を行った消費者に対して事業者が金銭を支払う義務を負うことになります。

【消費者裁判手続特例法による新訴訟制度の概要】


不当な勧誘や契約条項などによる消費者トラブルに遭ったら
「消費者団体訴訟制度」の活用を!(政府広報オンライン)

今回の「葛の花」の16社に対するKC’sの申し入れは、被害回復裁判の提訴の前段階と予測されます。
事業者は景表法の措置命令や課徴金だけでなく、消費者団体訴訟として被害回復裁判の訴えが提起され、消費者契約の申込みや承諾の意思表示の取消しに伴う既払代金の返還請求を受けるリスクも視野に入れる必要がありそうです。
景品表示法の課徴金制度においては、不当な表示により消費者に生じた被害の回復を促進する目的から、同法の定める「返金措置」を実施した場合に課徴金額を減額することとされています。
事業者は、優良誤認表示や不実告知に該当することを認識した場合、景表法所定の手続に沿って「返金措置」を実施し、被害回復裁判の訴えが提起されることを回避するとともに課徴金の減額を試みるということも選択肢として検討すべきかもしれません。

行政処分や提訴に伴うレピュテーションリスクも考慮すると、今後ますます、広告表示の適正管理体制が求められます。

<関連記事>
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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。