2017年9月1日施行の、新たな加工食品の原料原産地表示制度への移行に向けたマーケティング対応について考えるシリーズ。
第2回は、加工食品の生産・流通の現状と、消費者の国産食材志向の傾向についてデータで確認してみます。
第1回では、新たな食品表示基準に対する、食品製造業者の対応状況をご紹介しました。
新たな原料原産地表示では、一番多い原材料の産地を国別重量順で表示することを原則としつつも、それが困難な場合には「又は」表示、大括り表示といった「可能性表示」が認められています。
食品製造業者の対応状況の調査では、売上高が小さい事業者に比して大きい事業者の方が、原料原産地表示の実施が遅れており、可能性表示を検討している割合が大きくなっていました。また、原料原産地表示の営業・販売戦略への活用にも消極的でした。
可能性表示:
原産地として使用可能性がある複数国を、使用が見込まれる重量割合の高いものから順位に「又は」でつないで表示する方法
このような状況の背景には、加工食品の原材料のグローバル調達と消費者の国産食材志向があると考えられます。
加工食品の原材料構成推移や、消費者の国産・輸入食材への意識についてデータで確認してみます。
《調査のポイント》
●飲食費における構成比、生鮮食品2割、加工食品5割、外食3割
●加工食品の原材料構成比、国産7割、輸入食3割
●食料品購入時に国産品を「気にかける」割合、8割
●国産食品は「高い」「安全」「おいしい」、輸入食品は「安い」「安全性に問題がある」
●「輸入食品より割高でも国産品を選ぶ」は64%
●加工食品の消費、生産・流通の現状
農林水産省の統計調査より、飲食費に占める加工食品の消費額、原材料の国産と輸入食材の割合を確認しました。(※1)
飲食費における生鮮食品、加工食品、外食の構成比は平成23年の支出金額ベースで、生鮮食品が2割、加工食品が5割、外食が3割程度となっており、加工食品や外食への支出が増加傾向にあります。
加工食品の原材料の国産と輸入食材の割合は平成23年の金額ベースで、国産農林水産物が7割、輸入農林水産物が1割程度、輸入加工食品は2割弱で、輸入食材が3割となっており、輸入食材割合の増加が続いています。
(※1)
平成23年(2011年)
農林漁業及び関連産業を中心とした産業連関表(飲食費のフローを含む。)
(農林水産省 平成28年3月25日公表)
「表5 飲食料の最終消費額の推移」
「表4 飲食費のフローの推移」より、加工食品を製造するために食品製造業で原材料として用いられる国産・輸入食用農林水産物、および輸入加工食品の金額を抜粋
http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sangyou_renkan_flow23/pdf/23io_kouhyo_1_1.pdf
●消費者の国産食材志向
(株)日本政策金融公庫の消費者動向調査より、食料品を購入するとき国産品かどうかをどの程度気にかけるのかを確認しました。(※2)
平成29年7月調査における食料品購入時に国産品を「気にかける」割合は79.2%。国産志向は平成26年調査以降8割程度と高い傾向が続いています。
国産食品と輸入食品に対するイメージでは、
価格面では、国産は「高い」(71.1%)、輸入品は「安い」(67.1%)。
安全面では、国産は「安全」(70.8%)、輸入品は「安全面に問題」(44.7%)。
おいしさでは、国産は「おいしい」(63.5%)、輸入品は「おいしい」(5.0%)。
見た目では、国産は「色・形がよい」(46.4%)、輸入品は「色・形がよい」(5.3%)。
国産食品は「高い」「安全」「おいしい」、輸入食品は「安い」「安全性に問題がある」という、従来からのイメージに大きな変化は生じていないという結果になりました。
「輸入食品より割高でも国産品を選ぶ」と回答した割合は63.9%。中でも「3割高を超える価格でも国産品を選ぶ」は、2割を超える水準となりました。
品目別で見ると、割高でも国産品を選ぶ割合が高いのは、米(75.4%)、野菜(69.3%)、きのこ(65.9%)。特に米については「3割高を超える価格でも国産品を選ぶ」割合が36.7%となっています。
(※2)
(株)日本政策金融公庫 平成29年度上半期消費者動向調査
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/topics_170915a.pdf
加工食品の消費が増え、その輸入食材割合の増加が続く中、規模の大きな食品製造業者の方が商品の安定供給のために複数の国から原材料を調達している現状があります。
しかしながら、消費者は、国産食品に対して、安全でおいしいといったイメージを持っていることもあり、輸入食品と比べて、3割高超の価格帯であっても、国産食品を選ぶという消費者層が約2割存在することがわかりました。
そのような状況下においては、原料原産地表示の義務化は、営業効果が期待できずに頻繁な原材料の原産地の変更に伴うパッケージの切替えや煩雑な作業の発生といった事業者負担だけが重く感じられるのだと思われます。
しかし、TPP協定などの影響も含め、今後さらに食品の輸出入が活発になる中、正しい情報提供により消費者の自主的かつ合理的な商品選択が行われてこそ、適正な市場が形成につながると考えます。
次回は、日本の消費者が原料原産地表示に対してどのような意識を持っているのか取り上げます。
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