プエラリア健康食品の健康被害問題の課題と今後の対応(厚労省 薬事・食品衛生審議会 2017年9月)

7月に国民生活センターが「プエラリア」による危害情報を公表して以降、国の健食による健康被害に対する注意喚起が続いています。

・続々注意喚起、医師からの健康食品による事故情報
(ドクターメール箱、健康食品安全情報システム)

・増える健康食品、化粧品の健康被害。「皮膚障害」「消化器障害」相談が大幅増加
(国民生活センター 平成29年8月)

「プエラリア」の健康被害問題に関しては、国センの公表(※1)を受け、厚生労働省がプエラリアを含む「健康食品」を製造・販売・輸入する事業者に対して、適性製造規範(GMP)遵守、原材料の含有成分の適切な管理をすることおよび健康被害事例の調査を実施しました。
8月4日までに集まった調査結果を基に、「薬事・食品衛生審議会」ではプエラリアを含む「健康食品」に対する今後の対応を検討しています。

調査結果では、健康被害が223事例、製品の製造については、GMPや原材料の安全性自主点検を遵守していない製品があり、製品の安全確保の取組が不十分な現状が把握されました。
また、事業者の健康被害事例の申告に対して、事業者が製品の安全性の見直し等の対応の報告がなかったとしています。
このような結果を踏まえて、事業者に対して製品の安全性確認や製造管理のあり方はもとより、被害情報収集と情報処理体制整備、消費者に対する適切な情報提供(表示、広告等)
への対応強化を求めていく方針を示しています。

今回は調査結果の概要と、厚労省のプエラリアを含む「健康食品」に対する対応の方向性について確認します。


プエラリア・ミリフィカを含む「健康食品」を取り扱う食品等事業者に対する
地方自治体の調査結果(抜粋)(平成29年8月28日)

●調査を実施した製品数、販売者数及び製造者数
製品数:68 製品(46販売者、33製造者)
※小売販売される製品ベースでまとめており、製造原料用製品等は含めていない。

●プエラリア・ミリフィカの活性成分の性質の把握
・事業者は、プエラリア・ミリフィカが植物性エストロゲン様物質を含む食品素材であること等、その性質に関する知識があるか。
ある:製品数65 (95.6%)  ない:製品数3 (4.4%)

●消費者に対する情報提供
・表示等で、製品の特性に関する注意事項等又は利用者に関する注意事項等について、消費者へ情報提供されているか。

実施している:製品数65 (95.6%)  実施していない:製品数3 (4.4%)

・実施していると回答された 65 製品の情報提供の内容(複数回答あり)

医師に相談する旨(通院・服薬中の方):製品数32(49.2%)
摂取を控える旨(妊娠中・授乳中の方):製品数27(41.5%)
医師に相談する旨(妊娠中・授乳中の方):製品数22(33.8%)
体質に合わない方は摂取を中止する旨:製品数25(38.5%)
アレルギーのある方は原材料を確認する旨:製品数18(27.7%)

●一日あたりの製品摂取目安量中におけるプエラリア・ミリフィカの摂取量
「回答なし」と「不明」合わせて、製品数7(10.3%)

●適正製造規範(GMP)の遵守状況
・全製造工程を通じた一定の品質の確保、管理組織の構築及び作業管理の実施、構造設備の構築、責任者の設置、基準書類の作成並びに記録の作成及び保存などについて、適正製造規範(GMP)を遵守しているか。

遵守している:製品数45 (66.2%)
遵守していない:製品数13 (19.1%)  不明:製品数10 (14.7%)

●原材料の安全性の確認
・一日あたりの製品摂取目安量中におけるプエラリア・ミリフィカの摂取量の設定根拠

「その他(あくまで目安として設定した事例、インターネット情報により設定した事例等)」と「不明・回答なし」合わせて、製品数11(16.2%)

●活性成分の管理方法
・活性成分の定量の有無

実施している:製品数18 (26.5%)  実施していない:製品数38 (55.9%)
不明・回答なし:製品数12 (17.6%)

・定量以外の管理方法

「管理していない」と「回答なし」合わせて、製品数16(23.6%)

●事業者からの健康被害事例の申告(過去5年間)
・申告の有無

あり:製品数14 (20.6%)  なし:製品数54 (79.4%)

・健康被害事例の内容
生理不順:製品数67(30.0%)
アレルギー:製品数66(29.3%)
不正出血:製品数42(18.8%)

・健康被害事例に対する対応
食品等事業者が健康被害ありと申告した事例について、「「錠剤、カプセル状等食品の適正な製造に係る基本的考え方について」及び「錠剤、カプセル状等食品の原材料の安全性に関する自主点検ガイドライン」について」(平成 17 年2月1日付食安発第0201003 号厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知)に基づき、食品等事業者が製品の安全性の見直し等の対応をしている旨の報告はなかった。

健康被害情報の申告があった製品一覧(過去5年間)

プエラリア・ミリフィカを含む「健康食品」に対する対応等について
(厚生労働省 平成29年9月4日)
●製品の製造管理のあり方について(課題と対応)

《課題》
1. 「適正製造規範(GMP)」、特に「原材料の安全性管理」が十分に実施されていない。
2. 「人の健康を害するおそれがない」と判断できる合理的な理由が不明確であり、活性成分の成分分析等による管理が必要である。
《対応》
「錠剤、カプセル状等食品の適正な製造に係る基本的な考え方について」及び「錠剤、カプセル状等食品の原材料の安全性に関するガイドライン」(平成17年2月1日付け食安発第0201003号厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知)による製造管理の徹底。
通知等における主な指導事項:
1. 全製造工程を通じた(原材料の安全性管理を含む)一定の品質の確保(各段階での品質チェック)を行うこと。
2. 原材料の成分分析及び文献等の情報を基に、配合量及び1日あたりの摂取量について、安全性が十分に確保されることを確認すること。
3. 製造管理においては、プエラリア・ミリフィカに含まれる活性成分はばらつきがあるため、安全性に対して過小評価することがないよう考慮すること。
4. 事業者は、適切に対応できない場合は、食品の安全性を確保し危害の発生を未然に防止する観点から、食品等事業者の責務により製品の取扱を中止するなどの対応をとること。

●健康被害情報の収集について(課題と対応)
《課題》
1. 食品等事業者が消費者から収集した健康被害に関する情報は、必要な情報の不足又は記録が欠如していた。
2. 健康被害情報を踏まえ、食品等事業者が安全性の見直し等を適切に行っているか不明。
《対応》
1. 消費者から食品等事業者への苦情や健康被害に関する相談について、厚労省は食品等事業者が聞き取る項目及び因果関係の評価手法を都道府県及び事業者団体を通じて示す。
情報収集強化案:
・事業者が消費者から聞き取る項目:年代、性別、症状、発生期間、転帰、医療機関受診、製品の摂取状況、医薬品又は健康食品の併用状況、基礎疾患、アレルギー体質等
・症状と摂取の因果関係の評価:「摂取後の有害事象発生の有無」、「摂取中止後の回復」等
2. 消費者からの苦情や健康被害に関する相談について、受付及び処理体制を構築し、それらの情報を製造管理及び品質管理の改善に役立てること。

●消費者に対する情報提供について(課題と対応)
《課題》
1. 安全性の観点から、事業者は消費者に対して摂取の注意事項を情報提供する必要がある。
2. 科学的根拠が不明な情報提供を行うことは不適切。
《対応》
1注意事項について、実効性のある手段を用いてわかりやすく示し、消費者が理解した上で利用できるようにすること。
注意事項案:
・妊娠中・授乳中の方、初潮前の方、女性ホルモンに関わる病気の治療中の方、肝障害等基礎疾患があり治療中の方、医薬品を服用している方は摂取を控えること。
・不正出血、生理不順等の健康被害の発生が知られていること。
・一日当たりの摂取目安量を示すこと。 2. プエラリア・ミリフィカを含む「健康食品」について、医薬品的な効能効果を標ぼうすることはできないことから、身体の組織機能の一般的増強や病気の治療又は予防を目的とする効能効果の表示説明等をしないこと。

プエラリアに関して、水素水関連商品の時と同様、「不当表示」の面からも調査が進んでいる可能性もあります。

健康食品にまつわる健康被害に対する行政の動向については、今後も注視してまいります。

(※1)
美容を目的とした「プエラリア・ミリフィカ」を含む健康食品
-若い女性に危害が多発!安易な摂取は控えましょう-
(国民生活センター 2017年7月13日)
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20170713_1.pdf

(※2)
薬事・食品衛生審議会
(食品衛生分科会新開発食品調査部会新開発食品評価調査会)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-yakuji.html?tid=127894
プエラリア・ミリフィカを含む「健康食品」について
《2017年9月4日 配付資料一覧》
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000176514.html

≪参考記事≫
・国セン、プエラリア・ミリフィカを含む健康食品に注意喚起。厚労省、調査開始
(国民生活センター商品テスト 2017年7月)

・増える「水素水」に関する消費者相談。溶存水素濃度と効能効果
(国民生活センター商品テスト 2016年12月)

・水素水事業者、国センに反発。食い違う見解に見る「商品テスト」の目的とは
(国民生活センター商品テスト 2016年1月)

・水素関連食品 3社に景表法措置命令 商品テスト対象銘柄も(消費者庁:平成29年3月3日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。