消費者庁は3月28日に、靴の製造販売事業者(株)エービーシー・マートが提供する靴等に関する表示に対し、景品表示法(有利誤認)の措置命令を行いました。
今回の処分に対し、同社は、「「当初販売価格」を「メーカー希望小売価格」としていた。PB商品を当初の販売価格から値下げして提供したことは事実で、架空の販売価格を設定していたわけではない」と釈明しています。
通販事業において、製販一体の事業形態を進める企業も多い中、本事案から「希望小売価格」などを比較対照価格とする二重価格表示について景表法の考え方をチェックしておきましょう。
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株式会社エービーシー・マートに対する景品表示法に基づく措置命令について
(平成29年3月28日 消費者庁)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_170328_0001.pdf
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【違反内容】
対象商品:
「HAWKINS」、「STEFANO ROSSI」「NUOVO」「VANS」4ブランドの靴やサンダルなど47商品
表示媒体:
新聞の折り込みチラシ
表示期間:
平成27年2月13日~同月16日
平成27年5月1日~同月11日
平成27年8月13日~同月17日
平成27年11月27日~同月30日
違反内容:
対象商品について、例えば「㋱ 12,000 円(税抜)→税抜¥9,900(税込価格)¥10,692」と、実際の販売価格に当該価格を上回る「㋱」との記号を付した価額を併記することにより、あたかも、対象商品にはメーカー希望小売価格が設定されており、実際の販売価格が当該メーカー希望小売価格に比して安いかのように表示していた。
実際には、対象商品は同社が自ら製造・小売販売しているもので、「㋱」との記号を付した価額は同社が自ら任意に設定した価格だった。
【表示例】
今回の処分に対し、同社は、「「当初販売価格」を「メーカー希望小売価格」としていた。PB商品を当初の販売価格から値下げして提供したことは事実で、架空の販売価格を設定していたわけではない」として、以下のように釈明しています。
「消費者庁からの措置命令について」
(株式会社エービーシー・マート)
http://www.abc-mart.net/shop/e/ekakaku/
今回の措置命令は、「当初販売価格」について当社以外に決定権のある「ナイキ」「アディダス」といったブランド(ナショナルブランド)商品は、「㋱」(メーカー希望小売価格)を表記することが許されるところ、当社に価格決定権のある自社プライベートブランド商品について「㋱」(メーカー希望小売価格)という記号を付した価格を併記したことが対象とされたものです。
(中略)
卸売業から小売業への事業転換の中で卸売が減少し、結果、自社プライベートブランドの大半が自社店舗で販売されるようになり、本来「メーカー希望小売価格」と表示すべきではなくなった商品についてのチラシ表示方法が社内で適切に管理・徹底されていなかった点が要因です。
(中略)
当社が自社プライベートブランド商品について「メーカー希望小売価格」として表示した価格は、「当初販売価格」の意味であり、この「当初販売価格」は、実際に店頭で相当期間販売されていた価格であり、一部報道のような値引きを演出するための架空の価格ではありません。
自社プライベートブランド商品の「当初販売価格」もナショナルブランドの「メーカー希望小売価格」と同様に、主に生産コストから算出して設定され、シーズン当初は「当初販売価格」にて販売し、シーズン後半に在庫が多い商品についてはセール価格にて消化しております。
現状改善後(例)
消費者庁は、不当な価格表示についての景品表示法上の考え方を、以下のように示しています。
◆不当な価格表示についての景品表示法上の考え方
(平成12年6月30日公正取引委員会 改定 平成28年4月1日消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_35.pdf
希望小売価格に対する一般消費者の認識とは?
製造業者等により小売業者の価格設定の参考となるものとして設定され、あらかじめ、新聞広告、カタログ、商品本体への印字等により公表されているものであり、このことから、小売業者の販売価格が安いかどうかを判断する際の参考情報の一つとなり得るもの。
比較対照価格とする希望小売価格の要件:
「製造業者等により設定され、あらかじめ公表されている価格」となります。
希望小売価格(参考小売価格)は製造業者等が設定する価格ですので、小売業者が勝手に設定をしてはいけません。
【希望小売価格を比較対照価格に用いる際、不当表示に該当するおそれのある価格表示(抜粋)】
1)希望小売価格(参考小売価格)が設定されていない場合(撤廃されている場合を含む)に、小売業者が設定した任意の価格
2)プライベートブランド商品について小売業者が自ら設定した価格
3)製造業者等が専ら自ら小売販売している商品について自ら設定した価格
4)特定の小売業者が専ら販売している商品について、製造業者等が当該小売業者の意向 を受けて設定した価格
今回の事案では、2)3)の点が問題となったと考えられます。
価格決定権のある自社プライベートブランド商品について、自ら任意に設定した「希望小売価格」は、消費者が値引きされた販売価格が安いかどうかを判断するための参考情報としては不適切ということです。
二重価格表示を行う際は、その比較対象価格がどのような価格であるのか、消費者が誤認しないよう注意が必要です。
更に詳しい解説は以下の記事をご確認ください。
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≪参考記事≫
・寝具の店頭表示価格 販売実績のない二重価格に景表法措置命令!
・消費者が有利誤認したという結果は問わない。(有)ミート伊藤の特売日表示に景表法措置命令
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