クロレラ訴訟と消費者契約法改正の行方。「適格消費者団体」とは?

今日の気になるトピックは「適格消費者団体」と消費者契約法改正の行方について。

皆さんは、「適格消費者団体」についてご存じでしょうか?

不特定多数の消費者の利益を擁護するために、消費者に代わって事業者の不当な行為に対して「差止請求」「被害回復」の訴訟を行うことができる消費者団体です。
内閣総理大臣によって認定され、平成28年12月現在で全国に14団体あります。

この、差止請求の対象となる不当行為とは、「消費者契約法」「景品表示法」「特定商取引法」「食品表示法」に違反するもので、具体的には、「不当な勧誘」「不当な契約条項」「不当な表示」などがあります。

《差止請求の流れ》

(1)消費者からの情報提供などにより被害情報を収集・分析・調査
(2)事業者に対し、業務改善を申し入れ(裁判外の交渉)
(3)(交渉不成立の場合)事業者に対し、提訴前の書面による事前請求
(4)(交渉成立の場合)事業者による業務改善
(5)適格消費者団体による裁判所への訴え提起
(6)判決、または裁判上の和解
(7)結果の概要について、消費者庁のウェブサイトなどで公表

今回、適格消費者団体である「京都消費者契約ネットワーク」による「サン・クロレラ販売訴訟」が、事業者に大きなインパクトを与えています。
「サン・クロレラ販売訴訟」とは、商品名の記載のない健康食品原料に、医薬品のような効果があるとするチラシの広告手法について争われてきた事案です。

最高裁までもつれた結果、訴訟の差し止め請求そのものは棄却されたものの(※)、不特定多数の消費者に向けた広告も、消費者契約法の取消対象となる「勧誘」に該当するという判断が示されました。
※最高裁判決では、サン・クロレラ販売が現在問題のあるチラシを配布しておらず、一切配布しないと明言していることから、差し止め請求の対象としているチラシ配布行為を「現に行い又は行うおそれがある」(消費者契約法12条1項及び2項)ということはできないため、請求は棄却されました。
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平成28年(受)第1050号 クロレラチラシ配布差止等請求事件
(平成29年1月24日 第三小法廷判決)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/454/086454_hanrei.pdf
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2016年6月に施行された消費者契約法改正審議では、不特定多数に向けた「広告等」を含める「勧誘」要件の拡大は見送られました。
悪質な事業者排除のために有効な規制要件を明確にすることができず、意見の一致を見なかったためです。

しかし、今回の最高裁判断は、現在、消費者委員会・専門調査会で再び行われている同法の改正論議の追い風になりそうです。

1月25日の記者会見で、岡村消費者庁長官が以下のように語っています。

「最高裁の判決は、大変重要なものと考えておりますので、逐条解説にその内容を盛り込むとともに、現在改定作業中の逐条解説に必要な修正をした上で、広く周知を図ってまいりたいと思います。

そして、判決の内容そのものでございますが、「勧誘」要件の在り方については、現在、内閣府消費者委員会の消費者契約法専門調査会において優先的に検討すべき論点とされており、現在、正に検討が行われているところでございます。」

広告を規制する消費者保護の視点は、一層強まっています。

◆「消費者団体訴訟制度」の活用を!
(政府広報オンライン 平成29年1月16日)
http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201401/3.html

◆サン・クロレラ販売訴訟、広告も「勧誘」に該当 最高裁が判断
(健康情報ニュース.com  2017年1月25日)
http://xn--zck9awe6d372qg1j87ki4d.com/280125_dm1248/

≪関連記事≫
・通販広告規制強化見送り。消費者契約法と特定商取引法の行方

・消費者契約法改正議論の行方。広告に詳細注意事項は必要か?(JADMA「通販広告に対する消費者の意識、行動調査」)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。