食品ネット販売事業者 義務表⽰情報提供は55.6%。仕組みの⾒直しに課題(消費者庁 平成28年9月)

消費者庁は、「第8回 食品のインターネット販売における情報提供の在り方懇談会」(※)において、⾷品のインターネット販売に取り組む事業者が自主的に取り組んでいる、容器包装に表⽰される義務表⽰事項の情報提供についての実態調査を行いました。

当懇談会は、食品のインターネット販売における情報提供の促進を図っていく観点から、消費者に必要な情報及びその提供方法並びに事業者にとって実行可能性のある情報提供の方策について検討を行うもので、平成27年12月より始まり平成 28 年秋頃を目処に取りまとめの公表を予定しています。

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食品のインターネット販売における情報提供の在り方懇談会
(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/foods/index26.html
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以下の調査データをピックアップしました。
・食品ネット販売事業者サンプル構成
・食品ネット販売での義務表示事項情報の提供状況
・消費者からの義務表示事項情報の問合せ状況
・食品ネット販売での義務表示事項情報提供のメリット
・食品ネット販売での義務表示事項情報未提供理由

●サンプル構成
サンプル数は、321サンプル。
規模別構成は、⼤企業者が25.5%、中⼩企業者が39.3%、⼩規模企業者が35.2%。
業態別構成比は、宅配が18.7%、ネットスーパーが14.6%、お取り寄せが22.7%、ネットモールが43.9%。
宅配とネットスーパーにおける大企業者の割合が4割以上と高くなっている。

●食品ネット販売での義務表示事項情報の提供状況
「義務表⽰事項と同等の情報を提供している」が55.6%、「⼀部の情報を提供している」が29.3%、「義務表⽰事項情報の提供は特にしていない」は15.1%。
業態別ではネットスーパーで「提供は特にしていない」の割合が31.9%と、全体と比較して高い。

提供されている情報は、「内容量」(96.6%)、「名称」(89.8%)、「原材料」(88.6%)、「保存⽅法」(84.1%)、「消費期限・賞味期限」(79.2%)の順に多い。

●消費者からの義務表示事項情報の問合せ状況
消費者から情報問合せは、何かしらの問合せがある者は54.7%(「ない」が45.3%)。
問合せが多い項⽬は、「原産地・原料原産地」(34.4%)、「アレルゲン(計)」(26.7%)、「消費期限・賞味期限」(25.1%)、「原材料」(21.9%)などの情報である。
最も問合せが多い業態は「お取り寄せ」の67.1%(「ない」が32.9%)であり、全体と⽐べ「原材料」(32.9%)、「添加物」(31.5%)、「アレルゲン(計)」(41.1%)、「保存⽅法」(30.1%)などの情報で問合せが多くなっている。

問合せがある者の有効回答について、1か⽉に寄せられる問合せのうち義務表⽰事項情報に関する問合せの占める割合は、1%との回答が36.4%と最多、5%未満が80.0%と過半数を占め、平均は6.7%。
業態別では問合せ割合が最も高いのがネットモールで5%未満が70.7%、平均は10.0%。
最も低いのはネットスーパーで5%未満が100%、平均は2.6%。

●食品ネット販売での義務表示事項情報提供のメリット
情報を提供することによるメリットは、「特にない」が73.0%。
「問合せ数が減った」が19.0%、次いで「消費者から表⽰について良い評価や良い意⾒をもらった」が5.5%にとどまった。

●食品ネット販売での義務表示事項情報未提供理由
情報未提供の理由としては、「情報提供するための仕組みを⾒直す(変更する)必要があるから」が45.7%で最も多く、次いで「掲載できる情報量に制限があるから」(33.3%)、「⼈⼿が⾜りないから」(22.5%)、「⼿元に情報がないから」(18.1%)との理由があがった。
企業規模別でみると、大企業者は「情報提供するための仕組みを⾒直す(変更する)必要があるから」(61.4%)、「掲載できる情報量に制限があるから」(43.2%)について高く、小規模企業者は「仕組みを⾒直す(変更する)必要」(28.2%)について低い。
業態別ではネットスーパーが「仕組みを⾒直す(変更する)必要」(57.7%)について高い。

「義務表⽰事項と同等の情報を提供している」事業者は55.6%に留まる結果となりました。
事業者が任意表示に取り組むにあたっては、何らかのメリットがインセンティブとして必要だと思います。しかし、寄せられる問合せのうち義務表⽰事項情報に関する問合せの割合は少なく、情報提供メリットが「特にない」と感じる事業者が7割以上というのも頷けます。
ただし、前回の消費者調査結果で明らかになったように、消費者の9割が食品の義務表示事項情報を確認しており、サイトで情報提供がない場合、何かしらの⽅法で確認しようと試み、他の⽅法を使っても確認できなかった場合、8割弱がそのサイトで購⼊しないという結果が表れています。

消費者ニーズは事業者に対する「問合せ」という目に見える形で届いていなくても、積極的な情報提供が求められているといえるでしょう。
現状、消費者から問い合わせの多い「原産地・原料原産地」についての事業者対応は51.1%、「アレルゲン」は64.8%に留まっています。

情報未提供の理由としては、「情報提供するための仕組みの⾒直し」「掲載できる情報量に制限」「⼈⼿不足」「⼿元に情報がない」が挙げられています。

次回は、本調査より情報の伝達・利⽤、情報提供の⽅法など、情報提供促進のための⽅策検討の一助となるデータを紹介します。

(※)
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食品のインターネット販売における情報提供の在り方に関する調査(消費者)
(消費者庁食品表示企画課 平成28年9月13日)
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/160913_shiryou1.pdf
回収期間: 2016年6月29日~8月1日
調査方法 インターネットによるアンケート調査
調査対象:
⾷品をインターネットで販売している事業者:321サンプル
※業態の構成⽐は今回のアンケートにおけるものであり、市場構成⽐とは異なる。
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≪関連記事≫
・食品のネット購入時に義務表示事項確認する人は9割!情報を探して確認できなかった場合、76%がそのサイトで購⼊せず
(消費者庁 平成28年8月)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。