2026年4月27日と28日、消費者庁は、尿失禁対策用の下着販売事業者2社(株式会社boxXXX、株式会社Beiiiii)が供給する男性用下着「NOMORE」の尿漏れ防止効果の表示に対して、不実証広告規制(※)による優良誤認の措置命令を公表しました。
2社の概要
| 株式会社boxXXX | 株式会社Beiiiii | |
| 所在地 | 東京都千代田区 | 福岡市中央区 |
| 事業内容 | ウェブサイトの企画、制作、運営、 インターネットを利用した通信販売等 | ECサイトの企画、制作、 商品の企画、製造、販売等 |
2社は自社ウェブサイトにおいて、商品を着用して失禁した場合に、200㏄又は100㏄までの尿であれば商品の外側に尿が漏れ出さない効果が得られるかのように示す表示をしていましたが、「表示の裏付けとなる合理的な根拠」が認められませんでした。
これは、過去に度々、不実証広告規制を用いた処分を受けている「空間除菌製品」と同様に、「表示された実際の使用環境とは異なる条件の試験環境で行われた商品の効能効果の試験結果」が表示の裏付けとなる合理的根拠として認められなかったケースにあたります。
2025年度では、風呂用防カビ剤の効果に関する事案(P&Gジャパン)とスマートフォン向けコーティング剤の効果に関する事案(SB C&S)があります。
・P&Gジャパン、風呂用防カビ剤に景表法措置命令!空間除菌製品の広告表示リスクを解説(消費者庁 2025年8月1日)
・SB C&S、スマホコーティング剤に景表法措置命令!ISO規格準拠でも根拠認められず。不実証広告規制最前線(消費者庁 2025年12月18日)
本件も、SB C&S事案同様、事業者に第三者機関による標準化ルール(JIS規格等)に準拠した実証データの表示がありましたが、合理的根拠として認められていません。
他方、失禁ケア用品の吸収量表示については、本件以前から問題が指摘されていました。国民生活センターは2002年4月と2016年5月に、失禁パンツの吸収量等に関する商品テストを行っており、事業者に統一したテスト方法を構築して、購入の目安となる適正な表示を行うよう要望していましたが、十分な改善が行われることなく、本処分に至っています。
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少量の失禁尿を吸収するとうたった下着-過信は禁物、しみ出すことも-
(独立行政法人国民生活センター 2016年5月19日:公表)
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20160519_1.html
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本記事では処分の概要と、問題視されてきた失禁ケア用品の表示の課題を解説します。
続く会員限定記事では、不実証広告規制において求められる「合理的な根拠」の判断基準と、本件で想定される違反認定ポイントを分析し、実務者が取るべき具体的アクションを提示します。
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尿失禁対策用の下着販売事業者2社に対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2026年4月28日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/046006
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(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。
【対象商品】
「NOMORE」と称する尿失禁対策用の下着
【表示期間・表示媒体】
boxXXX:2025年3月8日から2026年3月10日までの間、自社ウェブサイト
Beiiiii:2025年3月26日から同年6月16日までの間、自社ウェブサイト
【違反内容】
●表示内容
boxXXX:
例えば、「ズボンの 尿シミ 不快感 ニオイ ゼロ 0へ! スマートな 尿漏れ対策。」、「業界トップクラス 吸収量 200※1㏄」等と表示。
Beiiiii:
「購入者の9割以上が 吸収力 消臭力 清潔感 効果を実感!」、「シミや臭いの不安がなくなった!」、「こだわり1 四層構造+吸収量200㏄で 多い日も安心して 過ごせる」等と表示。
あたかも、本件商品を着用して失禁した場合に、200㏄又は100㏄までの尿であれば本件商品の外側に尿が漏れ出さない効果が得られるかのように示す表示をしていた。
表示例:boxXXX

表示例:Beiiiii

実際:
消費者庁は、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、boxXXXから資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。
Beiiiiiは、期間内に資料を提出しなかった。
表示内容の作成体制と景品表示法上の責任
両社が販売していたのは、同一商材を同一商品名(NOMORE)で扱うものでした。本件における2社の関係は、次の事実が認定されています。
- Beiiiiiは、本件商品に係る自社ウェブサイトの表示内容の作成をboxXXXに委託し、boxXXXが作成した内容を、自社ウェブサイトの表示内容とすることを了承していた。
景品表示法の規制対象となる「表示をした事業者」は、自ら商品を供給し、表示内容の決定に関与した者を指し、具体的には次の3つの類型のいずれかに該当する事業者が含まれます。
1)自ら又は他の事業者と共同して積極的に表示内容を決定した事業者
2)他の事業者が決定したあるいは決定する表示内容についてその事業者から説明を受けてこれを了承し、その表示を自己の表示とすることを了承した事業者
3)自己が表示内容を決定できるにもかかわらず、その決定を他の事業者に委ねた事業者
Beiiiiiは、boxXXXが作成した表示内容を自社の表示として了承していたことから、上記2)に該当すると整理できます。
景品表示法は、不当表示について事業者の故意又は過失を問いません(無過失責任)。したがって、「表示内容の作成を他社に委託していた」という事実は、Beiiiiiが措置命令の対象から外れる理由にはなりません。自社が供給する商品に関する表示である以上、その内容を最終的に自己の表示として了承した時点で、表示主体としての責任を負うことになります。
遅れる「誤認解消措置」。課徴金への影響は
措置命令では、景品表示法違反の旨を速やかに一般消費者に周知徹底することを命じていますが、両社のお詫び告知は、boxXXXが4月28日の措置命令から約3週間経過後の5月18日、Beiiiiiが4月27日の措置命令から約5週間経過後の6月4日となっており、対応の遅さは否めません。
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お詫びとお知らせ (株式会社boxXXX 2026年5月18日)
https://box-x.co.jp/news/20260518
お詫びとお知らせ (株式会社Beiiiii 2026年6月4日)
https://beiiiii.com/news/announcement202605/
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課徴金の側面から考察すると、課徴金額の算定基準となる「課徴金対象期間」は、課徴金対象行為(不当表示行為)をやめて以降も取引が継続していた場合、不当表示行為をやめてから最大6カ月先までが対象となり、最大で3年間とされています。
「課徴金対象期間」をできるだけ短縮するには、不当表示行為をやめると同時に商品の取引を行わないようにすること、それができない場合は自主的な社告掲載などの「誤認解消措置」※を取る必要があります。(法第8条第2項)
仮に、商品の販売を継続するのであれば、できるだけ早く誤認解消措置を取ることが望ましいでしょう。
※一般消費者の誤認のおそれの解消措置(誤認解消措置)とは
事業者が、課徴金対象行為に関する表示が優良・有利誤認に該当する表示であることを、日刊新聞紙に掲載する方法等により、誤認解消するために一般消費者に周知する措置のこと。
問題視されてきた失禁ケア用品の表示
失禁ケア用品の吸収量表示については、本件以前から問題が指摘されており、国民生活センターは2016年に商品テストを行い、「景表法上問題」として行政指導を要望していました。
消費者相談状況では、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)に、失禁パンツに関する相談が、2011年度以降受付、2016年3月末日までの登録分で156件寄せられており、「吸収が悪い。」、「表示量より少ない尿の量で外にしみ出す。」などといった吸収性に関する相談がみられていました。
これを受け、国民生活センターが2016年5月に失禁パンツの吸収量等に関する商品テスト実施し、その結果では、吸収量表示のある9銘柄中、新品・立位無負荷でもテストサンプル全数が表示量を守った銘柄はゼロでした。
失禁パンツの吸収量効果、公的試験方法存在せず
失禁パンツの吸収量等に関しては、統一したテスト方法や標準化ルールがなく、表示者等へのアンケート調査では、表示している吸収量や尿漏れの程度の根拠となる検証方法は、吸収体に使用している生地のみのテストからモニターテストまで様々で、必ずしも実使用に即した検証を行っていなかったことが指摘されています。
そこで、国民生活センターは事業者に対し購入の目安となる適正な表示を行うよう以下の要望をしています。
- 対象となる尿漏れのタイプや程度を分かりやすく表示すること
- 吸収量を表示する場合は実使用に即した1回量と回数を表示する
国民生活センターによる商品テストの試験方法(立位・座位での吸収量測定等)は、失禁パンツの吸収量テスト法として一定の妥当性を持つものと位置づけられます。しかし、行政が、「一般消費者が表示から受ける印象」として、表示の根拠に「実使用環境での表示根拠」を求める上では、性能評価としては限界もあります。
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