消費者庁は9月22日に、大阪市の(株)創建が供給する住宅の外壁塗装の不適切な期間限定表示に対し、景品表示法(有利誤認)の措置命令を行いました。
今回の措置命令は、消費者庁と公正取引委員会事務総局近畿中国四国事務所との共同調査による事案です。
問題となったのは、期間限定で外壁塗装の値段だけで追加費用なく窓リフォームを行うと表示していたにもかかわらず、表示期限を過ぎても同様の条件でキャンペーンを繰り返し提供していた点です。これにより、消費者を実際よりも有利な条件で購入できると誤認させたと判断されました。
これに対し、創建は、消費者庁による本件措置命令の事実認定及びその評価において見解の相違を訴えています。
本記事では処分内容と違反認定のポイントを、続く会員限定記事では、「期間限定キャンペーン」を企画する際に誤解しやすい法的留意点と、本件における事業者の見解の法的妥当性について詳しく検証します。
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株式会社創建に対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁:2025年9月22日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/043641/
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措置命令の概要
対象商品:
住宅の外壁塗装
表示媒体:
自社ウェブサイト「創建ペイント」
表示期間:
2024年4月から9月末までの間
表示内容:
例えば、「好評につき期間延長!4/1~4/30まで 外壁塗装の値段だけで 窓の断熱リフォーム 窓リフォーム代追加費用実質0円!」等と表示。
あたかも、表示期限内に住宅の外壁塗装の申込みを行った場合に限り、表示された箇所数の内窓の設置が無料で提供され、期限後よりも有利であるかのように表示していた。
実際には、期限後に申込みを行った場合においても、期限内と同じ又はそれ以上の箇所数の内窓の設置が無料で提供されるものであった。

【表示例】

「期間限定キャンペーン」の法的留意点
非実施期間の「目安」をめぐる判断の厳格化
景表法の運用において、過去の同様の措置命令事案では、割引キャンペーンなどの間に目安として4週間程度の間隔(非実施期間)を空けていれば、連続したキャンペーンとはみなされていませんでした。
しかし、本件では、4月1日から4月30日までのキャンペーンから、次のキャンペーンの実施が6月1日から6月30日となっており、4週間の間が空いているにもかかわらず、違反認定されています。
これは、6月実施のキャンペーンの後も、1か月を区切って9月まで毎月同様のキャンペーンが繰り返されていたことから、一連の「一体のキャンペーンの繰り返し」とみなされたとみられます。
形式的な期間(4週間)だけではなく、実質的なキャンペーン実施の実態を鑑みての評価となっています。
同一内容のキャンペーンでなければ継続可能の落とし穴
期間限定キャンペーンは、消費者に「今買う(申し込む)ことが得だ」と緊急性や優位性を強く訴求し、購入を促す手法です。したがって、表示した期限後も同一内容のキャンペーンを間断なく継続することは、実際よりも有利な条件で購入できるかのように誤認させることにつながります。
裏を返せば、同一内容のキャンペーンでなければ期間限定キャンペーンを継続してもよいということになりますが、わずかな内容変更の場合は認められないおそれがあります。
その変更が消費者にとっての実質的な優位性に影響を与えない場合、または期限後の方が逆に有利になるような変更である場合も、有利誤認とみなされるリスクがあります。
過去の措置命令事案に、わずかな変更はあるものの、同様とみなされる商品を同様の値引き価格で提供したり、同様とみなされる特典を付与するキャンペーンの継続に対して、不当表示とみなされた事例があります。
・セドナエンタープライズ脱毛器、期間限定キャンペーンの繰り返しに有利誤認。同一とみなされたキャンペーン内容は?(消費者庁:2022年3月15日)
本件でも、特典として無料で提供される内窓の設置箇所数がキャンペーンごとに同一ではないものもありましたが、期限後の方が逆に有利である内容への変更であったことも相まって、認められていません。
同様の内容でのキャンペーンを再実施する際は、小手先での変更ではなく、原則としていったんキャンペーン前の通常販売の状況に戻し、最低でも毎回4週間以上の間を空けての実施が求められます。
事業者の見解にみる法理解の欠如
今回の措置命令は、典型的な「期間限定キャンペーン」の繰り返しに対する有利誤認違反となっています。
これに対し、創建は、消費者庁による本件措置命令の事実認定及びその評価において見解の相違があり、今後の対応については、社内で慎重に協議のうえ、適切に対応していく旨を公表しています。(※)
その主な主張は以下の通りです。
(1)期間限定表示を行った経緯
キャンペーンが補助金制度活用を前提としていたため、補助金の適用可否が不確実で、条件が整えば翌月以降も継続するという柔軟な運用を行っていた。事業の継続を前提としたキャンペーンの期間限定表示をしていたわけではない。
(2)処分の必要性
初回の指摘以降、当局の趣旨に沿った改善を行い、再発防止策を実施していた。既に十分な対策を講じている弊社に対し、措置命令を課すまでの必要性はなかったものと考える。
(※)
措置命令に対する弊社の見解について(追記)
((株)創建 コーポレートサイト 2025年9月25日)
https://www.k-skn.com/news/20250925.html
このような主張を見る限り、今回の事案は事業者側が景品表示法規制について正しく理解していないことから違反行為に至ってしまったと考えられます。
キャンペーンの企画段階での法的リスク評価はもとより、日頃のコンプライアンス体制構築がいかに重要であるかを再認識させられる事案です。
会員限定記事では、今回の創建の見解を法的観点から検証しつつ、「期間限定キャンペーン」を企画する際に誤解しやすい法的留意点と、景品表示法違反行為を行った場合の行政処分プロセスと実務的対応について詳しく解説しています。
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